1話 魔力のない転生者
2026/8/17開始〜
2026/8/18 100pv・200pv達成
2026/8/19 300pv達成
2026/8/20 400、500pv達成
2026/8/21 600.700.800pv達成
2026/8/22 900pv達成
感謝ですm(_ _)m
目を覚ますと、知らない天井があった。
「……どこだ、ここ」
白い天井。
木製の梁。
見たことのない模様の入った壁。
病院……ではない。
そう考えた瞬間、頭の奥に激痛が走った。
「っ……!」
記憶が一気に押し寄せてくる。
会社。
残業。
帰り道。
赤信号。
そして――迫ってくるトラック。
「……そうか」
俺は、死んだ。
妙に冷静だった。
もっと恐怖すると思っていた。
もっと「死にたくない」と叫ぶと思っていた。
なのに、不思議なくらい頭は冷えている。
そして、その代わりに別の記憶が流れ込んできた。
俺の名前は――キラ。
この世界で生まれた、五歳の少年。
父親は辺境を治める貴族。
母親は元冒険者。
そして、この世界には――魔法がある。
「……マジかよ」
思わず笑った。
転生。
異世界。
魔法。
前世の小説やゲームで何度も見た設定だ。
まさか自分が経験することになるとは思わなかった。
しかも、五歳。
これはもしかして、テンプレというやつではないだろうか。
神様からチート能力をもらって。
幼少期から修行して。
十歳くらいで大人顔負けの魔法を使えて。
そのうち美少女の仲間が増えて。
魔王を倒して――。
「……夢が広がるな」
その日から俺は、魔法の勉強を始めた。
とはいっても、五歳児にできることなんて限られている。
父親の書斎から借りた魔法書を読む。
母親から魔力操作を教わる。
毎朝、庭で魔力を動かす練習をする。
結果。
三か月で、俺は一つの結論にたどり着いた。
「……俺、魔法の才能ないな」
魔力が少ない。
いや、少ないどころではない。
ほとんどない。
火魔法の適性――最低。
水魔法――最低。
風魔法――最低。
土魔法――最低。
光魔法――最低。
闇魔法――最低。
母親は気まずそうに笑っていた。
「だ、大丈夫よ、キラ。魔法がすべてじゃないわ」
「うん」
父親も言った。
「剣術を学べばいい。魔法が苦手な騎士だって珍しくない」
「うん」
優しい両親だった。
だからこそ、余計に分かる。
俺は、この世界では完全な落ちこぼれだ。
そして五歳になった今日。
俺は教会に来ていた。
五歳になると、この世界の子供は全員、神殿で「鑑定」を受ける。
魔力。
適性。
才能。
そして――固有能力。
「それでは、キラ・フォン・レイゼン」
神官が水晶玉に手を置く。
「手を」
「はい」
水晶に手を触れた。
光が走る。
次の瞬間。
空中に文字が浮かんだ。
【名前:キラ・フォン・レイゼン】
【年齢:5】
【種族:人族】
【レベル:1】
【魔力:3】
【筋力:4】
【敏捷:5】
【知力:8】
【魔法適性:E】
【固有能力:再構築】
「…………」
静まり返った。
神官の顔が引きつっている。
父親も。
母親も。
何も言わない。
当然だ。
俺の魔力は、一般的な五歳児の平均を大きく下回っていた。
そして問題はもう一つ。
「固有能力……再構築?」
神官が首を傾げた。
「聞いたことがありません」
水晶に指を近づける。
すると、能力の詳細が表示された。
【再構築】
【一定の条件を満たした場合、自己の状態を再構築することができます】
【現在、使用条件を満たしていません】
「……それだけ?」
俺は思わず口に出した。
神官は困ったように笑う。
「どうやら、そのようです」
「役に立つ能力なの?」
「……判断できません」
ですよね。
レベル1。
魔力3。
魔法適性E。
謎の能力。
完全にハズレだ。
前世の俺なら、ここで「異世界転生キター!」と喜んでいただろう。
だが現実はそんなに甘くなかった。
俺は教会を出た。
父親が何か慰めようとしている。
母親も心配そうに俺を見ている。
けれど俺は、それどころではなかった。
ずっと気になっている。
さっき表示された、あの能力。
――再構築。
家に帰るなり、俺は父親の書斎に飛び込んだ。
魔法書。
魔物図鑑。
スキル大全。
片っ端から読み漁る。
そして夜。
ようやく一冊の本を見つけた。
『古代魔法論』
そこに、小さく書かれていた。
――魔法とは、世界に存在する法則を魔力によって一時的に再現する技術である。
「……法則を、再現する」
ページをめくる。
火魔法。
水魔法。
風魔法。
土魔法。
どれも長い歴史の中で完成された魔法だ。
魔法使いは、その「完成された魔法」を覚える。
火を出すなら火球。
水を出すなら水弾。
風を操るなら風刃。
つまり――。
「魔法って、最初から決まってるのか?」
ふと、疑問が浮かんだ。
なぜ火球は球なのか。
なぜ火を飛ばす必要がある?
なぜ水を操るのに決められた詠唱が必要なんだ?
前世の知識が蘇る。
科学。
物理。
化学。
熱。
圧力。
電気。
――魔法が世界の法則を再現するものなら。
別の法則を使えば。
「新しい魔法を……作れる?」
その瞬間。
頭の中に、見たことのない文字が浮かんだ。
【条件達成】
【固有能力《再構築》が一部解放されました】
「……え?」
さらに文字が続く。
【既存魔法の再構築が可能です】
【現在の魔力では、使用可能な魔法は存在しません】
俺はしばらく固まった。
そして。
ゆっくり笑った。
「……なるほど」
魔法が使えないんじゃない。
違う。
俺には――
普通の魔法を使う才能がないだけだ。
だったら。
「普通じゃない魔法を作ればいい」
この日。
異世界で最も魔力の少ない少年が。
誰も知らない魔法を作り始めた。




