ひとを笑わば、穴二つ。
TOMYは、恭一に尋ねた――
「今の女性は……君の彼女かい?」
「彼女? 彼女なんて、僕に居る分けが無いだろう? あの人は、喜多美神社の巫女さんだよ」
「巫女? 喜多美神社とは……?」
「君が着陸した多摩川の付近にある神社だよ」
「そうなのかい? それなら、今直ぐ其処へ行こうよ」
「何だよ? どうしてさ?」
「伊邪那美に会いたいんだよ。彼女なら伊邪那美の居場所を知っているだろ?」
「あぁ、分かった。後で、行けたら行こう。それより、今は用件を済ませることが先決だろ?」
「あぁ、そうだったね……」
TOMYは、岸井田に渡したタブレットの様なモバイルを返して貰おうと手を出した。その時、岸井田が自分の名前にタッチしてしまった。すると、動画が再生され、音声が流れた――
‶ ったく、太郎は使えねぇなぁ! コオロギ野郎がっ! ″
‶ 総理、声が大きいですよ ″
‶ 何だよ? 秘書の分際で、このオレに意見する気かっ! ″
‶ もう、だいぶ酔っぱらっていますし、今日の所は…… ″
‶ 今日の所は? 今、居酒屋でしょうに……確りしてますよっ! 酔っ払ってなんか、いまへんよぉ ″
‶ 総理、官邸に戻った方が、よろしいかと…… ″
‶ うるさいっ! 大体、太郎はケツの穴が小せぇんだよっ! おい君、知ってるか? マコロンにquesque tu fais? ってフランス語で聞かれてさ、通訳が「あなたは何をしているのですか?」って意味だというから「はい、国会議員をしてますっ!」とか? ピッカピッカの一年生みたいに答えてやんの。ったく、馬鹿かと ″
‶ 総理、官邸に戻りましょう…… ″
‶ コラッ! 君は、良く無いぞ。人の話は、最後まで聞かなくては、駄目だぞっ! ″
‶ 総理ぃ…… ″
‶ あのな、この話にはオチがあってだなぁ。マコロンはぁ、フランス語でquesque tu fais?って聞いたんじゃぁないんですっ! 日本語だったんですっ! ″
‶ 総理……官邸の方に…… ″
‶ 君っ! 人の話は、最後まで聞けって言っただろぅ? マコロンはぁ、親切に日本語で聞いたんだよっ! ケツ貸せよって ″
‶ えぇ……!? ″
‶ お尻貸してくれって、Prête-moi ton culって事なの。マコロンは両刀使いでぇ、アジアの男に、目が無いんだっつー事だぁ ″
‶ 総理、声が大きいですよ…… ″
‶ そしたら、太郎が『それだけは、絶対に嫌ですぅ』って言ったんだって。迫るマコロンに『祖父の遺言ですからぁ』だって。涙目ですよ? ったく、馬鹿な野郎だよぉ。政治の世界は何でも有りっ! ケツの穴くらい貸せば良いんですよぉ、減るモンじゃないんだし。『しゃぶらせて』って言われたら『あら、こんなんで良ければ』って、スッと、差し出すのっ! 常識ですよぉ。『日本人は社交界のマナーも知らないのか?』って、笑い者ですよぉ ″
‶ くっくっく、総理、笑っちゃったじゃないですか、あははは…… ″
‶ な? 笑っちゃうだろ? ケツの穴も小せぇし、チンコも小せぇんだよ。その上、気も小っちゃい太郎は、器も小さいだろ? だから、総理になれないんだよぉ……君ぃ、ココ重要だよ ″
「止めて、止めてくれっ! チョっと、こんな恥ずかしい動画がアーカイブされているなんて、酷いじゃないかっ! ちくしょうっ! 俺は、騙されていたのかぁ――――っ!」
岸井田は泣き崩れてしまった――
「フッフ、この程度は序の口ですけど?」
「何をっ! 人の不幸を笑いやがってっ!」
「あなたは、人を裏切り、騙している時は良心の呵責どころか、ほくそ笑んでいましたよね? 国民を不幸のどん底に叩き落して笑っていたのはあなたでしょう? なのに、自分が騙された時は、ガラスのハートですか?」
「何だと? それが総理に向かって言う事か?」
「あなたに言いたい事なら、山ほど有りますよ。ところで、あなたにはハニトラが無かった理由を知ってますか?」
「……ぅえ!?」
「喜び組の女の子達が『増税糞メガネだけは嫌だ』と言ったからですよ」
「嘘だっ!」
「嘘? それなら、証拠の動画を再生しましょうか?」
「待て、それだけは止めてくれっ!」
「あなたは、総理になった旨味が無いと喚き散らして、キック・バックを正当な権利の様に懐に入れたから、世界中の市民から嫌われ、WORST・POLITICIANの世界TOP100に選ばれたのです。反論の余地は無いでしょう?」
「お前は、一体何者なんだっ! 何で、そんな事が言えるんだ?」
「僕の名前は富井敬。皆はTOMYと言う。宇宙からやって来た旧人類です」
「宇宙? 旧人類って……お前は……宇宙人だと……」
「名乗ったのに気易く、お前呼ばわりをするなっ! あなた達は2023年を過ぎても尚、戦争をする様な野蛮人だと言う自覚を持てっ! 恥知らずめっ!」
「うぐっ、この、若造がぁ……」
TOMYは、ワナワナと震える岸井田に背を向け、恭一と共にマックスに案内されて出て行った――
〝 プッシュ――、シュイ――――――――ィンッ! プシュッ! “
「こちらで、間違い有りませんね?」
「あぁ。有難う」
TOMYは、モバイルに暗証番号を入力した。すると、宇宙船のパイロット・ランプの点滅が止まり、ハッチのロックが解除された。そして、MODEスイッチをAUTOからMANUALに切り替えた――
〝 TOMY船長、お帰りなさい ″
「あぁ。機体を移動しただけだ。僕は無事だ。作戦に異常なしと伝えてくれ」
‶ 了解しましたっ! ″
「OK! これで用事は済んだ。次は喜多美神社へ頼むよ」
「あぁ、分かった。しかし、君も忙しいんだなぁ……」
恭一とTOMYは、マックスと南方に感謝の意を伝えると、駐車場へ向かい、Smartに乗り込んでW・S・U・Sを後にした。そして、喜多美神社へと向かった――
「ねぇ、君、あんな小さいロケットで、よく地球まで来れたね?」
「馬鹿にするなよ。君のこの車だって、小さいじゃないか?」
「それは、僕の生活には小さな車で、充分、間に合うからさ」
「僕も同じだ。君とは趣味が合うね? コレも何かの縁なのかな?」
「ねぇ、君。さっき『人類が滅亡する』みたいな事が書いて有ったけど……本当なのかい?」
「勿論、本当の事さ。権力で人を支配し、家畜化するなんてやり方は、早晩、破滅するに決まっているだろ?」
「あぁ……そうだよね」
「おい、君。僕は、地球に遊びに来たんじゃないんだ。人類を救うために地球に来たんだ」
「えっ……?」
恭一は、堂々と大胆な事を言い放つ助手席のTOMYが、何気なく多摩川を眺めるその瞳に退廃的な悲しみの色を見た。そして、絶対に人を信用しない恭一が、TOMYの事だけは信用し始めている事に気付いた――
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