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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第13話 変身ベルトを授かりました

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!


第13話 変身ベルトを授かりました



「変身ベルトを授けましょう」


王都の表通りで、銀色の仮面をつけた青年がそう言った。


俺は黙った。


リナも黙った。


勇者アレンは少しだけ身構えた。


ミリアは露骨に嫌そうな顔をした。


セイルは青年の仮面を見て、前回の黒幕を思い出したのか、警戒している。


ガルドはすでに剣の柄に手を置いていた。


銀色の仮面の青年は、白い外套をまとっていた。


胸には太陽のような紋章。


腰には大きな箱。


箱の中には、金属製のベルトと、赤い宝石のついた腕輪、そしてやたら派手な布が入っている。


どう見ても、普通の通行人ではない。


「なぜですか」


俺は聞いた。


青年は真面目な顔で言った。


「君には、変身戦士の適性がある」


「ありません」


「ある」


「学院測定では荷重管理Fでした」


「それは仮の姿だ」


「都合よく言い換えないでください」


リナが小声で言った。


「ユートさん」


「何だ」


「これも見たことあります」


「言うな」


「変身して強くなるやつです」


「言うな」


「ベルトを巻いて、ポーズを取るやつです」


「言うな」


「衣装とか増えそうですね」


「そこが問題だ」


銀仮面の青年は、俺たちの前に箱を置いた。


「私は変身戦士支援協会の者です」


「また協会か」


ミリアが言った。


「この世界、何でも協会があるわね」


「協会を作ると、それっぽくなるからな」


俺は言った。


リナが聞き返す。


「何がですか?」


「参考だ」


銀仮面の青年は続けた。


「近年、魔物の多様化により、通常装備では対応できない局面が増えています。そこで我々は、精神力と装備を同期させ、一時的に戦闘形態へ移行する変身システムを開発しました」


「変身システム」


「はい。これを使えば、君も一瞬で戦闘能力を得られる」


アレンが反応した。


「荷物持ちが戦闘能力を得るのか」


「荷物持ちが、ではない。選ばれし者が、です」


「選ばれし者」


俺は嫌な予感がした。


聖剣の時もそうだった。


選ばれるものは、だいたい荷物になる。


「なぜ俺なんですか」


銀仮面の青年は、箱から一枚の紙を取り出した。


「先日のダンジョン配信を見ました」


「また配信か」


「あなたは、戦闘の中でも冷静に荷物を管理し、撤退条件を判断し、鍋で湯を沸かしました」


「最後は変身適性と関係ありますか」


「あります」


「本当に?」


「変身戦士には、変身前後の装備管理が不可欠です」


「それはそうでしょうね」


「多くの候補者は、変身後の火力ばかりを見ます。しかし、変身前の衣装、変身後の損耗、修理、予備部品、洗濯、保管、決めポーズ用マントの管理を軽んじる」


俺は目を閉じた。


「決めポーズ用マント」


アレンが少し身を乗り出した。


「マントがあるのか?」


「あります」


「何色だ?」


「候補者により異なります」


アレンは真剣な顔をした。


「ユート、これは検討すべきだ」


「お前はマントに弱すぎる」


銀仮面の青年は、俺にベルトを差し出した。


「まずは試着を」


「試着だけですか」


「はい」


「契約書は?」


青年は少し目をそらした。


「簡単な利用同意書が」


「出してください」


「本当に読みますか?」


「読みます」


リナが笑った。


「もう定番ですね」


「契約は読む」


青年は薄い紙束を出した。


以前の魔法少女契約ほど厚くはない。


だが、油断できない。


俺は読み始めた。


第一条、変身装備の貸与。


第二条、使用条件。


第三条、修理費。


第四条、衣装破損。


第五条、決めポーズ中の事故。


「待て」


青年がびくっとした。


「決めポーズ中の事故とは?」


「変身時、名乗りやポーズを行う候補者が多く、周囲の物品を破損する事例があります」


「具体的には」


「肘で壺を割る。マントでろうそくを倒す。回転中に仲間を殴る。着地で床板を抜く」


「実績が多い」


「協会としては、決めポーズの安全距離確保を推奨しています」


「大事ですね」


リナが横から言った。


「ユートさんが興味を持ってます」


「持ってない。安全距離は大事だと思っただけだ」


俺は読み進めた。


第六条、変身中の衣装洗濯。


第七条、発光部品交換。


第八条、色落ち。


第九条、観衆への対応。


第十条、肖像利用。


「肖像利用」


青年はさらに目をそらした。


「変身戦士は人気が出ますので」


「またか」


ミリアが言った。


「魔法少女契約にもあったわね」


「変身すると肖像を使われがちなのか」


「目立つからでしょう」


俺は青年を見た。


「包括許諾ではないですね?」


「個別許諾です」


「よし」


「よしなんですか」


「前よりましです」


青年は少し安心した顔をした。


「では、試着を」


「まだです。修理費の上限は?」


青年は固まった。


「上限」


「戦闘で壊れた場合、候補者負担ですか」


「原則、協会負担です」


「原則」


「故意または重大な過失がある場合は候補者負担です」


「決めポーズで壊した場合は?」


「場合によります」


「危ない」


リナが小声で言った。


「ユートさん、すごくちゃんと見てますね」


「変身より修理費が怖い」


青年は汗をかいていた。


契約書を読み終わるころには、昼になっていた。


銀仮面の青年はすっかり疲れていた。


「では、同意いただけますか」


「試着のみ。戦闘使用なし。肖像利用なし。修理費は通常使用範囲なら協会負担。決めポーズは行わない」


「決めポーズなしですか?」


「危ないので」


「変身戦士なのに」


「安全距離が確保できない」


アレンが悲しそうに言った。


「決めポーズは大事だぞ」


「お前は本当にマントと見栄えに弱いな」


俺はベルトを腰に巻いた。


重い。


思ったより重い。


金属製で、中央に赤い宝石。


側面には小さな魔力カートリッジ。


背中側に固定具。


さらに腕輪。


さらに変身用の胸当て。


さらに予備部品。


さらに説明書。


「多いな」


俺は言った。


青年はうなずいた。


「基本セットです」


「これで基本?」


「戦闘用フルセットですと、さらに肩部装甲、膝部装甲、決めポーズ用マント、発光スカーフ、予備発光石、専用手入れ布、収納ケースが加わります」


「収納ケース?」


「はい」


青年は腰の大きな箱を開いた。


中には、変身装備一式を収めるための専用ケースが入っていた。


革と金属でできている。


頑丈そうだ。


そして、かなり重そうだ。


「これを持ち歩くんですか」


「はい。装備を保護するためです」


「重い」


「安全のためです」


「どれくらい」


「十二キロほど」


俺はベルトを外しかけた。


「待ってください」


青年が慌てた。


「まだ変身していません」


「装備ケースだけで十二キロは重い」


「ですが、変身すれば強くなります」


「変身していない時間のほうが長い」


青年は黙った。


核心である。


アレンが言った。


「だが、戦闘時に強くなるなら有用だ」


「その戦闘時のために、平時十二キロを運ぶ」


「……確かに」


ミリアが腕を組んだ。


「戦闘用魔導書を五冊持つようなものね」


「まさにそれだ」


ミリアは黙った。


過去の自分に刺さったらしい。


俺は木札に触れた。


「神よ」


頭の中に声が響く。


『聞いている』


「変身装備、どう思いますか」


『変身とは、荷を着ること』


「はい」


『強さを着るなら、その重さも持て』


「かなり本質です」


『ただし、決めポーズ用マントは不要』


「同意します」


アレンが叫んだ。


「神よ、それは違う!」


「お前が反論するな」


神の声が響いた。


『マントは濡れる』


「そうですね」


アレンが胸を押さえた。


「神にマントを否定された……」


「前からだ」


試着だけでは終わらなかった。


銀仮面の青年が、どうしても変身実験をしてほしいと頼んだからだ。


場所は、王都外れの訓練場。


広い。


周囲に壊れ物なし。


決めポーズ安全距離も確保済み。


俺は渋々、ベルトを巻いた。


青年が説明する。


「変身には、ベルト中央の発光石を押し込み、名乗りを行ってください」


「名乗り?」


「はい。精神同調に必要です」


「何と言えば?」


青年は紙を見た。


「標準文は、『運命を背負い、闇を払う。変身、ロードキャリア!』です」


ミリアが吹き出した。


リナは顔を伏せて震えている。


アレンは妙に真剣にうなずいている。


セイルは微笑んでいる。


ガルドは遠くを見ている。


「ロードキャリア」


俺は繰り返した。


「荷物運びじゃないですか」


「格好よく言えば、道を運ぶ者です」


「苦しい」


青年は真顔だった。


「さあ」


「やらないと駄目ですか」


「同調しません」


俺は深く息を吸った。


木札が少し温かい。


神が見ている。


聖剣も光っている。


やめてほしい。


俺はベルト中央を押し込んだ。


赤い光が走る。


「運命を背負い、闇を払う」


リナの肩が震えている。


ミリアは完全に笑っている。


アレンだけが真剣だ。


俺は続けた。


「変身、ロードキャリア」


光が俺を包んだ。


金属音。


布が舞う。


魔力が体にまとわりつく。


一瞬で装備が展開される。


胸当て。


腕部装甲。


脚部装甲。


背中には小さなマント。


小さい。


決めポーズ用ではなく、安全距離に配慮された短いマントだ。


よかった。


変身は成功した。


体が軽い。


視界が明るい。


力が湧く。


確かに、これは強い。


訓練場の的に向かって軽く拳を振ると、風圧で的が揺れた。


アレンが目を輝かせた。


「すごいぞ、ユート!」


ミリアも驚いている。


「本当に戦えるじゃない」


ガルドがうなずく。


「動きも悪くない」


セイルが感心する。


「防護力もありそうです」


リナが拍手した。


「ユートさん、似合ってますよ」


「ありがとう」


俺は少しだけ気分が良くなった。


強い。


確かに強い。


荷物持ちの俺でも、変身すれば一時的に戦闘に参加できる。


これは便利だ。


かなり便利だ。


その瞬間、ベルトから警告音が鳴った。


ぴぴぴ。


青年が叫ぶ。


「変身時間、残り三十秒です!」


「短い」


「試作型なので」


「先に言え」


「説明書に書いてあります」


「読んだが、変身時間欄は別紙だった」


「別紙二です」


「別紙を分けるな!」


三十秒後。


装備が解除された。


金属と布が一気に外れ、専用ケースに戻る。


俺は元の荷物持ちに戻った。


そして、ずしりとケースの重さが腕に来た。


十二キロ。


現実が戻った。


ミリアが言った。


「強かったけど、短いわね」


アレンが言った。


「決戦用だな」


セイルが言った。


「緊急時には有効です」


ガルドが言った。


「使いどころを間違えると、ただの重い箱だ」


その通りだった。


俺はケースを持ち上げた。


「これは、持ち歩くべきか?」


全員が黙った。


青年が必死に言う。


「ですが、変身できれば大きな戦力です!」


「三十秒」


「改良すれば一分に」


「ケース十二キロ」


「軽量化予定です」


「予定」


「検討中です」


また検討。


俺はケースを地面に置いた。


「持ち歩かない」


青年が崩れそうな顔をした。


「なぜですか!」


「通常旅では重すぎる。変身時間が短い。修理費リスクあり。専用ケースがかさばる。俺の役割は荷物管理。戦闘三十秒のために、常時十二キロは重い」


「でも、選ばれし」


「持てぬものは置いていけ」


俺は木札に触れた。


「神の教えだ」


青年は黙った。


アレンが少し残念そうに言った。


「しかし、決めポーズはよかった」


「よくない」


リナがにこにこしている。


「ロードキャリア」


「言うな」


ミリアも言った。


「運命を背負い、闇を払う」


「やめろ」


セイルまで穏やかに言った。


「変身、ロードキャリア」


「セイルまで」


ガルドは何も言わなかった。


助かったと思ったら、最後に短く言った。


「安全距離は十分だった」


「そこか」


青年はケースを閉じた。


「分かりました。今回は持ち帰ります」


「すみません」


「ですが、改良型ができたら、また試していただけませんか」


「仕様次第です」


「重量六キロ以下、変身時間三分以上、修理費上限明記、肖像利用個別許諾、決めポーズ任意」


「そこまで条件を」


「それなら検討します」


青年は真剣にメモを取った。


「分かりました。協会へ持ち帰ります」


「お願いします」


「最後に一つだけ」


「何ですか」


「名乗りの使用許可を」


「許可しません」


「ロードキャリア、評判になると思います」


「許可しません」


その時、訓練場の外にいた見物人たちから声が上がった。


「ロードキャリア!」


「さっきの変身、見たぞ!」


「鍋の人が変身した!」


「短いマントだった!」


「安全距離に配慮してた!」


俺は顔を覆った。


また見られていた。


この王都、公開水晶と通行人が多すぎる。


リナが楽しそうに言う。


「有名ですね、ロードキャリアさん」


「やめろ」


アレンが肩に手を置いた。


「決めポーズは磨けばよくなる」


「磨かない」


ミリアが笑う。


「でも、変身後は本当にかっこよかったわよ」


「変身前後の荷物が問題だ」


セイルがうなずく。


「力を得るには、支える仕組みも必要なのですね」


ガルドが言った。


「剣も鞘が要る。変身にもケースが要る。同じだな」


「まさにそれだ」


俺は少し感心した。


ガルドがかなり分かってきている。


ただ斬るだけの男ではない。


背中の聖剣が光った。


『我も変身できるか?』


「何に?」


『より聖なる剣に』


「鞘は?」


『……必要だな』


「ケースは?」


『……必要かもしれぬ』


「持たないぞ」


聖剣は黙った。


夜。


宿に戻ったあと、俺は変身装備の試験報告をまとめた。


青年に渡すためだ。


ミリアが呆れた。


「また書類」


「試験したからな」


「本当に書くのね」


「書かないと改善されない」


報告書にはこう書いた。


変身装備試用報告


一、戦闘能力向上は確認。


二、変身時間が短い。


三、装備ケースが重い。


四、修理費リスクの説明を明確にすること。


五、肖像利用許諾を別紙ではなく本紙に記載すること。


六、決めポーズは任意とし、安全距離を明示すること。


七、短いマントは評価できる。


八、名称については再検討を推奨。


リナが七を指さした。


「短いマントは評価するんですね」


「安全だったからな」


アレンが八を見て不満そうにした。


「ロードキャリア、悪くないと思うが」


「再検討だ」


「せめてロードブレイバー」


「それだと荷物要素が消える」


「ではキャリーブレイバー」


「悪化している」


神の声が響いた。


『ロードキャリアでよい』


「神様?」


『運命を背負う者としては悪くない』


「気に入ったんですか」


『少し』


「神様まで」


『ただしケースは重い』


「そこは同意です」


俺は木札に触れた。


「神よ。今回はどうでしたか」


『よい変身だった』


「本当に?」


『短かったがな』


「はい」


『変身とは、荷を着ること』


「今回の教義ですか」


『採用』


「強さを着るなら、その重さも持て、もですか?」


『採用』


「重いですね」


『ケースが十二キロだからな』


「そこですね」


『あと、短いマントはよい』


「神様、マントを全否定ではないんですね」


『濡れても軽いならよい』


「実務ですね」


こうして俺たちは知った。


変身は、掛け声だけでできているわけではなかった。


ベルトがいる。


腕輪がいる。


発光石がいる。


装甲がいる。


修理費がいる。


洗濯がいる。


肖像利用の許諾がいる。


決めポーズの安全距離がいる。


そして、それらを入れる重いケースがいる。


変身すれば強くなれる。


それは本当だった。


だが、強さを一瞬だけ着るためには、その一瞬を支える荷物を、ずっと持ち歩かなければならない。


力は、一瞬だけ着られる。


けれど、その一瞬を支える荷物は、旅の間ずっと残る。


だから、強さは使う場面を選ぶべきなのだ。


変身は成功した。


ロードキャリアという名前は広まった。


装備ケースは重すぎた。


協会は改良を検討することになった。


俺は変身装備を持ち歩かないことにした。


短いマントだけは、少し評価された。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの衣装管理は、これからだ。


「だから変身前の荷物も見ろよ」


第十三部・完

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