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BATTLE SLUG -銀河の残響-  作者: 昼間 ネル
第2章 地球激闘編

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第14話:冬眠時代

硝煙と爆音の果てに待っていたのは、静寂という名の冷たい現実でした。

連合艦隊を壊滅させ、圧倒的な力を見せつけたカイ。しかし、その代償として彼が失ったのは、自らを「人間」と定義するための境界線だったのかもしれません。

目覚めた場所は、無機質な医務室。

語りかける仲間の声も、リンゴを剥くナイフの音も、今のカイにとっては遠い世界の出来事のように響きます。血管の奥で疼く飴色の光と、消えない破壊の昂揚感。

ここは、マーヤ博士の知り合いの病院。

真白な無機質な医務室で

カイはベッドの中にいた。

天井の湿ったコンクリートを見つめる彼の瞳には

かつての輝きはなく、深い疲労と困惑だけが沈んでいる。


「……目が覚めたか」

ベッドの傍らで椅子に座り、ナイフでリンゴを剥いていたリングが、カイに声をかけた。彼女の顔は凛々しいく。それでもそっと居てくれた。


「リング……俺、は……」


「何も言うな。……お前は、

連合の艦隊を文字通り『掃除』したが

そのあと、 私と一悶着あったがな」


カイは自分の右手を見つめた。

感覚が、どこか遠い。

指先を動かそうとすると、血管の奥で飴色の光が微かに明滅したような気がして、彼は慌てて布団の中に手を隠した。


あの時、巡洋艦を「エサ」と認識し

引き裂くことに快感を覚えた記憶が、蘇る。


「……俺は、化け物になったのか?」

「さあな。だが、お前があそこで暴れなきゃ

みんな 今頃、海の底で魚の餌さ。

そこだけは、感謝してやるかな。」


リングは剥いたリンゴを皿に置くと

重い足取りで部屋を出て行った。

すれ違いに、コツコツと高いヒール音を響かせて入ってきたのは、マーヤだった。


「あら、もう起きたの? 驚異的な回復力ね。やっぱり、旧人類の細胞と怪獣の核は相性が抜群だわ」


彼女は聖母のような穏やかな微笑みを浮かべているが、その瞳は顕微鏡で標本を見るように冷徹だった。

「マーヤさんメモリアは 、ユナは

どうなったんだ?」


「あの子なら基地のドックで『お食事中』よ。

あなたの神経系から逆流した残滓ざんし

必死に飲み込んでいるわ」


マーヤはカイの枕元に歩み寄り

その額に優しく手を当てた。


「いい? カイ君。あなたはもう、あの氷の中で眠っていた頃の『人間』には戻れない。


核を喰らい、リライト(世界書き換え)の波動に

触れた瞬間に

あなたの時計の針は壊れてしまったの。」

彼女の言葉は、まるで呪のようにカイの心に突き刺さる。


「これからは、長い長い冬眠の時間の始まりよ。……次の『エサ』が見つかるまで


あなたは私の管理下で

静かに牙を研ぐの。いいわね?」


マーヤが去った後、静まり返った部屋に

激戦を感じさせる軍服姿のアパッチが入ってきた。


「今は、休め、生きてて良かったな!」


カイの肩に大きな手を置いた。

その手の温もりだけが、今この世界で、カイが「生きている人間」であると感じられる唯一の証拠だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、激戦の後の「静」の時間を描きました。

これも読んで頂いている、皆さまのおかげです。ブックマ、評価お願いします。


特に印象的なのは、三者三様のカイへの接し方です。

不器用ながらも側に居続けるリング。カイを「愛すべき実験体」として、その変質を祝福するかのように告げるマーヤ。そして、多くを語らず、ただその生存を「手」の温度で肯定するアパッチ。


マーヤが放った「時計の針は壊れてしまった」という言葉は、カイがもう二度と平穏な日常には戻れないことを冷酷に示唆しています。

彼が次に牙を剥くとき、それは自らの意思なのか、それとも「核」が求める本能なのか……。


アパッチの手の温もりだけが、カイを人間へと繋ぎ止める細い糸のように感じられるラストシーン。その温もりが消えないことを願いつつ、物語はさらなる深淵へと進んでいきます。

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