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BATTLE SLUG -銀河の残響-  作者: 昼間 ネル
BATTLE SLUG銀河の残響

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第1話 火星の葬列

銀河西暦110年。人類は、かつてない絶望の淵に立たされていました。


異星人の軍勢、そして宇宙の理を喰らう怪物「DEATH」。

それらに対抗するために、人類は禁忌の技術に手を染めます。死した者の鼓動を動力へと変える生体共鳴型のハイパーマシーン。


若きパイロット、カイ=タチバナが操る機体「メモリア」には、あの日失った大切な少女の心臓が脈動していました。火星を戦慄させる「葬列」の中で、少年と少女が目にする光とは――。

銀河西暦110年


ー 宇宙は、もはや人類の知る静寂の闇ではなかった。 異星人の軍勢「グラン」と、それと相対する太陽系惑星共和国「ライコウ」


二つの勢力による版図争いに地球圏が巻き込まれ、太陽系は鋼鉄と火花が散る巨大な戦場と化していた。


だが、その争いさえも、前座に過ぎなかったことを人類は知る。


「……バカな。計測不能? 数百、いや、千を超えているのか……!」


連合特別宇宙軍「メビウス」の旗艦、超大型宇宙戦艦アポロディアのブリッジに悲鳴が響いた。


観測モニターを埋め尽くしたのは、敵でも味方でもない。


宇宙の摂理を喰らい尽くす黒い虚無――宇宙怪獣(DEATH)の群れだった。


「全軍に告ぐ。目標をDEATH!

……いや、もはや個別に撃破する段階ではない」 司令官の声が苦渋に満ちる。


「最終作戦『アポロディア自沈』を敢行する。


火星の重力を以て、地獄の蓋を開けるぞ」


その喧騒から離れた宙域の最前線。

連合新型兵器『メモリア』のコクピットで、

カイ=タチバナは荒い呼吸を繰り返していた。


生体共鳴型機動兵器『メモリア』

···動力源(心臓): 「ライブ・コア」。


10年前、地球の太平洋、 オスマン島に落下したデブリ(地球外不明物質)の深部で見つかった

あらゆるエネルギーを変換する

「生きたエンジン」。


連合軍は戦争で戦死した民間人の遺体から、奇跡的に「再生」可能な心臓を抽出し、このコアと融合させた。


特徴: 搭載された心臓の主と、最も精神的繋がりの深かった操縦者にのみ反応する。


少年は、コックピットの中で常に「彼女の鼓動」を感じながら戦う。


トクン。トクン。


シートの背後から、心臓の鼓動が伝わってくる。


そこに組み込まれたのは、あの日死んだはずの幼馴染、ユナの心臓だった。


「……聞こえるよ、ユナ。怖いんだろ」

連合軍新型適正パイロット、カイ=タチバナ


操縦生体リンクグローブで操縦桿を握りしめると、機体の生体回路が青白く脈動し、ユナの感情が、ダイレクトに機体に流れ込む。


彼女の恐怖が、悲しみが、そのままメモリアの出力へと変換されていく。


皮肉なことに、カイが彼女を想い、心が痛むほど、この兵器は強く、鋭くなるのだ。


『カイ……くん……逃げて……』 幻聴のような声が響く。 だが、逃げる場所などどこにもない。


眼前に広がるのは、星を覆い尽くさんばかりの宇宙怪獣の黒い津波だった。


「逃げないさ。君を二度も死なせたりしない!」 メモリアが加速する。

白銀の軌跡を描き

宇宙怪獣の群れへと突っ込んだ。


ユナの心臓が高鳴り、前面の敵にロックオンが掛かる。 機体の各砲門から無数の高出力パルスレーザーが放出される。


それは場違いなほど、綺麗な青い線光だった。


一撃で数百の怪獣を蒸発させるが、それでも大群が地球に向けて恐怖が迫り来る。


バッハ艦長「アポロディア、自沈開始! ハイパー・デバイス、臨界突破!」


機関兵 「艦長、味方機おります!」


バッハ艦長「構わん!人類の驚愕に比べれば!」


火星付近。人類の希望の象徴であった巨大戦艦が、自らの心臓部を暴走させ

深淵へと沈み込んでいく。


次の瞬間、物理法則が悲鳴を上げた。


火星の輪郭が、飴細工のように歪むー 人為的に引き起こされた超重力崩壊ー 暗黒の渦が、太陽系を埋め尽くしていたDEATHの軍勢を、その中心部へと容赦なく引きずり込んでいった。


「うそだろ!うぉぉああ〜」 カイは叫んだ。


機体もまた、その凄まじい重力に捕らわれようとしていた。 だが、その時。 トクン。 ひときわ優しく、温かな鼓動が背中を叩いた。


メモリアの装甲が光のまゆとなってカイを包み込み、重力波の衝撃を遮断したのだ。


火星の一部が削り取られ、宇宙を埋め尽くした「虚無」が消え去るその中心で、カイは見た。


カイは、モニター越しに、かつてユナと見た公園の景色、穏やかで温かい夕日がみえたのだった。


地球圏の危機は、地球連合軍により終結を見た。


しかし、それは同時に、カイと、機体の中で生き続けるユナの、長きにわたる放浪の始まりでもあった。

第2話:火星の葬列 ー完ー

第3話「火星の葬列」をお読みいただき、ありがとうございました。

戦艦アポロディアの自沈という、星の形すら変えてしまうあまりにも大きな犠牲。そして、愛する人の鼓動を感じながら戦わなければならないカイの過酷な運命が描かれました。

「君を二度も死なせたりしない」というカイの叫びは、救いなのか、それとも呪縛なのか。超重力崩壊の渦中で彼を包んだ「青い光」の正体と共に、物語はさらなる激動へと向かいます。

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