第31話 異世界雑貨旋風
**森のカフェしっぽっぽ**の朝は、いつもより少しざわついていた。
ドアを開けると、カランという鈴の音に混ざって、昨日バズった動画を見て来た客たちの声が店内に響く。
「猫カフェ、すごい!」
「光るボール目当てです!」
サトルはカウンターでコーヒーを淹れながら、天井から吊るされた小さな異世界の雑貨を眺める。
光る毛玉。香り袋。干し魚。鈴。すべて昨日の動画で注目された商品だ。
「今日も忙しくなりそうだな…」
サトルが小さくため息をつくと、みどりが元気よく答えた。
「そうですね!でも猫たちの接客もすごく楽しそうです」
棚の上ではイチが監督の目で店内を見渡している。
きなはソファで丸くなり、トラは光る毛玉をじっと見つめている。
チビは床でゴロン、ジルはカーテンの影からそっと観察している。
ロンは入口で尻尾を振りながら、来店客の動きをチェックしていた。
最初に入ってきたのは、昨日の動画で店を知った女性グループ。
「本物の猫カフェだ!」
「動画より可愛い!」
猫たちはすぐに接客モードに入る。
チビが膝にジャンプし、トラが足元でゴロン。
ジルは少し怖がりながらも近づいて、光る毛玉を恐る恐る触った。
ロンは邪魔しないように見守りつつも、時折尻尾を振っている。
女性たちはスマホで動画を撮りながら、楽しそうに笑った。
ころころ。ぽわっ。光る毛玉が床を転がる。
猫たちが追いかけ、女性たちが撮影する。
店内は笑い声で満ちていた。
その時、常連のサラリーマン風男性が入店した。
スマホを手に、動画を確認しながら言った。
「これ、SNSで見ました!本当に光ってる!」
サトルは微笑む。
「人気者だな、光る毛玉は」
「いや、猫が主役ですよ」
みどりがすかさずフォローする。
猫たちの人気は留まることを知らなかった。
トラがジャンプして毛玉をキャッチ。
チビが床で奪い合い、きなもゆっくり参戦。
ジルも勇気を出して参加する。
ロンは遠巻きに見て、時々吠えて混乱に拍車をかける。
その光景を見た客たちは次々に注文をした。
香り袋、鈴、干し魚、そして光る毛玉。
売れ行きは昨日以上だ。
みどりが慌ただしく商品を包む。
「今日は本当に大忙しですね」
サトルは笑いながら答える。
「バズった動画の効果ってやつだな…」
その時、地下倉庫への扉が小さく軋んだ。
サトルはちらりと覗く。
向こうには異世界の市場――森猫族や魔導士族、蜥蜴人族、鉱人族の商人たちが忙しそうに動いている。
市場では光る毛玉や香り袋が作られ、サトルを待っていた。
「これをもっと仕入れれば、地球でもっと人気になるぞ」
サトルは小さくつぶやく。
店内では猫たちの大運動会が続いていた。
光る毛玉を追いかけてトラとチビがぶつかる。
きながのんびり参加し、ジルが慎重に輪に入る。
ロンは突っ込み担当で、猫たちを驚かせる。
客たちは笑い、撮影し、そして商品を手に取る。
店内の空気は、まるで祭りのように楽しかった。
午後になり、少し落ち着いたところでサトルは棚の上のイチに目をやる。
「にゃ」
イチが一声鳴く。
まるで「今日も大成功」と言っているようだった。
その日、店は大繁盛。
光る毛玉や香り袋はあっという間に売り切れそうだった。
動画効果と異世界の商品が相まって、**森のカフェしっぽっぽ**は一躍有名店になった。
サトルは地下扉をちらりと見ながら微笑む。
「次はどんな品を仕入れようかな…」
猫たち、客、そして異世界の商品。
すべてが組み合わさって、今日も店は楽しい騒動であふれていた。
**森のカフェしっぽっぽ**の一日は、
猫と異世界の雑貨と笑い声に包まれて終わるのだった。




