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今日も魔王城は平和です。  作者: 斑猫
はじめのはじめ
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3 補佐官と魔王

魔王と対、という意味で、私の衣装は白い。

何回注文し直しても、衣替えしても、白い。

だから、書類を運ぶ際は大変だ。

特に朝一の書類を運ぶ時は、インクが乾いていないことも多く、注意が必要だったりする。

ゆったりした作りの袖を捲り、書類を片手に抱え直すと、開きっぱなしの扉をノックする。

「失礼致します」

毛足の長い赤地の絨毯を歩けば、足音は響かず吸収される。

そのまま近づけば、書類の山と魔王の間に、今日も片手サイズの小さな水晶が見えた。

何かを映しているようだが、それは見えない。

正面からしか見えないのが、水晶のいいところだ。

だが今はそれが、正直忌々しい。

「陛下、郵便です。それから本日の予定ですが、……聞いています?」

「…………」

「陛下」

返事はない。

聞いてすらいなさそうだ。

「陛下ー。無視ですかー?」

「……」

ピクリともしない。

「おーい、馬鹿陛下」

動かない。眉間のシワすら動かない。

流石に今日は酷い。

昨日までは、2・3回呼べば、何かしらの反応があった。

なのに、今日は丸無視だ。

私の眉間にもシワが寄る。

「陛下!」

「……うるせぇな。ちょっと黙れ」

「はぁ!?」

やっと、やっっと返事が返ったと思ったら、これだ。

怒らずにいられるのか!?


私は、無理!!


次の瞬間、持っていた書類の束を、水晶目掛けて叩きつけた。

「いい加減にしろ!! こっの馬鹿ーー!!」

「!?」

水晶を覗き込んでいた魔王の、鼻先すれすれを、書類の束が勢いよく通った。

書類は、水晶だけでなく机にも当たったのか、物凄い音が執務室に響いた。

音にか書類にかは分からないが、普段無表情な魔王も、流石に驚いている。

いい気味だと思いたかったが、対する私は…………焦っていた。

うん。

とんでもなく、焦っていた。


やっちゃったーーーー!!!!

ど、どうしよう………………。


叩きつけた体勢から、戻ることができない。

何時間も、時間が止まったようだった。

恐らく3分もなかったと思うが、私には本当に長時間に感じた。

だって本当は、水晶にぶつける程度にするつもりだったんだ!

あんなに大きな音を、立てるつもりだってなかった。

確かに腹は立っていたが、ここまでする気もなかったし……。

本当に凄い音響いたよな……。

衛兵が着たらどうし


「おい」


「!!」

一気に冷や汗が出た、気がする。

忘れてた。

言い訳を考える前に、本人を何とかしないと。

「おい、無視か」

「い、いえ。あの…………そのー……」

何を言えばいいのかわからない。

怖くて顔も上げられない。

どうしよう。

「とりあえず、手引っ込めろ」

「……はい」

言われたからだろうか、すんなりと体が言うことを聞いてくれた。

体が震えている。

落とさないよう、書類を両腕で抱え込む。

顔は相変わらず、上げることができない。

「……」

「……」

「言うことは?」

「申し訳ありませんでした」

考えるより先に、口が動いた。

我ながらちょっと情けない。

そっと目だけで、水晶を確認する。

良かった。ヒビは入っていないかも。

ホッと胸を撫で下ろす。

「おい、顔上げろ」

いや、下ろせなかった。

そうだよ。

ヒビどころじゃないって、持ち主を何とかしないと。

とりあえず、顔を上げよう。

無理に動かせば、骨の軋む音が聞こえた。

どれだけ怖がっているんだ……。

でも、怖いものは怖い。


何とか顔は上げても、相変わらず目線は上げられなかった。

もしかしたら上げたつもりで、実際は、顔も上がってないのかもしれない。

だって、魔王のため息が聞こえた。

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