予兆
ようやく更新できました。
応援のメッセージなど、ありがとうございます。
年末に掛かり、また更に忙しくなってきますが、
年内にもう一度更新できれば、と考えています。
急激に冷え込んだり、これから忘年会シーズンでお酒を飲む機会も増えるかと思いますが、
皆さんも御体には十分お気を付け下さい。
*活動報告を書かせて頂きました。
「王よ!これを見てくれ!」
「いや、俺は王じゃないよ。何度も言わせないでくれ。」
「そうか?まぁええわい。些細な事じゃ!そんな事よりこれじゃ!」
「些細って何だっけ……?」
ブレオベリスと共にドワーフ村の巡察に訪れた俺へ、興奮冷めやらぬと言った感じで手渡された物がそれだった。
ガラス瓶。
透明度が高く、歪みも殆ど無い。
現代地球の物と比べても遜色の無い美しい物だった。
「おぉ……。すげぇなドワーフ……。」
思わず演技を忘れて、素で感心してしまった。
今まで対外的な進物として、酒を贈る場合にはダンジョンの魔力によって複製された地球産のガラス瓶を流用していた。
溶かしたりして再利用しても良かったが、完成された物を不完全な物に戻すのはノームやドワーフ達が嫌がったのだ。
「作り手の事を思うと砕くのは忍びない。」だの
「芸術品を儂らに叩き壊せと………?」だの言って、
全員がこの世の終わりみたいな顔しやがったんだよ………。
機械生産だと言って説得したのだが、『試行錯誤の末の血と涙と汗の結晶で間違いない』と、言う意見を譲らず俺が折れる形になった。
まぁ、確かにそんな一面もあるのかもしれない。
透明度が高く、歪みの無いガラス製品と言うのは恐ろしく高い技術が要求されるって聞いた事もあったしな。
なにより、ファンタジー世界における最高峰の職人集団にそこまで認められ、ブレオベリスと言う名前の圧力にも屈せず、涙を流してまで地球産の物を庇ってくれたのだ。
直接は俺に関係無い物だとしても、素直に嬉しく思った。
そして彼らの意見を認めたのだが、これで終わらないのが異世界職人集団。
目の前に完成品があり、その頂きが見えているのだ。
こんな状態で彼等が奮戦しない訳が無い。
そんな、ある種の戦場にも似た空気の中で生まれたのが、今俺の手の中にあるガラス瓶だった。
生産数は僅かだが、既に安定して供給できる体制が確立していると聞き、更に驚く事になった。
むしろ、恐ろしくなった。
地球規模で言えば、数百年と言った単位の技術革新だ。
まぁ、主に酒関連や鍛冶仕事限定なのだが……。
そして、俺にガラス瓶を渡して来た代表者のノームと、周囲で他の作業をしながらも、チラチラとこちらを盗み見る様にして期待に満ちた目をした者達。
……分かってるよ、宴会だろ?
ガラス瓶が安定して供給できるのであれば、もはや瓶で小分けされた物を魔力で複製する必要も無い。
樽ごと造り出した方がコストも安上がりだしな。
あとで誰かに言って村に運ばせよう。
ブレオベリスの方を振り返ってから前を見たら既に人だかりが出来てた。
行動早いね……。あ、取りに来る?オーケー。それも何となく分かってたよ。
まぁ、頑張ってたのは知ってるしな。
ウィスキーだけじゃなく色々渡してやろう。
どうせなら俺の故郷でもある日本の酒なんかもな。
俺のこの軽率な行動が、ノームやドワーフ達に衝撃を与える事になるのだが、今は詳しくは語るまい。
◇
いつも通りダンジョンへ向かう。
もう日々の日課とすら言えるほどになった、冒険者ギルドからの依頼でダンジョンへ潜る。
そう言った態で彼女達は普段通りに行動する。
外周部分のダンジョンにいる、キラーアント達を蹴散らしながら奥へと進み、本来のダンジョン部分に侵入すると、彼女達の周囲から急に魔物達の気配が消える。
それも当然かもしれない。
彼女達は元々このダンジョン、そのダンジョンマスターによって呼び出された魔物だからだ。
アルスロー王国へ冒険者として所属し、定期的にダンジョンに来ては手にした情報を伝え、代わりに魔物の素材を受け取る。
そして、それらの素材を冒険者ギルドへ提出して金銭を受け取り、王国内で生活して情報を得ている。
彼女達は高位のデーモンロードである為、下位であるシャドウデーモン達を使役し、その情報は随時流されているのだが、高度な意思を持つ者の所感と言う物は侮れない。
所謂、直感や勘・経験則と呼ばれるものだ。
その直感が告げていた。
王宮内で何かが起きている、と。
表向きは一切何も変わっていないように思える。
だが、何かがおかしい。
不穏な空気と呼べばいいのだろうか?
流石の彼女達も、王宮内で起こるアレコレ全てを把握している訳では無い。
アルスロー王国は、四大国とも呼ばれる国の一つだ。
王宮内は魔法的な結界で防備され、感知されるようになっている。
露見する可能性を考慮しなければ、いくらでも入り込む事は可能だがそこまでの重要性は無いと考えていた。
事実、今まではその通りだったのだ。
活動し始めてから数か月経ったが、何の問題も無かった。
襲撃などはあったものの、どれも彼女達、そしてダンジョンに対する脅威度で言えばかなり低い物だった。
それが変わった。
何が、とは言えない。
以前の報告で王国が魔法の才がある者を集めていると知ってはいた。
どの様に扱うのかと、注目してもいた。
出て来ない。
数十名程度では効かない規模であろう人数の、その後がさっぱり見えないのだ。
何かある。不確定であやふやな物であるが、カタリナはそう確信していた。
報告の為に彼女達は自分達のあるじの元へと急ぐ。
◇
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