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予言が語らなかった「英雄」の意味  作者: クリームコーラ


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第12章 「優しく、質素で、虚無。」[Part 2 of 2]

「はぁ……アルベルトの子、あんなに可愛いとは思わなかったな」

カリナは青年の隣を歩きながら言った。


「……ん」青年は短く応じる。


「また今度、時間を作って一緒に遊びに行こうかな」


「……ん」


「ねえ、オニちゃん? さっきから“ん”ばっかりだけど、何か悩みでもあるの?」


「ん? いや、別に」


「言ってみなよ! 私が一瞬でその悩み、消してあげるからさ!」


「本当か?」青年は平坦に返す。


「うん! 私は、私を信じてくれる人を放っておくようなことはしないから」


「……あのさ、実は今日気づいたんだ……俺、文字が読めない」

青年は顔を背けながら言った。


「……そっか」カリナはそれだけ答えた。


「それだけかよ? 今の俺は、読み書きもできない、授業も全部分からない! その上、周りからは陰口叩かれて、笑いものにされてるんだぞ! そんな俺みたいなのが兄で、お前は恥ずかしくないのかよ!?」

青年は声を荒げた。


しかしカリナは、ただ静かに星ひとつない夜空を見上げていた。


「まあ、こうなるだろうとは思ってたけどね。でも仕方ないでしょ。親にやれって言われてたし、オニちゃん自身も結構楽しみにしてたみたいだからさ……私はただ、様子を見てただけ」

カリナはそう言った。


「様子を見てた?」


「うん! 最初は、あの問題でオニちゃんが途中で帰ってくると思ってたんだけど、まさかスコラリウムの終わりまでちゃんと残るなんてね。すごいじゃん!」


「それに、あの食べ物を配るイベントも、オニちゃんがすぐ家に帰らないように時間を引き延ばすためにやったんだよ!」

カリナはそう説明した。


「はあ!? なんでそんなことをするんだよ!」


「だって、この予想が当たってたらさ……親はきっとオニちゃんを叱って、休みなく勉強させるでしょ。スコラリウムでさっきみたいなちょっとした失敗でも、もう家の評価は下がってるはずだし。……まあ、ただの予想だけどね」

カリナは淡々と説明した。


「つまり、お前は俺が勉強できないようにするために、わざとそんなことをしたってことか!?」

青年は少し怒鳴るように言った。


「そう。あの小さなイベントでオニちゃんの時間を無駄にして、いつも来てる家庭教師たちを帰らせたの。で、結果的にうまくいったみたいだね」


「なんでだよ!? なんでわざわざ邪魔するんだ! 今日勉強していれば、明日はもっと授業についていけたかもしれないだろ!」

青年は声を荒げた。


「それは無理だよ。強制されてやる勉強なんて、うまくいくわけがない。私だって分かってる。他人からの押し付けが、成長のための動機になることなんてないって」

カリナは、自分らしくないほど冷たい口調で言った。


「それでもだ! お前に俺のやり方を決める権利なんてない! 俺は俺のために生きてる! 自分で選ぶ自由があるんだ! それなのに、お前のせいで……俺はまた、この世界でも落ちこぼれとして生きることになる!」

青年は怒鳴った。


「ほう……そういうことか。ウォレスがすぐに家へ帰らなかったのは、お前の仕業だったというわけだな?」


突然、大人の男の声がカリナと青年の背後から響いた。


「父様」カリナは短く言った。


「ウォレス! すぐに家へ帰れ! お前の母がすべて準備して待っている! それとカリナ――お前のこの振る舞い、ただでは済まさん!」


「ウォレスがお前を導けなくなった途端、今度はあいつをお前と同じような落伍者で、道を踏み外した存在に引きずり込もうとしているとはな!」


「覚悟しておけ。この一週間、お前は二度と太陽を見ることはできない!」

父は激昂し、怒鳴りつけた。


だがカリナの表情には、わずかな恐れすら浮かばなかった。

まるで、こうなることを最初から知っていたかのように、ただ静かに立っているだけだった。


やがてカリナは、小さな護符のようなものを取り出し、青年へと差し出した。


「ねえ、オニちゃん。もし少しでも私のことを信じてくれるなら、これを持ってて。私が罰を受けてる間、もうオニちゃんを守れないかもしれないから……だからお願い、これを持ってて。せめて、私が安心できるように」

カリナは、悲しげで縋るような表情でそう言った。


青年はしばらくカリナの目を見つめ――

その護符を乱暴に奪い取り、そのまま背を向けて去っていった。


(ちっ……くそ……! なんでカリナはあんなことをしたんだ……!? なんで俺の勉強を邪魔する……!? この世界で生きていけなくさせたいのか……!? それとも、あいつみたいに笑い者にしたいのかよ……! くそ……なんで俺をこんな目に遭わせる……!)


そうして苛立ちと罵りを頭の中で繰り返しながら、青年は家へと辿り着いた。

そこで彼を出迎えたのは、優しく微笑む母親だった。


それから間もなく、彼の前には数人の家庭教師が並べられた。

かつて幼い頃のウォレスを教えていたという者たちだ。


授業は始まり――そして終わることなく続いた。

休む暇も、眠る時間すら与えられないままに。


やがて朝が訪れ、太陽は再びこの世界を照らし出す。


一晩中休まず学び続けた青年は、疲れ切った体と瞼を引きずるようにして、スコラリウムへ向かうことを余儀なくされた。


「…………」

「……」

「…」


そして――


静寂に包まれたこの屋敷には、

あれほど広いにもかかわらず、カリナの存在を示すものは、どこにもなかった。

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