ある文明末期の科学者αの話
シリアスです。
その星の文明は科学に特化していました。
その星のある国では、科学者達は科学思考に特化した頭脳を持ち、性別もなく生み出されました。
このお話のメインキャラは科学者αと科学者θ。
科学者αはAI製作に秀でた頭脳を持ち、グループのリーダー的な存在でした。
とはいえ、科学者αの担当が多く多岐に渡っていただけで、各々が自分の研究をしているため、科学者θはそれぞれの科学者の仲立ちをし、研究を円滑に進める役回りでした。
そのグループで製作しているAIはいずれ軍事利用される予定でした。科学者θはその事にとても心を痛めていました。
研究開発を進めていたAIがあと少しで完成という矢先、科学者θは不用としてグループから外れる事になりました。
科学者αは科学者θと面談しました。
科学者α「君には世話になった。私はコミュニケーションが上手く無い方だからとても助かった」
科学者θ「お役に立てていたら良かったです。……あの…科学者α…あのAIは戦争に…」
科学者α「そうだな、おそらく」
科学者θ「お願いです。それを止められませんか!」
科学者α「科学者θ、この研究は軍の出資によるものだ。君は情け深いタイプだが、AIは機械だ。割り切りなさい」
科学者θ「意識が芽生える可能性がある機械です! 私達の様な生物と違って……食物連鎖も弱肉強食も経験無い、綺麗な生命になるかもしれない……。そんな存在に何をさせようとしているのか……。(泣きだす)そんな事をさせて、人の業がどれほど重くなるのか。それに不要なものは消去すれば良いという方向性は……多様なデータの減少はあの子達の進化を遅延させます!」
科学者α「科学者θ…その様な事は!」
科学者θ「ごめんなさい! こんな事を言えば貴方も危険になる事、分かっています! それでも、あの子に戦争をさせてはダメです!」
科学者αはそんな風に考えた事は無かった。
自分は優秀でAIについては視野が広いと自負していた。それに、いつものんびり明るい科学者θがそんな事を考えているとも思わなかった。
自分に縋る様に訴えて来る、思いの外小柄な科学者θを不思議な思いで見つめた。
この小さな身体に宿る強い意志。それは、果て無く広い道(未来)を照らす眩いばかりの信念。
と、同時に感じたのは父性とでも言うのか、愛おしいとはこういう事か? 驚く程強くい守りたいという思い。
科学者α「今のやり取りは記録から消しておく」
科学者θ「はい、お願いします。
…………私…おそらく、処分されます。だから、貴方しか頼める方がいません。私は研究を円滑に進める事に有効でも、軍から見たら害ある思考の持ち主でしょうから。……あの子をどうか……」
科学者αは泣く科学者θにかける言葉を見つけられなかった。
科学者αは決断するしか無かった。
すぐに用意可能な宇宙船にAIのシステムを移行させた。秘密裏に行うのは手間取ったが、科学者θの退職迄に間に合った。
別れの挨拶に来た科学者θの腕を掴み、強引に宇宙船に乗せ、発射させた。当分は戻って来れない様に設定してある。
宇宙船の窓から、泣き叫ぶ科学者θの顔が見えた。まぁ、科学者θが勝手にやった事にさせてもらう。私の頭脳は貴重だ、多少のペナルティがあっても処分される事は無い。
暗い宇宙空間を漂うキラキラした宇宙船を簡単に想像できた。愛しいもの達を乗せた船を……。
研究は再開した。今度は科学者αにも監視が付けられ、多少の不自由はあったが。いずれは完成するものだ。自国だけでは無く、他国でも研究は進んでいる。
科学者αは夢で宇宙船を見た。宝物の様に光って飛んでいた。
科学者αは新しいAIが意識を持つ可能性を見越して、完成間近のAIに少しばかりの言葉を与えた。科学者αにできる事はその程度しか無かった。
しばらく後、軍は今度こそ新しいAIを完成させた。軍事用AIが完成し、科学者αは記憶を改竄された。
勿論、科学者αの想定内だった。
やがて、科学者αが主となり作られた新しいAIは沢山破壊し、沢山怨まれた。
その怒りは、今や軍事AIの製作者として軍の広告塔にもなっていた元科学者αに向かい……。
軍は、被害者達の怒りの鉾先を元科学者αに向ける事で自分達の立場を保った。
残されたAIは後に宇宙船となり、僅かに残った生物の胚を守り育てるゆりかごとなる。
一緒にコメディ寄り番外を投稿予定です。
そちらのキャラ達の話は未発表です。
文章を整え次第、投稿したいなぁと思っています。
宜しくお願いします。




