大団円(改)
最終話です。少し加筆修正をしました。
楽しんでいただけると幸いです。
アリーが軍の自分の部屋に入ると報告書が置いてあり、例の3人のスパイを見つけ出し、尋問したという報告があった。
それを読むとやはり、我が国の情報を敵国に流すためにノエル侯爵家に入り込み、祖母の代から偽装工作をしては情報を得ていたらしい。
アリーはまあこれは尋問専門の者たちに任せた方がいいだろうと考えた。
しかし祖母も馬鹿な女だとアリーは煙草をくわえて火を点けた。
私が祖父と祖父が人生で唯一愛した自分よりも年下の女の間に生まれた娘だからっていじめることに集中しすぎてスパイにも気づかないなんて。
まあ息子のノエル卿ーー異母兄にあたるのかがあそこまで馬鹿じゃあ祖母のオツムも程度も知れるというもの。顔だけのノエル卿の妻に馬鹿な弟妹。
こうなるのも当たり前かとこの間見に行ったノエル侯爵家を思い出した。
そこは無人で、窓は割れ、壁には蔦が生い茂り、庭もめちゃくちゃ。廃墟になっていた。一家離散したその後は情報を得ていた。
ノエル卿は拳銃自殺。ドゥエックは貧民街のアパートに住み、人を怖がって毎日をビクビクしながら生きている。ほとんど浮浪者らしい。
セシリアは罪の意識で修道院へ。女としてはまだマシか。キャロラインは贅沢癖と我侭癖が消えず、当初は母と一緒に修道院へ行くつもりだったが、途中で逃げ出し、今は娼館勤め。人気はあるらしい。
ーーまあ、ちやほやされるしね。しかし娼館の女は教養がなくてはならない。相手をするのは貴族だからだ。キャロラインはやはりというか高級な娼館はクビになり今は平民用のところにいるらしい。でもそれも数年だろうとアリーは踏んだ。あの店ではキャロラインが満足できるほどの贅沢ができるほど賃金は発生しない。現に身分を隠して見に行った時、そこのマダムが困ったように話していた。
「あんなバカ娘、雇うんじゃなかった。18にでもなったらどうせ価値はなくなるしクビにしてやろう」
キャロラインの命綱はあと1年くらいらしい。次はどこの店へ行くのか。こういう女の最期は知っている。路上の売春婦か、なんでもやる場末の宿だ。
キャロラインもいつかは戦場へ来るだろう。兵士の慰安用の売春婦として。
アリーは何の感慨もなかった。
アリーはふと考えた。いつからノエル侯爵家は崩壊が始まったのか。
しばらく考え、「ああ」と思い出したようにつぶやいた。
祖父が死の床でアリーを呼び出し言ったのだ。
「アリソン、私の唯一愛する娘。お前の母はクリスティーンと言うんだよ。私はお前とクリスティーンを愛せて幸せだった」
それをたぶん祖母も聞いていたのだ。思えばみじめな女だなとアリーは考えた。
夫に愛されもせず、厳格な曽祖父と曾祖母の中で沈黙したまま言われたことをこなし、夫に尽くした結果、夫は別の女を愛し、女が死んだら赤子の私を連れてやってきた。
母も嫌だったろうなと考えた。まあ、どうでもいいが。
それに当時からなんとなく気づいてはいた。セシリアが金髪で緑の眼で、キャロラインが金髪の緑の眼で、ドゥエックが茶髪の緑の眼でノエル卿が濃い茶髪に緑の眼なのだ。祖母も緑の眼に茶髪。
祖父と曽祖父は黒髪に青い眼。遺伝学的に考えれば分かること。
祖父も浮気をしていたが、祖母も浮気をしていたのだ。推測ではあるが。
相手は誰かって?新兵訓練で唄ってたでしょ。
『牛乳屋とママがセックスして子どもができた、私もそうしたいわダーリン』ってね。
馬鹿どもが馬鹿をやって勝手に身を滅ぼしたわけだ。
アリーは一言「馬鹿らしい」と言って報告書の続きを読んだ。
明日は初めてベネディクトとデートというものをする。
どうやら私はアッカーソン卿との賭けに勝ったらしいとアリーは煙草を灰皿にもみ消して少し微笑んだ。
今日はレディ・オーガスタの店で初めて令嬢用の化粧品と香水を買わなくては、とアリーは考えた。
お読みいただきありがとうございます。
この話はこれでおしまいです。
ありがとうございました。




