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【第7話】月下の剣士、現る
闘技場の照明がふっと落ち、
月光だけが砂の中央を照らした。
観客席のざわめきが、
波が引くように静まっていく。
セレナは息を呑んだ。
この瞬間を、何度夢に見ただろう。
(……来る)
静寂を裂くように、
暗闇の奥から コツ、コツ と足音が響いた。
その音だけで、
観客席の空気が震える。
やがて、
月光の輪の中へ“影”が現れた。
漆黒の外套。
左腰に下げた剣。
風に揺れる青いデルフィニウム。
そして——
仮面の奥から放たれる、圧倒的な存在感。
(……レオス様)
セレナの胸が熱くなる。
レオスはゆっくりと歩みを進め、
中央で静かに立ち止まった。
その動きは、
まるで舞台に立つ舞踏家のように滑らかで、
一挙手一投足が観客の視線を奪う。
観客席のあちこちから、
抑えきれない歓声が漏れた。
「出た……!」
「今日も美しい……!」
レオスは応えるように、
わずかに顎を上げ、
月光を受けて剣を抜いた。
シュッ。
その一閃だけで、
空気が変わる。
(……美しい)
戦いが始まる前から、
すでに“勝負”は始まっていた。
レオスの存在そのものが、
観客を魅了し、圧倒し、
セレナの心を完全に奪っていた。




