第15話:落日の兄妹
かつて、人類は空を救済の場所と信じていました。
しかし今、成層圏から降り注ぐのは希望ではなく、すべてを焼き払う「浄化」の光条です。
本作は、ナノマシン汚染によって変貌を遂げた地球を舞台に、理想のために非情になれる兄レッドと、泥臭くとも「今」を生きる命を守ろうとする妹リング、そして運命の鍵を握る少年カイを描くSFアクションです。
高度な文明を持つ「太陽系惑星共和国」と、それに対抗する「連合軍」。
なぜ兄は怪物となったのか。
なぜ妹は銀翼を奪い、地に降りたのか。
激突する二つの信念と、夜空を切り裂く斬艦刀。
血よりも濃い因縁が火花を散らす、兄妹の「再起動」を巡る戦いをお楽しみください。
カイは深い眠りについていた。
病院の窓から見える空は
不気味なほどに青かった。
だが、その平穏は唐突に切り裂かれる。
成層圏に座する連合軍の
最強空中要塞『エンペラー』から
無数の迎撃光条が宇宙へと放たれたのだ。
「始まったか……」
窓辺に立つリングが、苦々しく空を見上げる。
太陽系惑星共和国、ライコウ軍の降下カプセル群だった。
リングは急いで
バルジーナⅡの発進準備を行っていた。
その脳裏には、数年前の記憶——「太陽系戦争」の光景が蘇る。
かつて、彼女はライコウ軍第3独立特務大隊の駆け出しだった。
隣にはいつも、真紅の機体*『アルカディア』を駆る。
**アルカディア
太陽系惑星共和国ライコウの科学力を結集した機体。真紅にそまる。その機体の攻撃力、機動力共に、過去から現在に渡って、機動兵器のトップクラスの性能である。
ライコウ軍のエース、レッド・ナノ・アーティス。
リングの実兄であり
宇宙、地球の戦場に、その名を轟かせる悪名高い
レッドモンスターである。
兄は既に、共和国の「柱」と讃えられ
汚染された地球を浄化し、人類を再統合するという理想を信じて疑わなかった。
「……あの日、兄者は言ったわ。
地球を救うためには
一度すべてを焼き払うしかないと」
リングの独り言が、冷たい空気の中に溶ける。
ライコウ軍の計画は冷酷だった。
地球のナノマシン汚染を根絶するために
地上の全生命体を「再構成」する。
それは数億の命を消し去る、浄化という名の虐殺だった。
リングは、それに反旗を翻し、軍を拒絶し始めていた矢先、金星の大戦で、敗れ、砂にまみれて生きるゲリラや、カイのような旧人類の生き残りは
新たな価値観として、守るべき「対象」になっていた。
モニターに、大気圏を突破して急速接近する単機の熱源が映る。
他の降下カプセルとは一線を画す、圧倒的な加速。
それは、かつて彼女に軍告を教えた
最も尊敬し、最も恐れる兄の鼓動だった。
バルジーナに、通信回線が、回ってきた。
「兄者……! なぜ貴方がここに!」
「懐かしい、機体信号をキャッチしたと思えば、
生きていたか、戦死したと報告があったが?」
冷徹な声が、語りかける。
「決まっている。白銀の機体と
中に乗っている『少年』を共和国に持ち帰る。
彼こそが、汚染された地球を浄化するための
最終コードだからな」
通信から、低く響き渡るレッドの声。
愛機『アルカディア』が、雲を割り
病院のある街の上空で制止した。
「兄者……! 貴方は相変わらず、宇宙から見下ろすことしかできないのね!」
リングは*バルジーナⅡに斬艦刀を担ぎ、飛び出して行く。
**アパッチ主導の元バルジーナを改造した機体。
汚染された地球用に改造してある。重装甲機で、守りは堅く、耐久力自慢の機体。色々な武器を換装し使えるのが特徴。
「いくら、兄者でも渡さない、カイを寝かせておいて!……相手は、私がする!」
グリーンモンスターとレッドモンスターが向かって相対時している時。
地上ではアパッチ率いるゲリラ部隊が、混乱に乗じて接近する連合軍の地上部隊と激しい市街戦を開始していた。
空の兄妹喧嘩、空地の三つ巴。烈戦が続く。
カイが「冬眠」の中で見る夢を切り裂くように
リングの斬艦刀が地球の空を切り裂いた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
遂に、リングの兄か登場致しました。
ご感想、評価お願いします。
今回描きたかったのは、**「正義の衝突」**です。
兄のレッドが掲げる「地球浄化」は、大局的に見れば人類を救うための最短ルートかもしれません。
一方で、リングが守ろうとするのは、数字やデータでは測れない「人間性の証」です。
バルジーナⅡ vs アルカディア
浄化(虐殺) vs 共存(葛藤)
空からの俯瞰 vs 地上からの咆哮
これら対照的な構図を、ド派手なメカアクションの中に詰め込みました。
物語はまだ始まったばかり。眠り続ける少年カイが目覚めたとき、世界は再起動されるのか




