嘆願3
別作品の短編で恐い話?怪談話?を投稿させて頂きました。
一欠けらの創作も無い、紛れも無い実話です。
苦手じゃ無い方は、ぜひ読んでみてください。
感想なども頂けると、嬉しいです。
「本来はアルスロー王国の者では無いから、連れ出す許可をくれ、と?」
「はい。何卒、寛大な御心で御許可願います。」
「無理だな。それを許可してしまえば、国外からの者全てを解放しなくてはいけなくなるし、奴隷狩り紛いの事をしていた連中を、むざむざと逃がす羽目にもなりかねん。それに、なぜ俺の許可が必要だと思うんだ?自分の思う所を成せば良い。まぁ、間違いなく邪魔はさせてもらうけどな。」
自分でも突き放した物言いだとは思うが、優しくしてやる理由も無いからな。
それでも伯爵は俺の言葉に顔色一つ変えなかった。
背後に居る部下達の顔色が百面相のようになっているのと対照的だ。
貴族としての矜持なのか、想像力の差か。
「それから、当然分かっているとは思うが、ぐだぐだと無駄な問答するのも面倒だし、こっちから言っておく。金も地位も名誉も女も必要としていないので、そのつもりで。」
これも伯爵の中では想定内だったのだろう。
何か考え込んでいるようではあったが、これ以上話す事は無いだろう。
「話は終わりか?それなら……。」
「いえ、お待ちください。それでは……、それでは交換では如何でしょうか?」
「交換?」
どう言う意味だ?
他の子供と自分の娘の交換と言う意味だろうか?
そうだとすれば幻滅だな。
まるで、俺が言いそうな事だ。
まぁ、貴族なんて物は何よりも血を大切にする物らしいし、そんなもんなのかもしれないな。
そんな事を考えながらも、興味もあったので伯爵の提案を聞くだけ聞いてみる事にしたんだが、ある意味で、俺は絶対にすることが出来ない考え方と言う物を知った。
「それじゃ、こう言う事か?娘と結婚相手のアルスロー王国貴族の次男と引き換えに、伯爵自身がその命を絶つ、と?」
「その通りでございます。」
「ふぅん……。その願いを聞いたとして、俺にメリットは無い。その上何よりも、数が合わない。」
伯爵家当主の命と、直系の子孫とは言え女性と結婚相手の合わせて二人。
普通に考えるなら、当主一人の方が価値が重い。
だが、俺からしてみれば差し引き一人分は浮く上に、俺に対する恨みも相当な物になるだろう事は、火を見るより明らかだ。
「ぐ……。そ、それでは娘と私の交換では如何でしょうか?私に可能な物であれば、全てを差し出します。何卒、お願い申し上げます。」
ちなみに、会話の度にイチイチ煩かった外野達は、ブレオベリスとガウェインの威圧を受け既に意識を失って倒れている。
うーん……。
娘の人となりや能力なんかは未知数だが、目の前の伯爵が優秀なのは間違いないだろう。
ギャンブルではあるが、分の悪い賭けでは無い様に思う。
「そう…だな。メリットが無い訳じゃない。あんたは魂の牢獄に囚われる事があったとして、それでも娘の命を、未来を望むか?」
「勿論です。私は十分長く生きた。思い残す事などありません。」
「了解した。それでは、これで交渉は成立した。だが、まだ娘が無事に居ると言う保証は無い。暫く時間が掛かる事は了承しておいてほしい。」
「はい。承知しております。すぐにでも娘を探しに向かおうと思いますが、宜しいでしょうか?」
「その件だが、こちらの手の者で探す事にしよう。恐らくは時間との勝負になるだろうからな。心配しなくても、人間たちと違って俺達は約束や契約を反故にする様な真似は決してしない。それだけは信じてもらって構わない。」
「ですが、顔も分からぬ者を探し出すことが出来ますでしょうか?多少時間が掛かっても、私が向かった方がよろしいのでは?」
「ブレオベリス。どうにかして探せるか?」
「容易い事です。他国との事ですので、デルメトス伯爵に似た魔力を探し出せば見つける事が可能でしょう。」
そう言う事か。他国に居るなら周囲に血縁者が多く居る可能性は極めて低い。そこで伯爵に似た魔力の持ち主が見つかれば、必然それが娘と言う事か。
「念の為、記憶を覗かせて頂き姿を確認させて頂きましょう。」
「あぁ。それ位は協力してもらおう。確認を終え次第、出発してくれ。よろしく頼む。」
「お任せください。必ずやご期待に応えて御覧にいれましょう。」
「ダンジョン内では無く、外に居てくれても構わないが、出来るだけ近くで待機していてくれ。ブレオベリスが戻ればすぐに使者を送る。
「承知致しました。何卒、よろしくお願い致します。」
ブレオベリスはそのまま出発するので、彼だけを置いて残りはさっさと引き上げる事にした。
反省する点は多々あれど、まずまずの着地点に辿り着いたんじゃないだろうか……。
まぁ、あっさりと殺してしまう方が面倒も無くていいのだろうが、敵対していない者をわざわざ殺すと言うのも、どうかと思う。
このダンジョンを出現させる時や、神教国・セエレの連中に対しても似た様な物だと言えるが、必要にかられた行動でもあるし、見せしめの意味もあった。
殺された連中からすれば、堪った物では無いだろうが……。
居室前まで戻って来た時に、まずリリアから謝罪された。
そしてガウェインからも。
リリアは上位の者の判断に異を唱えた事。ガウェインは部下の教育と言った面からだ。
だが、その謝罪に関して俺が受ける事は無い。
健全な組織の運営を目指す俺としては、それぞれの意見を交わし合う事が出来ると言うのが理想の形だ。
反逆や裏切りなどは以ての外だが、そうでないのであれば大いにやり合ってもらいたい物である。
俺の意見に対しても、様々な意見をぶつけて来てもらえるようになれば良いと思う。
ゆっくりとやっていこう……。
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