進化
「ところで、ダンジョンの派生なんてのはどうやればいいんだ?」
俺は肘掛の付近においてあるサイドテーブルに話しかける。
正確に言えばその上で丸まっているオコジョの様な生き物?だ。
コイツはダンジョンコアの分身ともいえる存在で、俺のサポートや複雑な計算などをやってくれる便利な奴だ。
白い毛並みでオコジョの様な小動物。
さぞかし撫で心地が良いのだろうと触れてみると硬い。何をどう触ってみても硬かった。
魔法生物として生まれており、その見た目とは真逆にゴーレムの様な無機物で出来ている。
「このダンジョンは廃棄するのですか?」
「そんな事はしないさ。ただ、このままここだけに集中していても仕方ないだろう?」
「そうですか。その考えには同意しますが、これ以上の規模を管理するとなるとキャパシティ的にも厳しくなります。」
テーブルの上で丸まって休止状態になっていたコアが首を傾げながら答える。
これだけ庇護欲をそそる姿をしているのに撫でると石のように硬いんだからな。
所謂モフモフ好きなら発狂しそうだ。
ちょっと思考が逸れてしまったな。
「いや、そうじゃない。機能としては新たなダンジョンを増やす事は可能だろう?そうであれば、新たなコアに、俺の考え通りに行動する魔物を新たなマスターとして設定出来るんじゃないか?」
少し考え込む様にしてからコアが答えを出す。
「理論的には可能ですが、やはり今の状態では厳しいですね。新たにダンジョンコアを作り出して、そちらの管理を他の者に任せたとしても、ダンジョンマスターとして生まれ変わった瞬間にマスターとの繋がりが切れます。」
「何か問題があるのか?」
「問題と言う問題ではありませんが、今現在がマスターの指示通りに行動していても繋がりが切れた途端に、マスターへ牙を剥くと言う可能性が生まれます。」
「そりゃ……、勘弁だな。自分達の生み出した魔物に襲われるなんて冗談じゃない。」
「そうですね。後々、私の能力が新たに解放された場合には、それらの管理も同時に可能になるでしょう。それまでは、今の状態で力を蓄える方が無難かと思います。」
「わかった。それじゃ、今日も人類の敵を頑張ろうか。」
「はい。」
「ところでブレオベリスとガウェインに聞きたい事があるんだが構わないか?」
「はい。何なりとお聞きください。」
俺が問いかけると、ガウェインは優雅に。
ブレオベリスは感極まったように。
「私の血や肉の一片に至るまであるじの物でございます。何でもお聞きください!」
…………、お前はアンデッドだから血も肉も無いだろう。
まぁ、そんな事言えないけどな。
「種族の格が上がったと言っていたよな?どんな種族に変わったんだ?それと条件は?」
「私がお答えする事をお許しください。」
ブレオベリスが興奮した様に答えるのだが、骸骨姿なのに思った以上に表情豊かなんだよなぁ、コイツ。
「我々はアンデッドとしては最上位となる事はご存知の事と思われます。ですので、本来であればこれ以上は進化する事はない筈でした。」
「ですが、我ら二名があるじより名を賜った際に強大な魔力が流れ込みました。その為、より上位の存在へと進化する事になったのです。」
「それは、どんな魔物でも可能なのか?」
「申し訳ありません。前例が我らしかありませんので、恐らく……としかお答えできません。」
「まぁ、その事は追々検証していくとしようか。それで?どんな種族になったんだ?」
「はい。私はデスと呼ばれる亜神です。別名で言えば死神でしょうか?」
ブレオベリスはデスと言う種族の様だ。
「ガウェインは?」
「はい。あるじよ。私はトゥルーヴァンパイアと呼ばれる種族です。真祖とも呼ばれます。」
二人とも姿はそんなに変わりはない。
少しだけ衣装が豪華な感じになった程度だろうか?
二人が強化された事実は単純に嬉しい。
下世話な話になるかもしれないが、彼らが強化される事により相対的に俺の生存率も上がっていく。結構な事だ。
なんだか良く分からないうちに、ガウェインとブレオベリスからの忠誠が限界突破していたのは嬉しい誤算と言える。まぁリンクが繋がっている限り裏切るような心配は要らないんだがな。
どちらにせよ、気分良く働けるならそれに越した事は無い。
「そうか。お前達が新たな力を得たのは良い事だ。これからも励んでくれ。」
「「はっ!」」
名付けをすれば魔物が進化するのか。
検証はしなければならないとは思うが、今の所新たに増やすつもりは無い。
何かの弾みで精神操作など受けて、俺に襲い掛かられても困るからな。
世の中にはテイマーなんて言う職業もあるみたいだし、念には念を入れての事だ。
その為にわざわざ、配下の魔物は不死属性の精神攻撃無効を持つ者をチョイスしたんだからな。
報告によれば考えていた通りにセエレ共和国が動いたそうだ。
予想通りと言えば予想通りだ。
まぁ散々に迫害・侵略を受けていたようだし、仕方ない事なのかもしれないな。
申し訳ないが、それを許す訳にはいかないんだ。
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