褒美
「休憩か?丁度良かった。」
そう言いながら、俺とガウェインは影の中から抜け出ていく。
「だ、誰だ!」「ヒッ!」
女の方は隠れたか。
「このパーティの代表者は君で良いのかな?」
「質問に答えよ!無礼者!」
「ふぅん。いやいや、すまないな。こんなナリでも人と大して変わらないんだよ。それに『誰?』と聞かれても名前など無いので答え様がない。まぁ、所謂ダンジョンマスターと呼ばれる者だ。生身で出て来るには君達は強そうだったのでね。意識だけ魔物に移して君達の前に立っている、と言う訳だ。」
「なっ!ダンジョンマスターだと!?何故こんな所に!?」
「いやいや、別に俺は何も手出しするつもりは無いよ。むしろ、逆かな?」
「逆だと?どういう事だ!」
前に出ようとするガウェインを手で制して会話を続ける。
「見事に一階層を突破した君達に、ご褒美をあげようと思ってね。初突破だから、記念の品を贈ろうと思ったんだよ。」
「褒……美…?」
「そう。褒美だよ。このダンジョンからは、魔法の品が度々見つかっているのは知っているだろう?」
「……知っている。」
「それなら話が早い。君達には二つの品を贈ろうと思う。これとこれだ。」
そう言ってガウェインが前に出て人族の男に短杖を渡す。
「それは、魔法を使う時の魔力の消費を抑える効果の付いた杖だ。まだ一階層だから、そこまで高い効果の物ではないが、宝石なども付いて美術的な価値もそれなりにはあるだろう。」
「これは……。」
おいおい。
笑顔が隠せてないぞ?
それには突っ込まずに、続けていく。
向きを変え、人族に休憩を提案していた一番傷の深い男に話しかける。
「君は大怪我をしながらも、しっかりとウッドパペットの動きを止めて、討伐に貢献していたね。他の人も頑張っていたけれど、代表して君に贈るよ。」
ガウェインが狼だか犬の獣人の前に立ち、アイテムを渡そうとする。
「そいつは奴隷だ!奴隷の持ち物は奴隷の所有者に権利がある!つまりそれは俺の物だ!」
「そうか。だが、それはそちらの事情だ。俺には関係ない。渡した後にどうしようと構わないが、俺が彼に渡すのは自由だろう?」
「それなら……。」
俺の言っている意味が理解できたのだろう。
そう。今は獣人に渡すが、俺達が居なくなった後ならば好きにしろ、って意味だ。
改めてガウェインが獣人に向き直り、ブロ-ドソードを渡そうとする。
「申し訳ないが、俺達には武器を持つ事が許されていない。それは、ここに置いて頂けないだろうか?」
「あるじからの褒美を地面へ置け、だと?貴様は私にそのような不敬を働けと言うのか?」
「い、いや、そうではない。俺はそういう制約で縛られているのだ!決して、貴方のあるじや貴方に何かあっての事じゃない!」
獣人の男が、何か言いたげに人族の方を見ると、慌てた様にこちらに向き直る。
「い、良いだろう。今だけ、その獣人の制約を解除しよう。」
「いや、それには及ばない。それに、少々俺はその魔法が嫌いなのだ。こちらで何とかしよう。」
「奴隷の所有者で無ければ、命令は解除出来ないに決まっているだろう!」
「ガウェイン。頼む」
「はっ!」
ガウェインがそう答えるや否や、濃密な闇の魔力があふれ出し、地面に幾何学模様の魔法陣が生まれる。
人族の男が、『無詠唱……だと?』とか
『こんな膨大な魔力……。』だの言ってるが、すべて無視だ。
「終了致しました。」
「あぁ。御苦労。では、続きを行おうか。」
「はい。」
そう言って、再度獣人の男に向き直り鞘に入ったブロードソードを渡す。
受け取った男は、呆けた様に自分の手の中の武器を眺めている。俺はゆっくりと近づきながら、獣人の男に向かって話しかける。
「この剣はな、魔導師殺しと言う君にピッタリの剣だ。この剣で傷付けられると、抵抗力の低い者は体内の魔力の流れが阻害されて、思う通りに魔法の効果を発揮することが出来なくなるって言う優れ物だ。分かるだろう?」
「さて、褒美としてはこんなもんかな?どうだろう?満足してもらえたかな?」
「え……。あ、あぁ、いや、まぁくれると言うのであればもらってやる。だが、このダンジョンを踏破し、貴様を殺すのはこの俺だと言う事を覚えておけ!」
つくづくガウェインを怒らせるのが得意な奴だな。
再び、手でガウェインを制すると、
「まぁ、それは楽しみにしておく事にしよう。また会えると良いな。」
「では、最後だな。」
「まだ何かあるのか?」
「あぁ、最後にもう一つだけ贈り物があるんだ。いや、贈り物と言ってはいけないか?」
「………?」
「ガウェイン。」
「はっ。」
先程とは比べ物にならない程の魔力が溢れ出し、獣人達に纏わりつく。
「見つけました。」
「いけるだろう?」
「当然です。」
「では、やれ。」
キィン。
そんな甲高い音と共に、獣人達の首に嵌っていた首輪が外れ、首輪に付いていた黒い宝石まで砕け散る。
「これで、褒美は終わりだ。獣人達を奴隷から解放させてもらったよ。仲良く連携を取っていた君達には不要な物だよな。余計な事だったかもしれないが、お節介だとでも思ってくれ。それじゃ、良い冒険者生活を。」
呆然とした者達を置いて、再びガウェインと共に影へと沈んでいく。
沈み込む寸前に聞こえて来た、叫び声の様な物は何だろうか?俺にはよくわからないな。
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