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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第26話 魔王軍四天王、補給を断ってくる奴が一番やばい

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!


第26話 魔王軍四天王、補給を断ってくる奴が一番やばい



「魔王軍四天王の一人が、北方補給路を狙っています」


王都軍務局の作戦室で、軍務官はそう言った。


俺は黙った。


リナも黙った。


勇者アレンは剣に手をかけた。


ミリアは眉をひそめた。


セイルは静かに祈った。


ガルドは壁の地図を見ていた。


いつも通りだった。


作戦室の中央には、大きな地図が広げられている。


王都。


北方砦。


街道。


山道。


橋。


倉庫。


補給拠点。


そして、赤い駒。


赤い駒は、魔物の出現地点を示しているらしい。


軍務官は痩せた男だった。


髪は短く、目の下にくまがある。


最近、俺が会う役人はだいたい疲れている。


王都の制度が動くと、人は疲れる。


「魔王軍四天王」


アレンが低く言った。


「ついに来たか」


「はい」


軍務官はうなずく。


「北方方面に現れたのは、四天王が一角、兵糧断ちのヴォルガです」


リナが小声で言った。


「見たことあります」


「言うな」


「四天王です」


「言うな」


「一人ずつ倒すやつです」


「言うな」


「でも、補給を断ってくるやつが一番面倒そうですね」


「そこだ」


魔王軍四天王。


炎を操る将。


氷を操る将。


獣を率いる将。


そして、兵糧断ちのヴォルガ。


名前からして嫌だ。


かなり嫌だ。


アレンは少し不満そうだった。


「四天王なら、もっとこう、炎とか氷とか、分かりやすい強敵からではないのか」


ミリアが言う。


「補給を断つやつ、普通に一番嫌じゃない?」


セイルも頷く。


「治療薬や食料が届かなくなれば、戦う前に人が倒れます」


ガルドが地図を指さす。


「ここを断たれると、北方砦が孤立する」


俺は言った。


「つまり、戦場ではなく道を狙っている」


軍務官はうなずいた。


「その通りです。ヴォルガは直接大軍で攻めるのではなく、橋、倉庫、荷車、馬、干し草、井戸、連絡員を狙っています」


「強い」


俺は即答した。


アレンがこちらを見る。


「戦っていないのにか」


「戦う前に勝つ気だ」


ミリアが腕を組んだ。


「嫌な敵ね」


「かなり嫌な敵だ」


軍務官は地図に駒を置く。


「すでに三つの小倉庫が焼かれ、二つの橋が落とされ、補給隊が一つ戻されています」


「死者は?」


セイルが聞いた。


「少数ですが出ています。ただし、被害の中心は物資です」


「物資被害を軽く見るな」


俺は言った。


軍務官は真剣に頷いた。


「はい。それで、あなた方を呼びました」


「勇者として討伐だな」


アレンが言う。


軍務官は少し言いにくそうにした。


「もちろん、勇者様には護衛と戦闘をお願いしたいのですが」


「ですが?」


「今回、最も必要なのは、補給路の再設計です」


アレンは固まった。


俺は地図を見た。


「戦うだけでは足りない」


「はい」


「ヴォルガを倒しても、道が戻らない」


「はい」


「倉庫を分散し、橋の代替を用意し、荷を小分けし、補給隊の時間と経路をずらす必要がある」


軍務官の目が少し輝いた。


「まさに、それを相談したく」


アレンが小声で言った。


「四天王戦なのに、会議か」


「補給を断つ敵だぞ。会議からだ」


「分かる。分かるが、勇者としては複雑だ」


ミリアが笑う。


「四天王会議編ね」


「敵の会議ではない。こっちの会議だ」


まず、現状確認。


北方砦には三日分の食料。


矢は二日分。


治療薬は少ない。


馬の飼料が足りない。


水は井戸があるので一応ある。


ただし、井戸が毒を入れられる可能性あり。


予備倉庫は王都寄りに二つ。


片方は焼かれた。


片方は場所が知られている可能性がある。


橋は二本落ちた。


山道は細い。


荷車は通れない場所がある。


雨の予報あり。


嫌な情報が多い。


俺は地図の横に紙を置いた。


「方針を分けます」


軍務官が筆を取る。


「一、今夜を越す緊急補給」


「はい」


「二、三日以内の代替補給路」


「はい」


「三、ヴォルガの襲撃パターンの記録」


「はい」


「四、倉庫分散」


「はい」


「五、偽装補給隊」


アレンが顔を上げる。


「偽装?」


「敵が補給を狙うなら、補給に見える囮を流す」


「卑怯では?」


ミリアが言う。


「相手が兵糧断ちって名乗ってるのよ」


「そうだった」


ガルドが言った。


「囮に本物を少し混ぜるか?」


「混ぜる」


俺は答えた。


「完全な空荷だと、敵が見破るかもしれない。少量の本物を入れて、匂いと重さを出す」


リナがうなずく。


「足跡や車輪跡も自然にしますね」


「そうだ」


セイルが言う。


「ただし、囮にも人が乗るなら危険です」


「人を少なくする。遠隔合図と撤退路を用意する」


軍務官が書き続ける。


「六、井戸管理」


セイルが言った。


「水は命です。井戸番を置くべきです」


「七、馬ではなく人力小分け搬送」


ガルドが言う。


「荷車が狙われるなら、小分けのほうが通る」


「八、折り畳み台車の活用」


俺は言った。


全員が俺を見る。


「平地や砦内で使えます」


リナが笑った。


「ついに台車が戦略に」


「台車は強い」


軍務官が真面目に書く。


折り畳み台車活用


よし。


作戦は決まった。


今夜、北方砦へ緊急補給を送る。


ただし、通常の荷車隊は囮。


本命は小分けした物資を三隊に分け、別経路から運ぶ。


アレン、ガルド、ミリアは囮隊の護衛。


目立つからだ。


セイルとリナと俺は、本命の小分け補給隊に同行。


俺の折り畳み台車も使う。


アレンが不満そうに言った。


「俺が囮か」


「勇者がいる補給隊は、かなり本命に見える」


「それはそうだが」


「目立つのは得意だろう」


「見栄え枝に振っていないのに」


「素質はある」


アレンは複雑そうだった。


ミリアが笑う。


「よかったじゃない。見栄えが役に立つわよ」


「囮としてな」


「勇者らしいじゃない」


「勇者らしいのか?」


俺は言った。


「かなり勇者らしい。敵の目を引いて、人を守る」


アレンは少し黙った。


そして、頷いた。


「ならやる」


出発前。


補給物資を小分けする。


保存食。


矢。


治療薬。


塩。


靴紐。


雨具。


油。


井戸用の清浄石。


鍋。


鍋は二つ。


砦には鍋が足りない。


これは前回学んだ。


俺は荷物台帳を作る。


隊一。


隊二。


隊三。


囮隊。


どの荷がどこにあるか。


もし一隊が止まっても、残りで最低限足りるように分配する。


セイルが薬を分ける。


リナが荷札をつける。


俺が重量を確認する。


折り畳み台車には、重いが壊れにくいものを載せる。


治療薬は背負う。


割れ物だからだ。


リナが言う。


「ユートさん、スキルツリー効果あります?」


「ある。小分けの判断が前より速い」


「便利ですね」


「かなり便利だ」


ただし、戦闘力はFのままだ。


そこは変わらない。


夜。


囮隊が先に出た。


松明。


荷車。


勇者アレン。


ミリアの火球。


ガルドの剣。


かなり目立つ。


いかにも本命。


アレンはマントを一枚だけなびかせていた。


よし。


本命の小分け隊は、少し遅れて出る。


雨具。


暗色の布。


松明なし。


小さな魔法灯を布で覆い、足元だけ照らす。


台車の車輪には布を巻いて、音を抑える。


道はぬかるんでいる。


ステータス札で確認。


残水量:八十二%

食料:二日分

補給物資:分散済み

台車状態:良好

注意:雨で車輪滑りやすい


よし。


いや、よくはないが、分かっているだけよい。


森の脇道へ入る。


リナが先行する。


セイルが後方確認。


俺は台車を引く。


台車は悪路非推奨。


分かっている。


だから、平らな区間だけ使い、ぬかるみでは畳んで背負う。


面倒だ。


だが、背負いっぱなしよりは楽だ。


しばらく進むと、遠くで爆発音がした。


ミリアの火球だ。


囮隊が接敵したらしい。


リナが耳を澄ます。


「魔物の群れ、囮へ向かっています」


「よし」


セイルが言う。


「無事でしょうか」


「アレンたちなら大丈夫だ。逃げ道も用意してある」


そう言った瞬間、空に青い光が上がった。


囮隊からの合図。


敵主力、囮へ誘導成功。予定通り撤退戦へ移行。


アレンはちゃんと手順を守っている。


かなり偉い。


俺たちは進む。


だが、次の谷道で問題が出た。


橋が落ちていた。


地図では残っている橋。


ヴォルガの仕業か。


セイルが言う。


「迂回路は?」


リナが地図を見る。


「上流に細い渡しがあります。でも時間がかかります」


「今夜中に砦へ届かない可能性がある」


俺は橋跡を見る。


完全には落ちていない。


片側の梁が残っている。


人だけなら、ロープで渡れるかもしれない。


荷は?


小分けしている。


これが効く。


「ロープ渡しにする」


俺は言った。


「荷をさらに小分け。台車は畳む。重い箱は諦めない。渡せるように包む」


セイルが頷く。


「治療薬は私が背負います」


「水に落とすな」


「はい」


リナがロープを向こう岸の木へ引っかける。


俺は結びを確認する。


スキル「結ぶ」が欲しかった。


取っておけばよかった。


いや、基本結びはできる。


焦るな。


荷をひとつずつ渡す。


保存食。


矢束。


清浄石。


油。


鍋。


鍋を渡す時、ロープが少し揺れた。


俺は息を止めた。


鍋は無事に渡った。


よし。


最後に台車。


折り畳んで布で包み、ロープで送る。


少し引っかかったが、渡った。


小分け搬送、強い。


かなり強い。


橋がなくても、荷が通る。


全員が渡り終えた時、森の奥から低い声が響いた。


「見事だ」


俺たちは一斉に構えた。


道の先に、黒い鎧の男が立っていた。


背は高い。


顔は兜で隠れている。


手には剣ではなく、短い杖。


腰には地図入れ。


背中には鳥籠のような通信具。


戦士というより、作戦官。


だが、放つ圧が違う。


「兵糧断ちのヴォルガ」


セイルが低く言った。


ヴォルガは笑った。


「そう呼ばれている」


リナが短剣を構える。


俺は台車の取っ手を握った。


戦闘力Fだ。


だが、逃げ道は見る。


荷物の位置も見る。


ヴォルガは俺たちの荷を見た。


「荷を三つに分け、囮隊を出し、橋が落ちても渡す。人間にしてはよく考えた」


「そちらこそ、橋を落とすのが早い」


俺は言った。


「褒め言葉として受け取ろう」


ヴォルガは杖を地面に突く。


「だが、甘い。補給は届くことだけが目的ではない。継続しなければ意味がない」


「その通りだ」


「今夜届いても、明日また断つ」


「なら、明日も別の道を作る」


ヴォルガは少し黙った。


「面白い荷物持ちだ」


「面白くはありません」


「勇者ではなく、お前が本命か」


「違います。俺は荷物持ちです」


「ならば、最も厄介だ」


ヴォルガは杖を掲げた。


森の奥から、魔物が三体現れる。


狼型。


大きい。


囮に向かった群れとは別働隊。


こちらを読んでいたか。


リナが前に出る。


セイルが結界を張る。


俺は荷物を下ろす。


通路を塞がない位置へ。


戦闘準備。


だが、俺たちは三人。


俺、リナ、セイル。


戦闘力は高くない。


まともにやれば不利。


俺は荷を見た。


油。


縄。


清浄石。


保存食。


鍋。


台車。


使えるもの。


「リナ、左の木」


「はい」


「セイル、足元結界」


「分かりました」


俺は油の小瓶を一本取り出した。


火をつけるわけではない。


ぬかるみに撒く。


狼型の魔物が突っ込んでくる。


足元が滑る。


セイルの結界が進路を少しずらす。


リナが木の陰から飛び出し、ロープを引く。


簡易の足止め。


一体が転ぶ。


俺は台車を広げる。


荷を載せるのではない。


盾代わりに立てる。


狼型の牙が台車に当たる。


台車が軋む。


「台車!」


リナが叫ぶ。


「まだ使える!」


いや、少し曲がった。


だが、時間を稼いだ。


セイルの防護が入る。


リナが二体目の目を布で塞ぐ。


俺は鍋を叩いた。


がん。


森に音が響く。


狼型が一瞬ひるむ。


さらに、遠くから笛が返ってきた。


合図。


近くの第三補給隊が気づいた。


よし。


補給は分散している。


つまり、こちらも完全に孤立していない。


ヴォルガが低く笑う。


「戦闘力は低いが、面白い」


「面白がるな」


「だが、今日はここまでだ」


ヴォルガが杖を振る。


狼型が下がる。


「補給は届くだろう。だが、次は倉庫を狙う」


「もう分散してあります」


「さらに狙う」


「さらに分散します」


「では、水を狙う」


「井戸番を置きました」


「では、名簿を狙う」


「番号管理です」


ヴォルガが黙った。


「お前、本当に何者だ」


「荷物持ちです」


「魔王軍に欲しいな」


「行きません」


「惜しい」


ヴォルガは森の闇へ消えた。


倒せなかった。


だが、補給は守った。


第三補給隊と合流し、砦へ向かう。


台車は片輪が少し曲がっていた。


かなり悲しい。


だが、まだ動く。


ステータス札。


台車状態:損傷軽微

応急修理推奨

使用継続:可

注意:右に流れる


右に流れる。


悲しいが、分かるだけありがたい。


砦に着いたのは夜明け前だった。


囮隊も別ルートで到着していた。


アレンのマントは焦げていない。


よし。


ミリアは疲れていたが元気。


ガルドも無事。


「ユート!」


アレンが駆け寄る。


「無事か」


「無事だ。台車は負傷した」


アレンは真剣に台車を見た。


「名誉の負傷だな」


「そうだ」


ミリアが言った。


「ヴォルガに会ったの?」


「ああ」


「強かった?」


「戦い方が嫌だった」


「最高に嫌な評価ね」


補給物資は倉庫へ入れられた。


保存食。


矢。


治療薬。


清浄石。


鍋。


砦の兵士たちは喜んだ。


特に清浄石と矢。


そして鍋。


鍋はまた喜ばれた。


砦隊長が言った。


「これで三日は持ちます」


「三日では足りません」


俺は言った。


隊長が表情を引き締める。


「分かっています。補給路の見直しを」


「小倉庫をさらに分散。井戸番。橋の仮復旧。偽装補給。荷物の小分け。台車の修理場所も」


「台車も?」


「台車は戦いました」


隊長は少し驚いた後、真剣に頷いた。


「了解しました」


台車の地位が上がった。


よし。


昼過ぎ、軍務局から伝令が届いた。


ヴォルガは撤退していない。


むしろ、北方補給路全体に狙いを広げている。


四天王戦は、まだ始まったばかりらしい。


アレンは剣を握った。


「次は俺が直接戦う」


「その前に補給網を組む」


「またか」


「兵糧断ちが相手だ」


アレンは深く息を吐いた。


「分かっている。戦うために、まず補給だ」


本当に分かってきた。


勇者が補給を理解すると強い。


俺は木札に触れた。


「神よ。今回はどうでしたか」


『よい補給だった』


「ヴォルガは強いです」


『強い』


「直接戦う相手ではないですね」


『道を殺す敵だ』


「はい」


『道を殺す敵には、道を増やせ』


「補給路を?」


『そうだ。一本の道に命を預けるな』


「分散ですね」


『荷も道も、分ければ生きる』


「教義ですか」


『採用』


「早い」


『相手が強いのでな』


神もヴォルガを警戒している。


それだけ厄介なのだ。


夜、砦の倉庫で、俺は荷物台帳を開いた。


ヴォルガ対策


一、補給路を一本にしない。


二、倉庫を大きくしすぎない。


三、橋に依存しない。


四、荷を小分けする。


五、囮に本物を少し混ぜる。


六、井戸番。


七、台車の予備部品。


八、敵は補給だけでなく名簿や連絡も狙う可能性あり。


九、勇者は囮として有効。


アレンが横からのぞき込んだ。


「九は何だ」


「事実だ」


「俺は囮なのか」


「今回は」


「勇者なのに」


「敵の目を引いて人を守った」


アレンは少し黙り、やがて頷いた。


「なら、よし」


ミリアが言う。


「ヴォルガ、また出そうね」


「出るだろうな」


セイルが言う。


「死者を出さないためにも、次の補給網を急がなければ」


ガルドが言う。


「次は戦う」


リナが言う。


「でも、まず道ですね」


「そうだ」


俺は折り畳み台車を見た。


右車輪が少し曲がっている。


修理が必要だ。


伝説級装備より当たりだった台車は、四天王戦で負傷した。


かなり立派だ。


聖剣が背中で光った。


『台車が戦ったのか』


「戦った」


『我は?』


「囮隊でアレンの近くにいた」


『我も戦った』


「そうだな」


『台車と同じ扱いではないな?』


「状況による」


聖剣は黙った。


少し不満そうだった。


こうして俺たちは知った。


魔王軍四天王は、炎や氷だけではなかった。


剣を交える前に、道を落とす者がいた。


橋を壊し、倉庫を焼き、馬の餌を奪い、井戸を狙い、補給隊を迷わせる。


戦場に来る前に、戦う力を削る敵。


それが、兵糧断ちのヴォルガだった。


だから、こちらも剣だけでは勝てない。


荷を分ける。


道を増やす。


倉庫を散らす。


井戸を守る。


囮を流す。


記録を残す。


戦う者が戦えるようにする。


それもまた、四天王との戦いだった。


北方砦への補給は届いた。


ヴォルガは退かなかった。


台車は少し曲がった。


アレンは囮として立派だった。


鍋はまた役に立った。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの補給戦は、これからだ。


「本当にこれからだろ」


第二部・完

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