チャイナ娘が仲間になりました。
『斉藤タモツ選手は十万位にランクアップ、春李選手は五万位にランクダウンしました。以上聖戦を終了します。』
再び何処から聞こえているのかわからない声がランクアップだの聖戦だのと訳がわからないことを言ってブツリと音声が途絶えた。
俺は立ち上がり、暫し勝利の余韻に浸る。
心地の良い風が俺の頬を掠める、ううん、気持ちがいい。
しかし勝ったのはいいものの何なんだ一体これは? さっきから現実離れしたような出来事の連続で頭の中が混乱する。
聖戦、覇拳、ランク、まるでゲームのような設定ばかり。
ん? ゲーム?
俺は記憶を頼りにこの場所に来る直前の出来事を思い出した。
格ゲーをやっていたら、行き成りポップ画面が現れて、確か内容は……。
『最強決定戦 参加表明』
そうっ! 最強決定戦、格ゲーのトップランカーしか参加出来ないという大会だ。
俺はそれにエントリーした瞬間、光に包まれて気がつけばこんな山道に来ていたんだ。
今までの話の出来事をまとめ上げそれで一つの仮説を立てるとすれば……。
「……もしかして、ゲームの世界にきちゃったのか? 」
いやいや、ありえないって。
最近流行のライトノベルやアニメじゃあないんだから。
しかしこの状況をすっきり説明するにはそれしかない。
うわぁ、面倒くさいことになってきたなぁ。
取り合えずもっと情報を得る必要がある、一体この世界はなんなんだとかその他意味不明な単語の正体とか。
俺は地べたで倒れこんでいる春李に目をやった。
「……起こしてみるか。」
春李の方へ足を運び顔を覗いてみる。
その顔は格闘者なんて物騒なこことは無縁なただの女の子だ。
「おーい、生きてるか? 」
俺は春李の白い頬をつんつんしてみる。
突きたてのお餅を触っているような気持ちのいい感触だ。
「ん、んぅ……。」
春李も目が覚めたようで、まつげの長い瞳をこする。
「私は一体……聖戦はどうなった……。」
「悪いが勝負には勝たせてもらった。」
「そうか……私は負けてしまったのか……。」
しょぼんと悔しそうに顔を伏せる春李。
……なんだかあんな勝ち方をした所為で申し訳ない気がする。
「君は、一体何者なんだ? あんな覇拳を使う者みたことがない。」
「あぁ、えっと俺は……。」
なんて答えようか、女の子にスケベなことしただけで大した技とかじゃないしな。
ええいっ! ここは適当にっ!
「俺はスケベの聖獣……だったか? それに魅入られた覇拳使いの斉藤 タモツだ。よろしくな。」
戦闘開始前に春李が言っていたことを適当に引用して答えた。
つか、スケベの聖獣ってなんだよ、年がら年中発情してそうだな。
「すけべの聖獣? 聞いたことがないな。……だが君の強さは本物だった。それは認めよう。」
春李が先程から保っていた凛々しい表情からフッと笑みを零した。
そんな笑顔に一瞬振動の鼓動が大きく鳴る。
ほらあれだ、所謂ギャップ萌えって奴。
例えるなら普段恐持ての女子プロレスラーがバラエティ番組で箱の中身はなんだろな的な事をやらされた時に『ひゃっ! 』とか可愛い声を出す時とかな。
うーん、我ながら例えがイマイチ。
「……では、敗者は潔く姿を消すとしよう。また何処かで会えるといいな。」
その場から立ち上がり、おぼつかない足取りで何処かへ立ち去ろうとする春李。
「おいちょっと待ってくれっ! 」
俺は立ち行く春李を止めるため彼女の肩を掴んだ。
「俺はまだ初心者だから正直右も左もわからないんだ。だからその……もし良かったらもう少しだけ付き合ってもらいたいんだが。」
まだこの変な世界に来て何をすればいいのかわからない。
今必要なのはなにより情報だ。
俺は自慢じゃあないがコミュ症で知らない人から情報を得られるような会話スキルはない。
それなら多少見知った彼女から色々聞き出す方がいいだろう。
それに。
俺は春李の身体をまじまじと見つめる。
鍛え抜かれたスレンダーな身体、スラッと伸びた美脚に豊満なお尻とおっぱい。
そして顔も美人さんだ。
そんな女の子と形はどうであれ知り合えたんだ、ここで逃すなんて勿体無いじゃあないか。
春李は腕を大きな胸を支えるように組み、手をシャープな顎に置いて暫し考え込む。
そして。
「うむ、いいだろう。君は私に勝ったんだしな。それくらい喜んで付き合うよ。」
「ま、マジでっ!? やったーっ!! 」
こうして白虎の覇拳使い、春李を仲間に加える事が出来た。
ここから俺の最強への果てしない旅が始まった。
開始のゴングはまだ鳴ったばかりなのだ。
投稿して三日目だというのにもうブックマークが六件も、そしてあいず先生から感想まで頂きましたっ!
本当に嬉しいです、これからも精進して参る。
と、言うわけでここまで読んでくださりありがとうございました。
宜しければブックマークや感想、評価等していただければこの様に作者が嬉しさで舞い上がり作品の活力に繋がりますのでよろしくお願いします。
次回もお楽しみにっ!