第53話 ゆっくりペースでわたしらしく
1日は24時間しかない。
わたしは失敗を繰り返さないために、生活のリズムを見直した。
まずは平日。
仕事のある日は自分の自由になる時間が少ない。
これは当然のこととして考慮しなければいけないことだ。
通勤時間に勤務時間、休憩時間とあるけれど、執筆に使える時間はほぼないと思ったほうがいい。
わたしの場合、通勤は自家用車だ。
車を運転しながら執筆とか、危ないし、そもそも無理。
ここは運転に集中すべきである。
勤務時間は論外。
いくら何でも屋の事務員といっても、勤務時間内は仕事をすべきだ。
だが勤務時間も、通勤時間も、作品のヒントがポンと浮かぶことはある。
それになんといっても経験は執筆に活かせるのだ。
無駄にはならない。
それにお金が稼げる。
税金やら年金やらを考えたら、フリーランスでしっかり稼いで生活できるレベルにするなら、月に100万円稼げという話らしい。
そんなん無理だろう。
だいたい、毎月、毎年、稼ぎ続けるのは難しい。
わたしは気楽な何でも屋の事務員として働きながら、親元で生活するのが合っている。
いずれは生活を変える必要が出てくるだろうが、それは少なくとも今ではない。
いずれ変える必要があるからこそ、体調管理が大事なのだ。
わたしの体調だって、年齢と共に変わっていく。
もっと弱くなるかもしれないが、もう少し丈夫になる可能性はゼロではない。
バリバリ働きたいなら、体を整えなければ。
わたしはちょっとだけ筋トレを始めた。
筋肉は裏切らない。
噂でそう聞いている。
世界一浅いスクワットでも、続けないよりは続けたほうがいい。
続けているうちに筋肉が裏切るか、裏切らないか、知ることになるだろう。
休憩時間は休憩する。
これも必要なことだ。
投稿サイトの確認作業ついでに書きたくなるし、あれこれとしたくはなるが、そこはグッと耐える。
休まないとダメだ。
むろん食休み後のスクワットは推奨される。
世界一浅いスクワットをやっているのを佐々木に見られて、「ンンッ!」とか変な声を出されても耐える。
ぶん殴りに行ってはいけない。
わたしは虚弱なのだ。
殴って痛い思いをするのは、わたしのほうだから、耐える。
だから平日の執筆に使える時間は、夜。
もしくは早起きして朝ということになる。
残業はほぼないといってもゼロではない。
1日に何時間、とか執筆時間で決めてしまうと結局は無理が出る。
だから就寝時間は厳守するのだ。
お風呂はなるべく湯舟に浸かる。
わたしは冷え性だからだ。
冷え性の体を快適に動かすには、1日1回程度はホコホコにするのがコツである。
ホコホコにして冷えてきたところでスッと寝る。
健康を保つにはコレだね、やっぱ。
そうなると食事の後にお風呂というのがいい。
我が家は母が料理をしてくれるので、帰宅してすぐに夕食を摂るという荒業が使えるのだ。
この快適さ。
子ども部屋おばさん一直線である。
だが倒れるよりはマシだ。
甘えられるところは甘える。
それがわたしなのだから、無理はしない。
ということで執筆に使えるの平日の時間は、夕食を食べ終わってお風呂へ入るまでの時間と、風呂上がりのわずかな時間ということになる。
就寝時間は決まっているが、眠くなったらその時間よりも前に寝る。
翌日の朝に書いたほうが、効率がよいからだ。
体の要求に従いつつ、無理のない範囲で作業時間を確保する。
だから平日は、執筆時間はあまりとれない。
でもデジタル文具があるから、書こうと思えば割と書ける。
デジタル文具の前に座っても書けないということは、構成なり、エピソードなり、本文にかかわる何かが出来上がっていないということなのだ。
だから潔くあきらめる。
書けないのにデジタル文具の前で唸っていても、平日の貴重な執筆時間が無駄につぶれていくだけだ。
寝るなり、校正するなり、他に出来ることをする。
書籍化作業については締め切りがあるから、自分のペースばかりを優先できない。
その代わり、出版社さんとの間で話し合って、余裕のあるスケジュールを組むことにした。
いったんそのように自分で決めてしまえば、交渉が必要なときには交渉できることを学んだ。
美香と久美子の仕込みがよいせいか、意外とわたしは出来る子になっていた。
不思議だね。
むろん平日にできないということは、週末にまとめて作業することもある。
とはいえ、全部週末にやると、せっかくの休日に疲れが溜まってしまう。
わたしの場合は、執筆はまとめて週末、平日に投稿作業やプロット、ネタ出しなどをやるのが効率がいいと分かった。
一度リズムが掴めれば、あとは割と楽である。
ゆっくりペースで、わたしらしく。
無理をしないことに決めはしたが、人生にはだいたいイレギュラーがぶっこまれてくるものなのだ。




