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夢への一歩

  『斉藤タモツ選手は七万位にランクアップ、アリサ・グランデ選手は九万位にランクダウンしました。以上聖戦を終了します。』


 ブツリと音声が切れて戦いの終わりを告げた。


 「か、勝った……。」


 俺は立ち上がり放心状態で空を見上げた。


 どこまでも続く青空はから見える太陽が俺の勝利を祝うかのように輝いている。


 一厘の風が火照った頬を撫でる、実に心地が良い。


 俺は勝ったのだ、こんな俺でも勝てたんだ。


 勝利の実感が湧く一方で別の何かが俺の中で滲みでてきた。


 なんだろう、この気持ちは。


 ああ、そうか、俺は嬉しいんだ。


 生まれて初めて何かに本気になって、必死に頑張って、そして掴みとった成功が。


 奥歯を噛み締めその余韻に浸る。


 悪くはないな。


 「タモツっ! 」


 俺を呼ぶ声が聞こえてきてそれに振り向く。


 春李が息を切らしながら駆け寄ってきたくれた。


 「はぁ……はぁ……見事だったぞ。タモツ。」


 そう言って春李が手を差し出してくる。


 俺はその手を握った、彼女の暖かさと優しさが手から伝わってきて傷ついた身体を癒してくれる。


 あの時、春李が応援してくれなくては心が折れて負けていただろう。


 こんなダメな奴を支えてくれて、応援してくれて。


 「……その、ありがとうな。」


 ふと口からそんな言葉が零れた。


 すると彼女は一瞬呆気に取られた表情をしたものの直ぐに笑顔で。


 「ああっ! どういたしましてっ! 」


 彼女の顔に咲いた大輪の花に俺は心を奪われた。


 聖戦の時に感じた胸の高鳴りではなく何か別の物を確かに感じたのだ。


 ――どうやら俺は彼女に……。



 「……私の完敗のようね。」


 ゆらりと背後から立ち上がったアリサが拍手をしながらこちらに近づいてきた。


 「スケベ覇拳、聞いたことはなかったけど強いわね。……でも負けた私が言うのもなんだけどまだまだ未熟で弱点だらけ。この先過酷な聖戦を貴方は生きられるかしら? 」


 全くその通りである、俺は格闘において初心者で拳の構えもありはしない。


 きっとこの先より強敵と戦い傷つき、ヘタをすれば命を落とすかもしれない。


 今日だって死にかけたのだ、命がいくつあっても足りないかもしれない。


 だがしかし、それでも俺は……。


 「ああ、生きてみせるよ。俺は俺の覇拳で、俺の信念で。」


 今までろくな人生を送って来なかった。


 夢も目標もなく、ただ命の蝋燭を溶かしていくそんな日々だ。


 しかしそんな俺に新たな目標が出来た、このゲームの世界で、格闘家達が命を賭けて戦う世界で。


 「……そう、ならいいわ。じゃあ負け犬は立ち去るから。……今度あったらボコボコにしてあげるわ。」


 そう言ってアリサは草原を後にした。



 「タモツ、私達はどうする? 君の傷ついているし一旦街に戻ろうか? 」


 「いや、俺は大丈夫だ。もう行こうぜ。」


 「フフっそうか。……では行こうか。私達の最強への道へ。」


 「おうっ! 」


 俺達はお互いの目標の為に一歩足を踏み出した。



 最強への、夢への大きな一歩を。


 


これにて完結となります。詳しくは活動報告で。

今までご愛読ありがとうございました。

また次の作品でお会いしましょうっ!

ではっ!

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