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【第1話】氷の侯爵令嬢は、今日も心だけは忙しい

侯爵家アルディスの朝は、いつも静かだ。

廊下に差し込む光は淡く、侍女たちの足音は控えめで、

まるで屋敷全体が「氷の令嬢」に合わせて息を潜めているようだった。


セレナ・アルディスは鏡の前で髪を整えながら、今日の予定を思い返す。


――明日は、第二王子ヘリオス殿下とのお茶会。


「……はあ。」


ため息は胸の奥でそっと溶かす。

外側はいつも通り、静かで冷たく見えるほど整っている。


けれど心の中は、まったく別の生き物だ。


(また……あの柔らかい笑顔を見るのね……)


ヘリオスの笑顔は、陽だまりのように優しい。

誰にでも同じように向けられるその微笑みが、

セレナにはどうしても苦手だった。


(あの方は……きっと、私のことなんて特別ではないわ)


胸が少しだけ疼く。

その理由は、まだ自分でもよく分からない。


侍女が声をかける。


「お嬢様、そろそろお時間です」


「ええ。行きましょう」


セレナは立ち上がり、氷の仮面をそっと被る。

本当の自分を隠すための、いつもの儀式だ。


――本当の自分。


それは、誰にも言えない秘密。


(今夜は……弓張月。レオス様の試合の日……!)


胸が一気に熱を帯びる。


(今日の対戦相手は誰かしら……?

 新しい技を見せてくださるかしら……?

 ああ、もう……尊い……)


心の中で転げ回りながらも、

外側は完璧な令嬢のまま、廊下を歩く。


今夜は推し活の日。


氷の令嬢の胸の内は、

誰にも知られないまま、静かに熱を帯びていた。

こんにちは。春乃ことりです。

日常から少し離れた世界で、ほっと一息ついていただけるような物語をお届けできたらと思っています。

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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