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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常
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45.国宝級美貌の戦士、全員集合


「ちょっと、酷すぎるんじゃない?」

「お前ら、ハルの居場所を掴んだ時点でこっちに連絡を入れるべきだろう?」

「フレイムもシアンも勝手過ぎでしょう!」



朝からセージの屋敷が騒がしい。


昨日の新聞を見て、クリムゾン国でハルを探していたマゼンタとメイズとフォレストが、今朝早くにセージの屋敷に着いたようだ。


「!!!」

起きて食堂に向かった先で、ハルは英雄達が揉めてる姿を見つけて、思ってもみなかった出会いにハルは衝撃を受けた。

それはまるでクリスマスの日の朝に、サンタさんからのプレゼントを見つけた時の衝撃に似たものだ。




「マゼンタさん!メイズさん!フォレストさん!みんなもここに来たんだ!」


三人を見て顔をパッと輝かせたハルに、三人の英雄達の怒りが霧散する。

『やっと会えた』と英雄達はハルに伝えたかった。


「ね、ケルベロちゃんは?今どこ?獣舎?」

「………」

浮き浮きと弾むように声をかけられて、三人の英雄達は黙った。

輝く笑顔はケルベロスだけに向けられたものだと悟ってしまう。


なかなか応えてくれない三人の英雄達に痺れを切らしたのか、ハルは『きっと獣舎だ!』と見当をつけたようで嬉しそうに走り去ってしまった。






「ケルベロちゃん!ケルベロちゃん、元気だった?私の手紙読んでくれた?」


獣舎で機嫌が悪そうにしていたケルベロスを見つけて、ハルが飛びつく。

よしよしよしよしと撫で回してから話しかける。


「ケルベロちゃん、昨日たくさんおやつを買ったんだ!後で食べようね。スペシャルブラッシングもしなくちゃね。残りの休みはずっと一緒にいようね」


ぎゅゅゅゅっと抱きついていると、ケルベロスがご機嫌になってきた。寂しかったのかもしれない。

よしよしと優しくケルベロスを撫でて慰める。


「ね、ケルベロちゃん。昨日オルトロちゃんとすごい技を編み出したんだ。ケルベロちゃんも練習しよう!

……ケロの間がいいかな?スーの間がいいかな?

あ。これは後だね。後で試そうね。今から朝ごはんなんだ。ご飯を食べたらすぐ遊ぼう!ケルベロちゃんも、しっかり朝ごはんを食べなね」


ケルベロスが頷いたのを確認して、ハルは朝食の席に戻った。






英雄達全員揃っての朝食は数日ぶりなだけだったが、ずいぶん前の事のように感じられた。

新しく出会った子達もいたし、色んな事もあったからだろう。


今朝この屋敷に着いたばかりだという三人の英雄達は少し疲れを見せながらも、ハルと別れた後の話をしてくれた。



「そっかぁ……。そんなに大変だったんだ。手紙は雨に濡れちゃって読めなかったんだね」


「そのイラストの部分だけが濡れていたんですよ。それが見えたら見当がついたはずですが」


朝食の席でハルにこれまでの事を話しながら、フォレストがはぁぁと深いため息をつく。




フレイムがログハウスを出た後、激しい雷雨がずっと続いていたようだ。


お嬢様達に夕食を振舞った後もその雷雨の激しさは増し、お嬢様達は「こんな天気の中、帰る事は出来ませんわ」と泣きついたようだが、英雄達は「濡れないように馬車まで抱えていくし、家まで送るから」と宥めて家まで送ったらしい。


ずっと続いていた激しい雷雨は、馬車が最後のお嬢様を送り届けた途端に止んだみたいだった。



「もう少し待てば雨は止んだんでしょうけど、あの時の天気は読めなかったんですよね」


その時の事を思い出したのか、ウンザリとした顔になったフォレストに、フレイムが片眉を上げる。


「なんだ、フォレストお前気づかなかったのか?あの雨雲、ログハウスの真上だけにかかってたんだぞ。

雨が止んだのは、あの女達から離れたからだろう。そのまま泊めてたら、ずっと雨だったんじゃねえか?」


フレイムの言葉に、三人の英雄はピシリと固まった。


「ちょっと……あんた知ってたなら、なんで言わないわけ?」


マゼンタの怒りで震える声に、フレイムが平然と答える。

「戻ったら濡れるだろ」

「「「はあ?!」」」



「フレイム、僕らは昨日の朝刊を見るまで、ずっとクリムゾン国でハルを探してたんだぞ!

シアンもそうだが、ここに向かう途中でも手紙の一つくらい送れただろう?ひと言「マラカイト国に向かう」と書けばいいだけの話じゃないか!」


「知るかよ。あんな女に構ってるからだろう?こっちも通行止め続きで大変だったんだ」

「焦っていて思い至らなかったですね」


「「「ふざけるな!!」」」






英雄達が激しく揉めだした。

朝食の席が殺伐としている。


「声が大きいよ。喧嘩は外でしてきなよ」と言ってやりたいところだが、そんな言葉を口に出したら、今度は自分にいちゃもんを付けられるかもしれない。

こういう時は気配を消すのが正しいだろう。


ハルは黙って気配を消して、ただもぐもぐと口を動かしておく。

セージや白戦士達も身の危険を感じるのか、皆が静かに朝食を口にしている。







緊迫した空気に喉がつかえたのだろうか。

ミルキーが咳き込んだ。


「ゲホッゲホッゲホッ………ハァハァ」

激しい咳がやっと落ち着いてミルキーが顔を上げると、三人の英雄達が自分を見ていた。


「ヒッ………!!」

ミルキーは震えた。

三人の英雄達の目が冷たい。


三人の英雄達の目が、『お前はハルがこの世界の文字を書けないって知っていただろう?なぜお前は宛名しか書いてないんだ。お前が詳細を書いて送れば、もっと早く状況を掴めただろう?』と語っている。

『使えない奴だな』とミルキーを責めている。


口に出さない英雄達の言葉に、ミルキーの胃はキリキリキリキリと痛み出す。


『ハル様があの時、あの世界から戻って来なければ、自分は確かに神に迎えられていたでしょう……』と、今更ながらに神の言葉に確信を持って、ミルキーは震えた。


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