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早起きの竜宮さん

「ん……」


 あれ、今何時……?


 スマホどこ……?


 ない、ない、……あった。


「うえぇぇぇぇ!? 8時ぃ!?」


 寝坊したぁぁぁぁ──っ!!


 朝ごはん作らないと、ってやだ、パンツどこ!?


 昨日脱いだやつがない!


 まさか足が生えてどこかに歩いて行ってわけじゃないよね!?


 ああもういいや、新しいの着よう!


 とにかく急げ私!!


 寝坊なんて滅多にしないのになんでよりにもよって月曜日にやっちゃうかなぁ。


 最低限の衣類を身につけてキッチンに向かう。


「はぁ、はぁっ、はっ……、え?」


 そして、私は目を疑った。


「おはよう。もうすぐ朝飯できるぞ」


 エプロン姿の刀士郎さんが味噌汁を作っていたからだ。


「と、刀士郎さん!? そんなのあとでいいから早く支度してください、遅刻しちゃいますよ!?」


「は? ……あー、なるほどね。くっくっく」


「な、何笑ってるんですか!」


「昨日俺が言ったこと忘れてんだろ。今日は仕事休みだぞ」


「ほえ? ……そうでしたっけ?」


「そうだよ。とりあえず歯ぁ磨いてきな。そのあいだに用意しとくから」


 お言葉に甘えて、私は朝の身支度を整えに行った。


 すべてが済んでリビングに戻ると、ご飯と味噌汁と卵焼きとウィンナーが食卓に並んでいた。


「おかえり」


 先に席についていた刀士郎さんが片手を上げる。


「ただいま」


 私はその向かいに座る。


「ああ、そうそう。今、洗濯機も回してるんだ。起きたら着るもんなくてびっくりしただろ」


「は、はい。随分と早起きしましたね」


「なんか目ぇ覚めちまってな。せっかくだから普段任せっきりの家事をやっとこうと思って。ちなみにユイのスマホのアラームを止めておいたのも俺だ」


 ドヤ顔する刀士郎さん。


 道理で起きられなかったわけだ。


「飯食ったら洗濯物干すわ。洗い物もまとめてやっとく。ユイ、今日はのんびりしろよな」


「ええっ、悪いですよそんなっ」


「遠慮すんなって。夫婦だろ、俺たち。たまにはこっちもがんばらせてくれよ」


 あっ、爽やかスマイル、イイ。


 じゃなくて!


「貴重なお休みなのにいいんですか? 私はいつも通り休んでいただいても……」


「俺だっておまえに休んでもらいたい」


 うっ、真剣な目で見られたら何も言えない……!


「わ、わかりました。じゃあ今日一日、お願いしますね」


「任せろ!」


 刀士郎さんはサムズアップした。




*****




「〜♪」


 刀士郎さんの鼻唄が聞こえる。


 たぶん、高校の頃流行っていた曲のどれかだ。


 私は適当に流していたテレビを消し、刀士郎さんの声に耳を傾けた。


 それくらいしかすることがなかった。


「…………」


 暇だ。


 何もすることがない。


 余った時間をどう使えばいいのかわからない。


 刀士郎さんとイチャイチャしたいけど邪魔するのも悪いし、かといって先回りして家事をやってしまってはせっかくの心遣いを無下にしてしまう。


 むむむ……、どうしたものか。


「ん?」


 鼻唄が止んだ。


 何かあったのかな?


「……ちょっ、なんで私のパンツを凝視してるんですか!?」


 私は慌てて刀士郎さんからそれを取り上げた。


「いや、いつもすぐ脱がしちゃうけどこんなの履いてるんだなぁって」


「だからってまじまじと見ないでください! ……それに、言ってくれたら今履いてるのだって見せてあげますよ?」


「────」


 刀士郎さんが手で顔を覆う。


「今日は家事をするって決めたんだ。そういうのは全部片付けてからにする」


 自分に言い聞かせるような口調。


 わずか数秒のあいだにものすごい葛藤があったのだろう。


 ……これは面白いかもしれない。


「じゃ、早く終わらせましょっ」


 私は後ろから刀士郎さんに抱き、わざとおっぱいを押し当てた。


 おかげさまでサイズには多少の自信がある。


「ぐッ」


 刀士郎さんがフリーズする。


 両手を空中で彷徨わせたあと、ハンガーと洗濯物を掴む。


「ふふふ……、そうくるか。だが、この程度の誘惑に負ける俺ではない! 俺の精神力を甘く見るな!」


「ふーん。あくまで抵抗する気ですか。ならこういうのはいかが?」


「ぬおっ!?」


 私は体を上下に動かし、おっぱいで刀士郎さんの背中をマッサージする。


 あん、先っぽがこすれて気持ちいい……、そういえばまだブラつけてませんでしたね、私。


 刀士郎さんの体温はみるみるうちに上がっていった。


「ふーッ、ふーッ」


「あれー? 息遣いが荒いですよー? ホントは今すぐにでも私のこと襲いたいんじゃないんですかー?」


 体だけでなく言葉でも煽ると、いよいよ刀士郎さんは振り向いて私を押し倒した。


「おまえが悪いんだからな」


 ギラギラした目に睨まれて、私はゾクゾクと震え上がる。


「コッチのほうも早起きですね」


 やっぱり刀士郎さんはこうでなくっちゃ!


 私たちは重なり合う。


 一通りの事が済んだのは正午を過ぎた頃で、残っていた家事は二人でやった。

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