おじいさんと兎
『おじいさんと兎』
むかしむかし、森の奥深くに1人のおじいさんが住んでいました。
おじいさんはずっと1人で、森の奥にある家でひっそりと暮らしていたのでした。
ひとりぼっちでもおじいさんはさみしくありません。なぜなら、おじいさんの住んでいる家には毎日、真っ白な兎が訪ねてくるからです。
今日もいつものように、兎が窓を叩いています。
「おじいさん、おじいさん。起きてこの窓を開けてくださいな。」
「あぁ、おはよう、兎さん。もうそんな時間なんだね。」
「そうですよ、もうお天道様が真上に来そうな勢いです。今日は暖かいから、野いちごでも摘みに行きませんか。やっといちごが大きくなって、それはそれは真っ赤に色づいているんです。」
「それはいいね。では、すぐに出かけよう。道案内をお願いできるかい?」
「もちろんです、私に着いてきてくださいな。いちごが私達を待っていますよ。」
兎が鼻をひくつかせながら そう言いました。おじいさんは、野いちごがたくさん入りそうなカゴを持って、ゆっくりと兎について行きました。
家から少し歩くと、たくさんの野いちごがなっている場所に着きました。そこは他の動物がいなくて、とても静かでした。
野いちごはまるで宝石のようにきらめいていて、触ったらほろりと落ちてしまいそうなほど綺麗に熟しているのでした。
「どうです、凄いでしょう。私が森の中を跳ね回ってやっと見つけた穴場なんです。」
「そうなのかい、とてもすごいじゃないか!兎のお手柄だね。」
おじいさんがそう言うと、兎はとても嬉しそうに尻尾を動かしました。
おじいさんと兎は両手に抱えきれない程の野いちごを持って帰りました。
真っ赤に熟れた野いちごはとても美味しそうで、兎は食べそうになってしまうのを必死に我慢していました。
「これでジャムを作ろう。甘酸っぱい、とびっきり美味しいジャムにしよう。」
「それは名案ですね!では私は少し待っていますね、真っ白な手が真っ赤になってしまわないように。」
兎は少し面白そうに言って、おじいさんのベッドの上に飛び乗りました。
おじいさんは兎と一緒に取ってきた野いちごを鍋に入れて煮込み始めました。
だんだんと甘い匂いが漂ってきて、おじいさんも兎もお腹が空いてくるのが我慢できませんでした。
「おじいさん、まだできませんか?」
「あとは冷ますだけさ、とてもいい匂いでお腹が空いてしまったよ。」
「そうですね、私もすっかりお腹が空いてしまいました。野いちごのジャムは紅茶に溶かして飲んでみませんか?日向ぼっこでもしながらのんびりしましょう。」
「いいね、賛成だよ。少し待っていておくれ、今淹れてくるよ。」
おじいさんはカップと少し深めの皿に紅茶を淹れて、冷めたジャムと一緒に兎の元に持って行きました。
「わぁ、いい匂いですね!早速いただきますね!」
「うん、ゆっくりといただこうじゃないか。やけどしてしまわないように気をつけるんだよ。」
おじいさんと兎はそっと紅茶を飲み始めました。その紅茶は ほんのりと甘く、野いちごの香りもしっかりして、とても美味しかったのでした。
兎とゆっくりと話をしていると、あっという間に日が暮れてきてしまいました。
辺りはもうオレンジ色の光に包まれています。
「おじいさん、今日はありがとうございました。また一緒に何処か散歩に行きましょう。」
「こちらこそありがとう、とても美味しいジャムができたよ。その散歩にはこのジャムを使ったサンドイッチを持って行くよ。」
おじいさんと兎は笑顔で別れました。
兎が去って行ってからおじいさんは少し残っていた紅茶を飲み干して、笑みを浮かべました。
こうしておじいさんは毎日楽しく暮らしているのです。




