第四話
「メリザンド・ゴンティエ。禁じられている闇魔法を使用しただけではなく、私の婚約者であったフェリシー・エヴラール伯爵令嬢に呪いをかけ声を奪い、王子である私に魅了をかけ操ったなど、到底許される事ではない。極刑は免れぬと思え。衛兵、メリザンドを連行しろ」
「……ふふっ、私はカジミール様と結婚していずれ王妃になるのっ」
カジミール殿下に、実質死刑を宣告されているのに、メリザンドは妙に落ち着いていて、笑みさえ浮かべています。
「カジミール王子、これをその者に着けてください。魔封じの首輪です」
シルヴァン様はカジミール殿下に黒い石で出来た首輪を渡されました。
この首輪は、着けている者が魔法を使えなくなり、一度着けると外すことの出来ない物だそうです。
「連行される間に、また闇魔法を使われては堪りませんからね」
シルヴァン様がメリザンドを一瞥します。
「いや!やめなさいよっ‼︎私は未来の王妃なのよっっ‼︎‼︎カジミール様ぁぁあっ‼︎‼︎」
衛兵が抑え込み、必死で抵抗するメリザンドの首にカジミール殿下が首輪をつけました。
先程の落ち着きは、やはり闇魔法を使うつもりだったからのようです。
◇◇◇
あの舞踏会から二週間ほど経ちました。
ゴンティエ子爵家は取り潰しになり、メリザンドは連行された三日後に公開処刑で首を二度刎ねられました。
どうやら、うっかり刃が研がれていなかったらしく、一度目は半分ほどしか切れなかった為、二度目でようやく首が落ちたそうです。
そして、二度目に刃が落とされ絶命するまで、この世のものとは思えない叫び声を上げ続けていたそうです。
「フェリシー、明日はやっと君が私の妃になる日だね」
「はい、シルヴァン。とても楽しみです」
「きっと世界で一番美しい花嫁だな」
「シルヴァンも、世界で一番素敵な花婿さんですよ」
翌日、ランベール魔法国の王城で、私達は結婚式を挙げました。
シルヴァンからの希望もあって、結婚式では私の歌を披露させていただきましたところ、
『フェリシー王太子妃の歌声はランベールの至宝』
と、有難いことに、参加した皆様には喜んでいただけたようで、新たにこの様に評されるようになりました。
気恥ずかしいのですが、ランベール魔法国の方々に受け入れていただけたのだと思うと、とても嬉しかったです。
私を絶望から救い出してくれたシルヴァンと共に、幸せになります。