真っ白な灰になるよ。
厨房のKevinは、お客に背を向けて、古めかしい通信機の前でチューニングを合わせる事に躍起になっていた――
美味しいバーガーを求めてやって来たお客さん達は、律儀に並んでいたが、七海は、心配になって声を掛けた――
「Kevinさん、お客さん並んでいるお? 仕事しなくちゃダメじゃんよ――ぉ」
「イマ、ソレドコロジャナイデェ――スッ! ジュウダイナ、ツウシンヲ、キキノガスワケニハ、マイリマセェ―――ンッ!」
「参りませんって……こっちが参っているんよ? ほらぁ、鉄板も熱々なんだしさぁ、早くしてくれっつ―――のっ!」
〝 ピ―――――――ヒョロロロ――ッ、ザ―――――――――――、ジジジィ、ピュイ―――――――――――ン、我々…ザ―――――――――――、宇宙人から、地球……ザ―――――――――――ッ! ″
「キタァ――――――――――――――――――――――――――――ァッ!」
「ちょっとKevinさん、皆、腹ペコ大王だお?」
「イマ、イッシュンデスガ、キャッチシマシタ。ヘイテンシマァ―――――スッ!」
「でぇ? 閉店って、何とかしてちょ」
既に、宇宙人との交信に夢中のKevinには七海の声は聞こえなかった――
「Kevinさんってばぁ、何なら、あッシが、アルバイトしてやんよ」
「カッテニ、シテクダサイ」
「ほんじゃ、お勝手だけに勝手にさせてもらうよんっ!」
七海は厨房に入ると、早速、ビーフ・パテを焼き始めた――
「ハイハイ、開店だお。皆、中に入って」
〝 おぉ――――――――――ぅっ! ”
「ちょっと七海ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だお。あッシは、プロの厨房機器には慣れてっからさ! それより、めぐみお姉ちゃんは注文取ってっ!」
「はい? 私が?」
「他に、いねぇだろ――――がっ!」
「あぁ、はい……」
「お姉さん、オレはプレーン四つ、チリビーンズ・ポテトとバニラ」
「オレは三つで、マッシュルーム&オニオン。チョコで」
「私は、ダブル・バーガーをマシマシでぇ、コーン・スープとオニオン・チーズ・サラダをクリスピーで。ドリンクはチェリー・ソーダでお願いします」
「あわわわ、はい、ちょっと、待ってくださいね………」
「大丈夫だおっ! 聞こえてっから」
〝 パテパテパテパテ、パテパテパテパテ。バターバターバターバターバターバターバターバターっ! ″
「めぐみお姉ちゃん、バンズっ!」
「はいっ!」
「バターが溶けてからっ! まだ早いんよ。カリカリに揚がる感じで焼き上がりな」
「はいっ!」
「御手隙でドリンクな。シェイクは、そっち」
「はいっ!」
「すみませぇ――ん、ビア・シェイク追加で」
「はい、喜んでぇ!」
「プレーンが4、3、上がり。ダブルはマシマシだから、トマトが2、チーズが3、レタスが倍、ソースとドレッシングを忘れずに」
「はいっ!」
Kevinが、宇宙人との交信が終了した頃、お客さんは大満足で帰って行き、店内には、めぐみと七海だけが残っていた――
「OH! コンプリ――――ッ! オツカレ、サマデシタァ――――――――――ッ!」
「お客さん、全部、捌いたお?」
「もう、ヘロヘロ……真っ白な灰になるって、こう云う事ね……はい、売り上げと伝票」
「ドウモ、アリガトウゴザイマァ――ス。ソレデハ、オフタリノ、チュウモンヲ、オウカガイ、シマスネェ」
めぐみと七海は、やっとバーガーに辿り着いた――
「プレーンは鉄板よな」
「旨す!」
「トンカツ・バーガーはソース・カツ風なのが良いんよね」
「あっさり辛めのウースター薄漬け―――の、濃厚甘口ソースでコクが最高」
「アリガトウゴザイマァ――ス。ウレシイデスネェ。コレハ、バイトダイデス」
「少なっ!」
「これだけ?」
「ショクジノ、リョウキンハ、ヒイテアリマス」
「シビア」
「ちゃっかりしてんなぁ……でも、Kevinさん。バーガーは美味しいけど、お客さん、ほったらかしは、不味いよ」
「スミマセンデシタ……デモ、キョウハ、タイヘンナ、セイカガ、アッタノデスェ―――――――――スッ! オキャクンナンカ、ドウデモ、イイノデェ―――スッ!」
「どうでも良いって……」
「そりゃぁ、あんまりだよ……」
「ソレ、ドコロジャ、ナイノデェーー――スッ! ウチュウジンガ、キュウキョ、ライニチ、スルンデェ――――――スッ!」
「えぇ!? 嘘だぁ…」
「外タレ的な?」
Kevinは、嬉々として厨房の奥へ行き、可愛らしいラジカセとカセット・テープを持って来た――
「ダブル・カセット。オート・リバースだお」
「懐かしいファンシー・グッズ的な?」
Kevinは、微笑みながらカセットを投入すると、再生ボタンを押した――
〝 カチャッ! スカチャッ! パチンッ! ″
〝 ザザ――――ァ、お聞きの放送はSOQR宇宙人類放送です。この放送は、宇宙の彼方から、地球へ放送しています ”
「マジでぇ??」
「やっぱ、日本語なんだ?」
〝 ハーイ! 地球の皆さん、今晩はぁ。どぉ――も、宇宙人でぇすっ! ″
「何か、このMC、軽いなぁ……」
「無重力だけにな。ププッ」
「Shut Up Your Mouth!」
Kevinの表情には緊張感が漂っていた――
「ココカラガ、ジュウヨウ、ナノデェ――ス!」
〝 え――、ねっ。やっぱりぃ、何千万人が乗船している宇宙船が高速を超える、時空を超えるのは不可能。ってか『現実的では無い』と言う評議会での結果を受けてぇ、もっとコスパの良い? タイパで考えて? 前倒しの? 一人乗りのロケット? まぁ、ぶっちゃけ人間魚雷的な? そんな、感じって感じのヤツなら、出来んじゃね? って、結論が出た分けですよぉ ″
「ふざけてるん?」
「ロケット花火じゃあるまいし。真っ白な灰になるよ? おっかねぇなぁ……」
「Shut Up Your Mouth!」
〝 んで、地球の何処に行くかなんですけどぉ、大陸だと砂漠だったりぃ、変な所に着陸したら死ぬじゃないですかぁ? まぁ、宇宙から見て、丁度、目印になるのでぇ、イロハの『イ』みたいに見える島国に決定したんですよぉ ″
「OMG!!!!!!! FUCKIN GREAT!!!!!!!!!!!!!」
めぐみと七海は、事の重大さよりも、既知の事に改めて絶叫するKevinのノリにドン引きしていた――
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