10話 【作業厨】のはじめてのおつかい
「よし、これである程度は強くなった。ここから先は追々ということで」
俺達はこの数ヶ月、訓練という名の作業でお互いを高め合った。
魔力が尽きるまで魔法を使ったり、攻撃を受け続けたり。中でも一番楽しかったのは、マンションの破壊かな。作ったマンションを爆破して塵へと変える、とても爽快だ。ちなみに、俺やプリンはその爆発をもろに食らっても耐えられる。
そうそう、この数ヶ月で変わったことがいくつかある。
一つ目は、俺とプリンが別々で特訓するようにしたこと。一ヶ月に一回、お互いの成果を見せあったりはしているものの、基本は個人練だ。
そして二つ目は、もう帰ってきた。
「ただいま! やっと終わったよ。ねぇリック、これからどうするの?」
ドアを開けて入ってくる、金髪の少女。
「おかえりなさいプリンちゃん、今日の昼ごはんはチュンリーの丸焼きよ」
「やったー! ボク、ママのこと大好き!」
もうお気づきだろうか。スライムのプリンが……。
人間に擬態できるようになったのだ! 母さんも父さんも初めは驚いて居たけれど、今じゃ家族の一員だ。
「おねえちゃん、おかえり!」
コウも大きくなった。最近はプリンのことを『おねえちゃん』なんて呼んでいる。少し前までは「ぷにぷに」なんて言ってプリンを練り飴にしていたのに……。懐かしいなぁ。
ちなみにチュンリーって言うのは、俺とプリンが出会ったキッカケのあのスズメである。決して、ストリートでファイトするキャラクターではない。あ、知らない人は『春麗』で調べてみよう。
……まじで足がパピコだから。
誰に言ってるんだ、俺。
「コウくん、ただいま! さぁ、早く食べよう」
本当にプリンの成長には目を見張る。
ちなみにプリンが擬態できるようになったのは……
「リック! ボク達先食べちゃうよ?」
「今行くよ!」
またいつか話すとする。
父さんは仕事に行っていて、家にいるのは母さんとコウ、プリン。そして俺の4人だ。
父さんの職場へはレコーズで20分程度で行ける。職場と言っても、役所のようなところだ。ちなみに議会のようなものもあるが、最終的な決定権は父さんにある。
……あぁ。独裁ですね、わかります。
幸い、父さんは権力を濫用していない。父さんから領主の仕事のことを聞いたときは本当に驚いた。
うん。権力を濫用すれば作業し放題だとかそんなことは微塵も考えていない。
「あぁ美味しかった」
「おにく、やわらかい!」
「ボク、お腹いっぱい」
「あら、それは良かったわ。それじゃあ……あれ、あれれ? パパのお弁当箱がどうしてここに?」
あ、父さんお弁当忘れたんだ。今頃お腹をすかせて困っているだろう。
……なんてことも無く、そこら辺で食べているだろうな。
そんなことを考えていると、プリンが。
「これ、パパに届けないと!」
「えぇー。大丈夫でしょ」
俺は言った。
「だいじょばない! レコーズで届けに行くよ!」
なんだよ、だいじょばないって。
俺はプリンに引っ張られてレコーズに乗る。
レコーズに魔力を流そうとしたとき、コウが追いかけてきて言った。
「コウも! コウもいきたい!」
俺は「ダメだ」。そう言おうとした時。
「コウくん、外は危ないから。ここはボクたちに任せてよ。ね?」
プリンがコウをたしなめていた。本当に成長したな。
コウはしばらく黙り込んだあと「わかった!」と言って家の中に戻っていった。
「変身解除!」
プリンがそう言うとスライムに戻る。プリンは俺の肩に乗った。
まんま有名な電気ネズミ……。
俺はレコーズに魔力を流し、浮遊させる。もうレコーズも手慣れたモノだ。
シュゥ―ッ、ビューン!
凄まじいスピードを出しながら、俺達は父さんのところへ向かう。どうして俺らが父さんの職場の場所を知っているか? そんなのは簡単だ。追跡したんだよ。はい、そこ! ストーカーとか人聞きの悪いこと言わない!
赤い屋根の建物が見えてくる。あれが父さんの職場だ。
『あ! リック、あそこにパパがいる!』
「どれどれ……?」
父さんは、これから職場に戻るところだった。もう、遅かったか。
「変身! パパ! 忘れ物を届けに来たよ!」
「おぉ、リックとプリンじゃないか! ……お弁当か。ありがとう、助かったよ」
そう言って父さんはお弁当を食べ始めた。とても美味しそうに。
でも俺は知っている。スパゲッティのソースが服についている。これが何を意味するかを。
帰り道プリンは。
『ね? 持っていってよかったでしょ!』
そう言った。うん。その通りだったよ。
「届けよう!」と思ったその気持ちが大切だってことだよね、父さん。
次回から数話は『農場編』です!
何気作者お気に入りの【例のアノ人】が登場する……!?
キャラクターの性質上、R15警報です、お気をつけください!




