爆走列島! V-MAXなら何でも出来る!
V-MAX は、爆速で海上を駆け抜けて来た――
「お―――っと、海上を爆走する、トルク・モンスタ――――――――――――ァッ! V-MAXの鼓動が、そして後輪がぁ、大海原を切り裂いて居まぁ――すっ! そして、今、正に、何人たりとも近付けない第二日本列島に、上陸せんと鬼神の走りで迫っておりますっ!」
サーチライトに照らし出されたアマテラスは、カメラに向かって人差し指を立てて叫んだ――
「NO―――、F――E――A――R――――――――――――!!!!!」
「お―――――っと、声から推測するとライダーは女性の様ですっ!」
「富田さん、あの女性のライダーは何者なのでしょうか?」
「残念ながら、ヘルメットの中は窺い知ることが出来ませんが、深紅のバトルスーツに、漆黒のV-MAXがぁ、あたかも、海上の人間魚雷の様相を呈していますっ!」
「海上の人間魚雷って、人間山脈と同じくらい何を言っているのか分かりませんが?」
「海面を走るV-MAXに、理屈は無用っ! 更にスロットルをワイド・オープンにして、フロントが浮いたぁ――――――――っ!」
「富田さん、興奮しないで、冷静にお願いします」
「激しい潮の流れをもろともせず、一気にぃ、上陸したぁ――――――――――――っ!」
「富田さん、聞こえますか? 富田さん? 富田さん?」
富田とスタッフは興奮のあまり、中継であることを忘れていた――
「えぇ……と、それでは此処で、中継を切り替えます。上空の竹山さん?」
「はい、上空の竹山です。上陸したV-MAXは、グラベルの中を爆走し、岩を砕き飛ばしながら、第二日本列島を南下しています。上空からは、縦貫道を作っているように見えます」
「竹山さん、第二日本列島と謎の女性ライダー。何か、因果関係は有るのでしょうか?」
「人知の及ばない自然現象を前に、我々人類は無力ですっ! あっと言う間に姿が見えなくなってしまいましたっ!」
「これから、何が起こるのでしょう?」
「それは、専門家の分析を待つべきでしょう」
司会進行役の吉岡美桜は、一瞬「日本の自信を考える会」会長の大地真生をチラ見した――
「専門家と言っても、コレだし……もう、番組が進まないよ……」
しかし、V-MAXは刻一刻と進んでいた――
「吉岡さん、上空の竹山です。V-MAXが戻ってきましたっ! 恐らく、最南端まで行って、折り返して来たと思われますっ!」
「そんな、スピードで走れるなんて、V-MAXって、凄いバイクなんですねぇ……」
すると、フロアのスタッフがカンペを出した――
〝 V-MAXはヤマハの製品です。スポンサーがホンダなので、V-MAX の連呼は控えて ″
「残念ながら、V-MAXは既に生産を終了しておりますっ!」
「あぁ、そうなんですねぇ……」
「お――――っと、右へ左へ、V-MAXが爆走しておりますっ! これは、島嶼部を繋ぐ道を作っている事に間違いはないでしょうっ!」
「竹山さん、興奮しないで、冷静にお願いします」
「お―――――――っと! 山頂まで一気に駆け上がるかと思いきや、コーナリングを満喫出来るルートを作っていますっ! 六甲かっ! いや、奥多摩かっ! Creg Ny Baa、バラクレインに、松ちゃんコーナーにスプーンにシケイン、コークスクリューまでぇ――――――――――――っ! 全世界の難攻不落のコースを見事に再現しておりますっ! これは、あたかも……」
「竹山さん、あたかも禁止っ!」
「まるで、景勝地とサーキットのコングロマリットだぁ――――――――っ!」
「もうっ! 富田も竹山も、これだから、プヲタは嫌なんだよっ!」
すると、フロアのスタッフが、再びカンペを出した――
〝 音声入っていますよ ″
「お――っと、コレは失礼しましたぁ」
「吉岡さん、コレは効いてますよ。そして、美しい海岸線をなぞる様に、一直線に駆け抜けるV-MAX! 一瞬にして姿を見失うほどのトルク・モンスターっ! V4サウンドだけがぁ、夜の海と、闇に響き渡っていますっ!」
「竹山さん、それは、あたかも雷鳴のようですね?」
「仰る通りです、高度を上げて望遠で動きを確認しておりましたが、これより高度を下げて、クローズ・アップで姿を追う事にします」
〝 バラバラバラバラバラ、バラバラバラバラバラ、バラバラバラバラバラ ″
中継を観ていた沙織は、唖然としていた――
「良太、こんな事って有る? コレって、現実?」
「お姉ちゃん。現実なんだよ、だからぁ、嘘でも観ないと、時代遅れになるって言って言るの」
「嘘だぁ……」
その中継を、めぐみと七海は、部屋で寛いで観ていた――
「めぐみお姉ちゃん、コレ観て。マジでハンパ無いよ」
「何が?」
「V-MAXだお。ヤマハの至宝とか国宝とか言われているんだお」
「そうなんだ。あれ? 何処かで見た事が有る様な……おぉっ! アマテラスじゃん」
「知り合い?」
「まぁな。何で、こんな事をやっているんだろう?」
「道路を作っているらしいお。インフラふらふらぁ―――って」
「優雅だねぇ。しかし、この女子アナ。プヲタを挑発したから、間違いなく炎上するな」
「しないお」
「あんで?」
「プヲタをディスる奴は、プヲタ確定だから」
「そうなん?」
「決まってるお。最後に『お―――っと!』って言っているじゃんよぉ。炎上上等なんよ」
「まさに『風車の理論』なんだねぇ」
すると、再び中継の画面にアマテラスのV-MAX が映った――
「お――――っと! 再び姿を現したV-MAXが、最早、道は全て作ったと云わんがばかりに、中央で停止しておりますっ! それは、僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る。ああ、自然よ、父よ、僕を一人立ちにさせた廣大な父よ、僕から目を離さないで守る事をせよ、常に父の氣魄を僕に充たせよ、この遠い道程のため、この遠い道程のため。高村幸太郎を想起させております――――っ!」
「竹山さん、殆どの男子は、学生時代に道程と童貞を混同したという伝説が有りますが?」
「一人立ちっ!」
「やっぱり」
「お―――とっ! ライダーがやおらアクセルを開け始めて、ホイール・スピンを始めておりますっ!」
「白煙が凄いですね」
「あぁ―――――――――っ! 回るのか? 回ってしまうのか? 回った、回ったぁ―――――っ! マックス・ターンが始まったぁ――――――――――っ!」
〝 ヴァオォ――――――――――――――――ンッ! ギュルギュルギュルギュルゥ―――――――――――ッ!
アマテラスは、指を立てて雄叫びを上げた――
「W――I――N!!!!!!!!!!!!!」
「お――――っと! 高山からのぉー、スタン・ハンセンだぁ!」
「彼女は、ストロング・スタイルですね」
「はぁい」
七海は、女子アナがプヲタだと見切っていた。そして、めぐみもそれに納得していた――
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