末家夏乃
――本日はお時間を取ってくださりありがとうございます。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
――まずはお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。
末家夏乃です。
――末家さんですね、ありがとうございます。末家さんは以前、魔法少女としてご活躍されていたそうですね。
そうですね。中学から高校にかけて三年ほど魔法少女をしていました。
――どうして魔法少女になろうと思ったのですか?
当時憧れていた先輩に助けてもらったことがあるからです。
――助けてもらった、ですか?
はい。中学生のころ、部活帰りに友人と一緒に下校していました。そのときに魔獣の群れに襲われてしまったんです。友人も私も魔法少女ではなかったので戦うこともできずただ逃げ惑うことしかできませんでした。そうして追い詰められたときに私たちを助けてくれたのがその先輩でした。颯爽と現れて次々と魔獣を倒す姿がとてもかっこよくて……。全ての魔獣を倒した後、「大丈夫?」と言って手を差し伸べてくれた姿に強く惹かれたんです。それで先輩に少しでも近づきたくて魔法少女になりました。
――末家さんが魔法少女になって、先輩からは何か反応はありましたか?
先輩は私が魔法少女になったことにとても喜んでくれました。これから一緒に戦えるね、と言って私の手を取ってくれました。
――そうだったんですか。それはとても嬉しいですね。
はい。憧れの先輩にそう言ってもらえて幸せでした。
――その後、先輩と一緒に戦ったりはしたのですか?
はい。先輩とバディを組んで魔獣と戦うことになりました。先輩の戦い方はかっこよくてかわいくて優雅で……。それを見て次の戦いの参考にしていました。
――その先輩以外の方と一緒に戦うことはありましたか?
いえ、魔法少女をやっている間、先輩以外と一緒に戦ったことはありませんでした。
――それは何故ですか?
先輩以外には身近なところで魔法少女がいなかったというのもありますし、何より私自身が先輩以外の魔法少女と組みたくなかったからです。先輩じゃない魔法少女と一緒に戦う自分を想像することができませんでした。先輩と一緒に戦ってこそ私は魔法少女でいられるとさえ思っていたような気がします。
――それだけその先輩のことを慕っていたのですね。
そう……ですね。私にとっては憧れであり尊敬の対象であり…………何より好意を寄せている相手でしたから。
――それだけ思い入れのあるであろう魔法少女を辞めてしまったのは何故なのですか?
……………………先輩が魔法少女ではなくなってしまったからです。
――魔法少女ではなくなってしまった、とは?
それは……………………死んで、しまったんです。
ある時近くの街で魔獣が現れて、私と先輩で倒しに向かいました。はじめのうちは私と先輩で連携していつも通り戦い、相手の魔獣をもう少しで倒せるというところまで追い詰めることが出来ました。しかしそこに想定外だった別の魔獣が私たちの背後から現れたんです。私はそれまで戦っていた魔獣に意識が向いていて背後の魔獣には気がつきませんでした。その状況を見た先輩が攻撃体勢に入っている魔獣と私の間に入って私の事を守ってくれました。そのおかげで私は無傷で済みましたが、先輩自身は魔獣からの攻撃の大部分を直接受けてしまったんです。慌てて駆け寄りましたがその時には既に遅く、片腕と片脚を無くした先輩は血塗れで地面に倒れて亡くなっていました。
――辛いご経験をされたんですね。思い返すだけでも苦しいことをお話して下さりありがとうございます。
…………………………………………いえ。
――その魔獣との戦いはどうなったのですか?
……それについては正直なところ私もあまり覚えていません。ですが気がついた時にはどちらの魔獣も倒れていて、その死体の間に私は一人で立っていました。
――それ以降戦場に立つことは無かった、ということですね。
そうですね。……どちらかというと、立つことができなくなったと言った方が正しいかもしれません。その戦いを最後に私は魔法少女に変身することが出来なくなってしまいました。変身しようとする度に、あの時の先輩の姿がどうしても浮かんできてしまって……。このままでは先輩に顔向け出来ないとは思ったのですがどうしようもなく、私は魔法少女を引退することしかできませんでした。
――そうだったんですね。魔法少女としてのお勤め、ご苦労さまでした。最後に、今魔法少女として活動している方、これから魔法少女になりたいと思っている方へ一言いただけますでしょうか。
ありがとうございます。
一言……ですか。
……………………魔法少女は、死と隣り合わせの存在です。いくら言葉の響きが良くてもその事実は変えようがありません。皆さんの憧れを、そして意志を否定するつもりはありません。ですが命を失うことになる前にもう一度考えてほしい。本当に『魔法少女』というものに人生を懸けることができるのかどうか。突然大切な人と別れる時が来てしまうかもしれない。もう一度会いたい人と二度と会えなくなってしまうかもしれない。それでもいいのかを。
多くの人の生活を守るというのは素晴らしいことですし尊いことです。でもそうして戦っている魔法少女にだって日常はある。魔法少女として以前に人として生きているんです。魔法少女になれる子達はみんな若い。まだまだ未来があります。それをよく考えて、これからも戦い続けるのか、命懸けの戦いに身を投じるのかを決めてもらえたらと思います。
――それでは、本日は貴重なお時間をいただきまして本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
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