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前編:血縁

皆さん初めまして。現役文芸部所属の学生、メルです。

私が学校で制作している小説を改良した作品をこれからここに掲載させていただきます。


話のテーマとしては、主人公のメルと生き別れた兄との間に起こる様々なエピソードを書いていきます。素人ながら精一杯執筆させて頂きました。前編では生き別れた兄妹の出会いがメインです。

私は浅木メル。東京都世田川区の養護施設で過ごしている中学2年生。

トラウマから救われるために3年間施設で過ごしているけれど、友達も作らずに孤独に生きている。人と関わることは極力少ない方が楽だと考えている、正直社会的に厳しい人間だ。

昨日の体育祭の片付けを終えて学校から帰ってきた時、玄関で施設長が私を呼び止めた。

「メルちゃん、荷物を置いたら応接室に来てくれないかな?」

普段明るい10年目の施設長の山瀬カツヤさんは珍しく今日は真剣な顔をしていた。

私は部屋の机の上にカバンと体操着を置いて、応接室に向かった。応接室では、山瀬さんともう1人、同じくらいの年齢に見える男性が椅子に腰をかけていた。私が向かいの椅子に座ったら、その男性が名刺を名刺入れから取り出し、

「私はココと同じ系列で新谷にある養護施設の施設長をしている石上マサフミと申します。今日は浅木さんと山瀬さんに重要な話がありまして…」

 私は全く心当たりがなく、想像もできないため、1人できょとんとしていた。山瀬さんは真剣な顔を崩さず、引き出しから男の人の写真が貼ってある書類を取り出している。私は更に困惑した。

(誰だろう、写真の男の人、見たことは無いと思うんだけど…。)

 写真の男の人は、髪を生え際以外全て青みがかった銀色に染めていて、目つきが鋭く、口の横に痛々しいかさぶたができている。どこか威圧感を感じる顔をしていて、少し怖い。

「誰ですか?この男の人。」

私は恐る恐る尋ね、石上さんが答える。

「彼はね、風浦ミサト君と言ってね。説明が難しいんだけど…、なんと言おうか…。」

 山瀬さんが口を開いた。

「ミサト君はね、父親の違う君のお兄ちゃんなんだ。2歳上で、都内の明正高校に通っている高校1年生だ。」

私は思わず驚いて写真を凝視。明正って、偏差値70以上の超進学校だ…。こんなに不良そうな見た目なのに、もしかして凄く賢いのかな…。

「えっ、今お兄ちゃんって言いました?!」

石上さんは頷いた。

「どういうことですか?本当なんですか?この、風浦君っていう人。」

「そうだね、年齢を計算すると君が1歳の時、母親が彼を私の養護施設に放棄して生き別れたんだろう。信じられないだろうけど、君と彼の珍しい血液型が完全に一致。母子手帳に書かれていた兄妹の名前も一致してる。間違いなく、君たちは兄妹なんだ。」

 私は驚愕でよく理解できない。ようやく脳内が整理できてきたところに山瀬さんが

「前から何度も面談してきて分かったけど、ミサト君は本当に優しいよ。見た目はかなりヤンキーだけど…。」

 石上さんは私の目を見て話しかけてくる。

「浅木さんにお願いがあってね。生き別れの兄妹の感動の再会ってことで、今度…明日にでも会ってみてくれないかな?きっと彼なら浅木さんも楽しいよ。」

山瀬さんも同調している。私は椅子から立ち上がって声を振り絞った。

「私、嫌です。会いたくないです!」

「どうして…」

私は両手を握りしめて続ける。

「だって、怖いです…。いきなりお兄ちゃんって言われても、全く納得できないです。」

 当たり前だ。いきなり家族らしい人に会ってみてって言われても、よく理解できない上に怖い。

 山瀬さんは私をなだめる。私はなんとか落ち着いて座った。石上さんは少し申し訳なさそうな顔で

「浅木さん、もちろん無理にとは言わないけど、1回だけ会ってみて欲しい。もし合わなかったり、怖かったりしたら私が謝罪して慰謝料も払うし、二度と2人が出会わないようにする。」

なんて結構重要なことを言っている。そして私は流石に申し訳なくなった。

「そこまでしなくても大丈夫です。えっと…、宿題を早く終わらせたいので、もう戻ってもいいですか?」

山瀬さんが私の肩を叩いた。

「明日の15時に彼がココに来るから、少しでも気が向いたら応接室に来てくれ。」

 私はそう言われて部屋に戻って鍵を閉めた。

「どうしよう…。会った方が良いってことだよね、でも怖いよ…。」

 夕食の時間にいつも通り山瀬さんの料理を食べたが、口に入れた本来好物なはずのヒレカツには味がしなかった。私は久々に料理を残してしまい、負い目を感じながら部屋に戻ろうとしたところ、マー君が話しかけてきた。

「メーお姉ちゃん、今日体調悪いのか?」

 広岡マサキ君。施設でもコミュ障な私といつも仲良くしてくれる唯一の子だ。小学2年生らしく、わんぱくで皆に優しい。私を姉のように慕ってくれる子の前で心配を見せることはできない。

「全然。たまたまお腹が空いてなかっただけで、いつも通りだよ。」

なんて必死に考えて言い訳をしたけど、マー君には見透かされたみたいだ。

「絶対嘘なのだ!メーお姉ちゃんの大好きなヒレカツ食べてたのにずっと顔が険しいのだ。」

マー君は部屋の扉の前に立ち塞がるので、マー君を部屋に入れてしかたなく今日の出来事を簡単に説明した。

 マー君は私が引き出しから出してあげたお菓子を食べながら聞いている。

「ふーん。それは結構いきなりなのだ。結構ビビるのも分かるのだ。」

いつも通り、のだのだと無邪気に話す彼は私にお菓子を1つ手渡しながら

「でも、俺はアリだと思うのだ。だって山瀬さんが優しいって言ったんでしょ?見た目はヤンキーかもだけど、きっと優しい人なのだ。」

「えぇ、でも怖くないかな?」

私が1人でおろおろしていたら、マー君は立ち上がって私の前で宣言した。

「じゃあ明日は俺も面談についていくのだ。もしもその人がヤンキーだったら俺が絶対守ってやるのだ。」

 そしてマー君は眠たそうに目をこすって戻っていった。

「歯磨きするんだよしっかり。」

とだけ声をかけて私はベッドに寝転がった。しばらく目をつぶって考え続ける。

「よし、1回だけ会ってみる。絶対。怖かったらすぐに部屋を出よう。それなら…」

と考えていたら寝てしまった。

 少し寝坊して昼まで寝てしまったが、マー君がわざわざ起こしに来てくれて、ソワソワしながら勉強していた。

「あと30分…。」

今は14時30分、15時に応接室に行って兄という人に会う。緊張で勉強に集中できなかった。

 そして14時58分、私は緊張しながら、付き添ってくれたマー君と一緒に応接室に入った。

 そこには山瀬さん、石上さん、そして写真で見た風浦ミサトさんがソファーに座っていた。

 風浦さんは写真通りの見た目で、実際に見ると写真以上に威圧感を感じた。仮面のように全く変わらない表情を貼り付けている。

「お、メルちゃんとマー君。さあ座って。」

私は山瀬さんの隣に座った。マー君は急いで準備されたクッションに座った。一瞬風浦さんと目が合ったが、びっくりしてすぐにうつむく。やっぱり怖いよ。

 マー君が風浦さんを見て言った。

「メーお姉ちゃんが怖がってるのだ。まずは自己紹介するのだ。それが礼儀なのだ。」

「それもそうだね。ごめんね、いきなりで。」

 石上さんが風浦さんに声をかける。そして風浦さんが話し始めた。

「風浦ミサト。15歳。一応、きみの…、浅木さんの兄らしい。」 

山瀬さんが私の耳元で言う。

「メルちゃんも自己紹介はしておいたら?」

 私は顔を上げてもごもごと話し始めた。

「私は、浅木メルです。13歳です。」

 風浦さんは私をじっと見ている。石上さんがそんな様子の風浦さんに心配そうに聞いた。

「どうしたんだ?なにか気になったかい?」

と話しかけているが、風浦さんは真顔を少し緩ませて

「いや、なんていうか…。兄妹ってほんとに似るんですね。」

 石上さんと山瀬さんは安心して、山瀬さんが話し始めた。

「確かに、結構似てるね!2人とも右目に泣きぼくろがあるし、吊り目で双重だ!」

実際に風浦さんを見ていると私もそう思った。本当に似ている。顔のパーツ?というのか、雰囲気が似ている。

 石上さんはわざとらしく咳をして、衝撃なことを話し始めた。

「浅木さん、ミサト。君たち2人で一緒に住まないか?」

私はなんとか口を開いた。

「本気ですか!?流石にそれは…」

山瀬さんが前のめりになる私を軽く押さえて話し始めた。

「昨日、メルを騙すような言い方をして本当にごめんね。でも、これはメルにとって最大のチャンスだと思ったんだよ。」

「チャンスってなんですか!?」

 石上さんが次は口を開いた。

「ミサトにもしっかり同意を取っている。もしも賛成すれば、ミサトは誰よりも浅木さんを大事にしてくれるはずだよ。」

 おかしい、絶対に。いきなりこんなことを言うなんて有り得ない。マー君も立ち上がって反論した。

「それはいきなりすぎるのだ!知ってる人な訳でもないのに、有り得ないのだ!」

山瀬さんが苦しそうな顔をして口を開いた。

「石上さん、ミサト君と話し合っていたんだよ。塞ぎ込んでるメルは私じゃもうどうしても元気にさせてあげることができないんだ…。」

 私は山瀬さんの「もう」という発言に疑問を感じた。山瀬さんは続けた。

「実は、私は肺がんでもう先が長くないんだ…。もちろんメルちゃんを、他の皆が成人するまでは面倒を見てあげたいんだけれどね…。」

 施設の皆は薄々分かっていた。最近はどう見ても体調が悪そうで、私達の手伝いも今まで以上に増えた。

「やっぱり…、悪かったんだね、山瀬さん。」

マー君は腕を組んでまたクッションに座った。

「うむ、なんとなく知ってたが、やっぱりだったのかー。」

 石上さんはお茶を飲みながら話し始める。

「兄妹で一緒に生きることが2人の幸せにつながると思ったんだ。もちろん、私も困ることが無いようにサポートする。どうだい?ミサトと一緒に住もうと思わないかな?」

 私は思わず強く言ってしまった。

「でも!いきなり過ぎで、なにも風浦さんのこと分からないし、無理に決まってるよ!」

 私は急いで応接室を出た。そして部屋に閉じこもった。

風浦さんはしゃがんで目線を合わし、

「俺の唯一の血縁なんだ。いじめる訳がない。君は、浅木さんの友達なのか?」

「俺はメーお姉ちゃんの弟なのだ。血とかは関係無いのだ。」

マー君は誇らしそうに腕を組んだ。

「君は良い子だな。じゃあお姉ちゃんを俺に任せてくれるかな?」

マー君は珍しく険しい顔をした。

「お前、メーお姉ちゃんをいじめないか?」

「もちろん。」

「絶対に幸せにするか?」

「結婚するみたいな言い方だな。もちろんだ、任せてくれ。」

「なら合格なのだ。あとはメーお姉ちゃんの許可を取るのだ。そうすればクリアなのだ。」

 マー君は満足げな顔をして部屋を出た。


 私は今週も学校に行っていた。いつも通りの日常だったけど、違うところがあるとしたら、風浦さんが毎日夕方に施設に遊びに来ていた。

 風浦さんは基本笑っていないけど、無尽蔵のスタミナで夕食の時間まで子供たちの相手をし続けているから、皆に人気が出ていた。

 1週間経った頃、私は帰る風浦さんに声をかけた。

「あの、ちょっとお話しませんか…?」

「俺が怖かったら付き添いで山瀬さんでも呼ぶか?」

「大丈夫です。私の部屋に来てください。」

「え、女子の部屋に男入れるのは…。」

 私はそんな小声が聞こえず、部屋に風浦さんを入れた。私には聞きたいことがあった。

「風浦さんは…、なんで捨てられちゃったんですか?見た感じ、不良だったからですか?」

風浦さんは頭を掻きながら話し始めた。

「髪は色々俺の信念?があってな。捨てられた理由は…、さすがに覚えてないな、3歳だったし。」

「えっ!3歳!?」

「そう、3歳。」

 私は10歳だったのに、風浦さんは3歳なんて…、いくらなんでも早すぎなんじゃ…。

「3歳の頃から不良で愛想尽かされた的な?」

「まああの頃からユーチューブばっかり見ててやるべきこと全部サボってた…、って流石にその頃はまともなガキだったわ!」

風浦さんが少し表情を緩ませ、ノリツッコミした。

「ふふ。」

 私は少し笑って切り出した。

「私がもし一緒に住むってなったら、迷惑になりませんか?」

「もちろんだ、唯一の血縁なんだから命を懸けて守る。契約書書いても良い。」

風浦さんは即答した。

 私は嬉しかった。常に張り付いたような真顔で威圧感もあって怖いけど、だからこそ、大事なことで嘘を付くような気配は全く無かった。今まで出会ったどんな人よりも誠実に見えた。

「あの、風浦さん。お願いがあります。」

「ん?」

 私は勇気を振り絞って言った。

「私を、妹にしてください。」

風浦さんはしばらく固まった後、満面の笑みを見せてくれた。

「じゃあ、施設長たちに言っとくわ!持ってきたい荷物はどんだけあっても良いぞ。」

と言って帰っていった。

 翌朝、山瀬さんは私を見て優しく笑った。

「本当にありがとうね。ミサト君は本当に良い子だから、心配する必要はないからね。」

 

 夏休みの始まった7月1日、今日が施設最後の1日だ。マー君だけは私を泣きながら見送ってくれた。

「約束したから、いじめられるとこは絶対に無いのだ。安心して、お別れなのだ。」

「ありがとうね、私のために色々言ってくれて…。また会いに来るから。良い子にしてるんだよ?」

「言うまでもないのだ…。」

 マー君とついにお別れした。

 昼過ぎに学校の教材、筆記用具、制服、パジャマを持って山瀬さんの車に乗り込んで、風浦さんのマンションに向かった。

「ミサト君と仲良くなったら、2人で施設に来てね。その姿さえ見られれば、ある程度人生の願いは終わるよ。」

「山瀬さん、元気になってくださいね。入院してたら施設に行く意味が無いから。」

と笑って車を降りた。降りたところは、結構綺麗なマンションだった。

「1人暮らしだけど、結構裕福なのかな。」

重たいリュックを持って歩き出したら、階段を降りて風浦さんが迎えに来てくれた。

「ようこそ、荷物持つよ。」

「え、これくらいは自分で…。」

「重いでしょ。」

 風浦さんは私のリュックを背負って歩き出した。後ろで山瀬さんが車を降りて私を見ていた。その目は涙を溜めているのがよく分かる。私は手を振りながら、風浦さんに付いて行った。

 玄関で靴を脱いで、風浦さんの家にあがった。

「広いですね…。」

風浦さんは笑ってリビングに私を案内してくれた。

「施設長が5年も前に、浅木さんの存在をなんとなく分かっててさ。俺が1人暮らしするって中学生ながら言い始めたときに、もし妹が来てもってことで、1部屋明らかに余った物件を用意してくれたんだ。」

 私は石上さんの顔を思い出した。

「ここまで見通してたんですね…、あの人。」

「ほんと、怖い人だ。」

 風浦さんが笑って、リビングの横の部屋を指さした。

「ここの部屋あげるわ。一応ベッドとか机とかは用意してる。一昨日に急いで業者に鍵付きの扉に改修してもらったから、プライバシーも安心してくれて良い。」

 私は部屋に入った。しっかりと掃除されていて、誇り1つないし、窓が南側にあって日当たりも良い。風浦さんが部屋を覗き込んだ。

「足りない物あったら言って。彼女に女子に必要なもの聞いて用意したつもりだけど。夜ご飯できたら呼ぶから、好きに過ごしてて。もし飲み物とかおやつ欲しかったら勝手に冷蔵庫の横の箱漁って、俺お菓子好きだから色々あるし。俺は買い物行くから、もし泥棒とか入ってきたら電話して。」

「分かりました。」

 玄関を出る寸前で風浦さんは私に声をかけてきた。

「一応兄だから、名前で呼んでよ。ミサトって。」

私は少し緊張して、口を開いた。

「行ってらっしゃい、ミサトさん。」

「じゃあ行ってくる!」

 私はできる限りの笑顔でミサトさんを買い物に送り出した。ミサトさんも笑顔で玄関を出ていく。

玄関から差し込んだ太陽の光が眩しかった。その光はまるで、私の今の心のように明るかった。

 これを書いている時、なるべくリアリティを持たせるために努力しましたが、やっぱり脚色が増えてしまいました。でも、書きたい内容をしっかりと表現できたので、良かったです。

 中編、後編の3部構成の不定期投稿にするつもりですが、この作品が終わったらなろう系などのファンタジーにも挑戦したいですね。

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