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今日も魔王城は平和です。  作者: 斑猫
ほんと、骨が折れるよ。
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29 補佐官と魔王

「あーもうっ! 早く歩けよ!!」

「うるせえな。こんだけ遅れてんだ、今更だろうが」

そう言って、のんびり人の後ろを歩いていた魔王が、わざわざ追いかけて来て後頭部をはたいてきた。

いや逆かな。はたきに追いかけてきたのか。

人気のない廊下に軽い音が響く。

手加減してくれているから、痛くはない。でも、いらっとする。


昼間一番人の出入りが激しい回廊付近の廊下も、この時刻ではすっかり静まり返り、誰もいない。

それが分かっているから、魔王の態度は軽く私も敬語を使わない。

勤務時間も終わっているし。

「だから先に行けって言っただろうが」

「そうだけどさ。だって、こんなに遅くなると思わなかったから」

面倒くさそうに言われると、つい不貞腐れ気味の返事を返してしまう。

なにせ夜遅く、と言うより深夜に近い。

自分の執務室の窓から見た時、すでに空は暗くなっていたが、今では白い半月が大分降りている。

せっかく急いで仕事を終わらせて時間を作ったのに、魔王の方が終わらなかったからだ。

結局、ゆっくり休憩することもできず、魔王の執務室で手伝っていたらこの時間になった。

しかし手伝わなければ、魔王は最悪来れなかっただろうから良かったのだけど。

「今更って言っても、誰か待ってるかもしれないだろ。メリルだって夜中に起こすのは可哀想だし」

「どうせもう寝てんだろ。爺だって普段から医務室泊りしてんだ。お前は一々気にし過ぎなんだよ」

「うっ。そんな事ない……はず……」

思い当たる過去が多すぎて、尻すぼみな返事になってしまう。

気にし過ぎは悪い事ではないと思うが、確かに度が過ぎることもある。だから、はっきり否定できない。

「おい。置いてくぞ」

「え。あ、待ってよ」

うっかり歩みを止めていたらしい。

いつの間にか大分先を歩いている魔王に追いつくべく、歩みを早めた。

ま、気にしても今更だ。どうせ直らない癖だし。


再び肩を並べて、先程より心なしかゆっくり歩く。

静かな廊下に、二人分のブーツの音が響いている。

急げだ何だと言ってはいたが、目的地の医務室までそんなに距離はない。目前にある回廊への扉を開け、向こうへ渡ればほぼ到着と言ったところだ。

「ああ、面倒くせえから先にガキんとこに顔出すぞ。どうせ爺の事だ、本でも読んでるか寝てんだろ」

「えぇ~~。そんな気はするけどさ~、大丈夫かな~?」

振り向きもせずしれっと言う魔王に、一理あるとは思うが不安にもなった。

予め伝えてはあるが、『面会時間外』『深夜』『到着時間の無連絡』だ。

その上で『無断面会』は、……どうだろう?



「なあ! やっぱり、まずい、って! さ、先に、アルニ老の所へ行こう!」

「もう着いてんだろうが! 離せ!」

先にアルニ老の元へ行くか行かないか、の答えが出る事もなく、メリルの病室に着いてしまった。

まあ、目的地目前だったから、大して悩む時間もなかったのだけど。

しかし夜中にアルニ老の説教を聞くのが嫌な私と、面倒だから先に会ってしまおうとする魔王は、病室の前で静かに攻防を繰り広げていた。

「離せって言ってんだろ!」

「医務室も、すぐ、そこじゃん! 先に、顔を出すだけでも!」

病室の扉をノックをしないように、後ろから魔王を羽交い締めにしているが、元々の力の差が違いすぎて結構限界だったりする。

病室前という事もあって、二人共声を抑えているが、これが逆に疲れる。

情けない事に私だけすでに息は切れ切れだ。

「すぐ隣! みたいな、距離だ、ろ!」

「てめっ! ――いい加減にしろ!」

「いっ!! ぐふっ!」

一瞬の内に足と脇腹を激痛が襲った。

荒げた声と共に振り下ろされた足は、見事に私の足を捉え、思わず拘束が緩んでしまった。その隙に抜け出した魔王の肘が、足の痛みに悶える暇も与えず、脇腹を強打したのだった。

廊下に崩れ落ち、脇腹を押さえる。

痛いどころの騒ぎじゃない。

足も痛いが、脇腹の方が酷い。痛みに声が出せないし、呼吸をするだけでも痛む。

痛いっての! 本気で入れてきたよ、この男!

何が起きたのか理解した時には、頭上でノックの音が聞こえていた。

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