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予言が語らなかった「英雄」の意味  作者: クリームコーラ


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「プロローグ」「無邪気な花のように見せかけよ、しかしその下には蛇であれ。」

「KK:やあ、ようこそ。これが私の二作目のライトノベルプロジェクトだ。」


「???:二作目? 一作目はどこにあるんだ?」


「KK:一作目はまだ執筆中なんだ。(作者が完璧主義すぎて、作品にこだわりすぎているからね)」


「???:それって、つまり君が無能ってことじゃないのか?」


「KK:えっと……とにかく、楽しんでくれ!」

遥か昔、深く青々と茂る大森林の奥に、ひときわ壮麗なキャスティルが存在していた。

そのキャスティルは、まるで天上の造物であるかのように、純白で穢れのない輝きを放っていた。


高くそびえ立つキャスティルの中央には一本の塔があり、そこはかつて、一人のプリーステスが祈りを捧げていた聖なる場所だった。

そしてそのキャスティルは、かつて七人の賢き騎士たちが集い、語らい、誓いを交わした場でもあった。


――だが、それも今はもう過去の話である。


かつては緑に満ち、静寂に包まれていたこの森は、今や炎の爆発と人々の悲鳴によって無残にも破壊されていた。


二つの人間の勢力は、聖なるこの森にどれほどの禍をもたらしているのかも考えず、互いを滅ぼし合っていた。


切り裂かれた無数の亡骸、燃え落ちる木々、裂けた大地――それらすべてが、この森の深い苦しみを物語っている。


それでもなお、人間たちは己の武器と知識を振るい、戦い続け、傷つけ合うことをやめなかった。


戦場のただ中、赤い髪をした一人の女性が、二人の男に守られるようにして必死に駆けていた。


「セシリア! 行け! もう一度、あの儀式を行うんだ! その間、俺がここで奴らの軍勢を食い止める!」

大きな体躯に斧を携えた男が、走る彼女に向かって叫ぶ。


「嫌よ! もうあの儀式なんてしたくない! うんざりなの!

一体、あと何度……あなたたちがこんなふうに苦しむ姿を見ればいいの!?

私……もう、誰も失いたくない!」

セシリアと呼ばれた女性は、涙を滲ませながら叫び返した。


「子どもみたいなことを言うな!

お前が儀式を行わなければ、俺たちは全員、ここで無駄死にだ!」

斧の男は怒鳴りつける。


「もう十分よ……私たちは、降伏するべきなの。

たとえ彼らを止められたとしても、たとえ全員を倒せたとしても……

それでも……あの予言は、必ず現実になる。

私……私はもう、この終わらない戦いに疲れたの……」


セシリアは走るのをやめ、俯いたまま頬を伝う涙をこぼした。


――ドォォン!!


突如、彼女たちの眼前に、巨大な蒼い炎の爆発が出現した。


凄まじい衝撃と熱が、大地と岩を焼き、四方へと吹き飛ばす。


「この蒼い炎……まさか……くそっ、ありえない!

もうここまで来ているだと!?

ガネル! セシリア! 行け! ここは俺があいつを引き受ける!」

斧の男は、セシリアと、ずっと隣に立っていたもう一人の男へ命じた。


やがて、立ち上る蒼炎の中から、金髪の男が姿を現し、魔導の杖を静かに振り払った。


たった一度、杖を振るっただけで、彼の周囲に渦巻いていた蒼い炎は、舞い散る灰のように消え去った。


さらにその一振りで、凄まじい突風が巻き起こり、正面に立つ三人へと容赦なく吹き荒れる。


「チッ、くそったれが……!」

斧を携えた男は、吹き付ける激風に歯を食いしばりながら耐えた。


「……ふん、逃げるだと?

これだけのことをしておいて、俺が貴様らを逃がすとでも思ったのか?

ふざけるな!!

貴様らの所業のせいで、どれほどの被害と兵が命を落としたと思っている!

それでもなお、予言の英雄であるこの俺の名を汚して逃げ切れるとでも思ったのか!?」

金髪の男が怒鳴りつけた。


――カブォォン!!


彗星のごとく、突如として漆黒の炎が天より落下し、金髪の男の頭上を直撃した。

だが、その黒き炎がいかに高速であろうとも、彼は即座に魔導の杖を振るい、寸前でその一撃を防ぎきる。


「ハハハハ!!! 面白いわ!

まさか、あんたがそんなふうに駄々をこねるなんてね?

……お兄ちゃん」


嘲るような声とともに、黒炎はゆっくりと霧散していく。


そして消えゆく炎の中から、長い黒髪をなびかせた一人の女性が現れ、漆黒の炎で形作られた爪を振りかざし、金髪の男へと襲いかかった。


金髪の男は一瞬、目を見開いて驚いたが、次の瞬間、その表情と瞳は憤怒に染まる。


「貴様ッ!!

一族の恥さらしめ!!

妹だからといって、俺が貴様を許すと思うな!!」


「うわぁ、怖〜い 怖〜い。」

黒髪の女は、嘲笑を含んだ声で軽く返す。


次の瞬間、二人は周囲のことなど一切顧みず、獣のように激突した。


その戦いはあまりにも荒々しく、破壊的で、もはやどちらが正気なのか判別する者はいない。


まるで互いの喉元だけを狙う、二匹の凶獣が向かい合っているかのようだった。


「セシリアァァ!! 行け!!

ここは俺と、この狂犬が引き受ける!!

お前は自分の使命を果たせ……そして、生き延びろ!!

信じろ! 俺たちは必ずまた会える!

そしてもう一度、運命を変えるために足掻けるはずだ!!」

斧の男はそう叫び、なおも戦闘と巨大な炎の爆発を呆然と見つめ続けるセシリアに命じた。


セシリアの傍らに立っていたガネルは、彼女がその場に縫い留められたかのように動けずにいるのを見つめる。


次の瞬間、彼は迷うことなくセシリアの手を強く握り、そのまま引き寄せて戦場から遠ざけた。


二人が去っていく背中を見送りながら、斧の男は静かに微笑む。


「ガネル……あとは、任せたぞ……」


――ドォォン!!


突如、黒髪の女が吹き飛ばされ、斧の男の近くにある崩れたキャスティルの壁へと激突した。


「狂犬、ねぇ? クケケケ……随分と口が悪いじゃない。

一体、私のどこがそんな狂った犬に見えるのかしら?」


彼女は、“予言の英雄”と称される兄との死闘の直後だというのに、まるで気にも留めていない様子で、斧の男に軽口を叩いた。


「ふざけている暇はない!

もう残された時間はほとんど――」


――ジュブッ!!


言葉が終わるより早く、背後から伸びた翠色の槍の穂先が、斧の男の胸を貫いた。


「……ぐ、は……くそ……」


その一言を最後に、斧の男はなす術もなく、その場に崩れ落ちる。


「おっと、話の途中で刺してしまって悪かったね。

本当はこういう役回り、あまり好きじゃないんだけど……

まあ、戦場の真っただ中だ。

こういうことも、日常茶飯事ってやつだろ?」


そう言いながら、男は緑の槍をゆっくりと引き抜いた。


「おいおいおい!

つまり今の状況は、この国が誇る七人の伝説の騎士のうち、二人を相手にしろってわけ?

はっ、上等じゃない!

一人だろうが二人だろうが、この戦いに違いなんてあるものか!

――追い詰められた野獣と戦うってのが、どういうものか思い知らせてやる!」


黒髪の女が挑発的に言い放った。



一方その頃、別の場所では――


ガネルは今なおセシリアの腕を引き、崩壊したキャスティルの中央にそびえる塔、その頂を目指して走り続けていた。


二人は息を切らしながら駆け抜け、ついに塔の入口となる大きな門の前へと辿り着く。


「セシリア……おい、セシリア!」


ガネルは彼女の名を呼び、茫然とした表情の彼女を現実へ引き戻す。


「……え? な、なに!?」


セシリアははっとして我に返った。


「今さら言うのも遅いかもしれないが……すまない。

どうやら俺の身体は、もうこれ以上お前を塔の頂まで連れていけそうにない」


そう言うガネルの顔色は、見る間に青白さを増していく。


そのときになって、セシリアは気づいた。


ガネルの手のひらが、まるで氷を握っているかのように、異様なほど冷たいことに。


「ガネル!?何があったの!?どうして……身体がこんなにも冷たいの!?」


「大丈夫だ……途中で、少し毒を受けただけさ。

さあ、行け。お前の使命を果たすんだ。

信じろ……俺が生きている限り、誰一人、この門を越えさせはしない」


ガネルはそう言って足を止め、セシリアの手を離した。


「ガネル! まずは毒を中和するわ!

それから一緒に、塔の頂へ――」


「ダメだ! もう時間がない!!

はっきりとは分からないが……さっきから、何かに追われている気がする。

まるで、誰かが俺たちを背後から監視し、追ってきているような……」


そう言い残し、ガネルはセシリアに背を向けた。


セシリアは、その背中をじっと見つめる。


一瞬だけ、横顔と露わになったうなじが紫色に変色し、冷たい汗が止めどなく流れているのが見えた。


セシリアは唇を強く噛みしめ、そして、ゆっくりと視線を背後へと逸らす。


「……分かった。

ここは、あなたに任せる」


そう言い残し、セシリアは振り返ることなく、全力で駆け出した。


ただ一人、門の前に立ち尽くすガネルを残して。


セシリアが去ってから、ほんのわずかな時間が経ったそのとき――


地面の下から、黒い影がぬるりと湧き上がった。


それはまるで、大地に墨をぶちまけたかのような、異様な黒さをしている。


「あぁ……一人は逃がしたか。

だが、なかなかやるじゃないか。

私が仕掛けた罠のすべてから、彼女を守り抜くとはね。


それにしても……この国に、ここまで狂った真似をする人間がいるとは思わなかった。

普通なら、罠は一つずつ解除していくものだろう?

それを、全部まとめて正面突破だなんてさ。


……しかし、奇妙だな。

あれだけの量の毒を受けて、なお立っていられるとは。

竜一頭を殺すには十分すぎる量だったはずだ。

もしかして……君は人間じゃないのか?」


影は、ねっとりとした声でそう問いかけた。


「……うるさい。

まだ喋りたいなら、さっさとここから消えろ。

今の俺は、機嫌が最悪なんだ」


ガネルはそう言い放ち、地面に突き立てた剣に体重を預けながら、かろうじて立っていた。


「……」


沈黙ののち、影の中から一人の男が姿を現す。


その男は、両手に一本ずつ、短剣を握っていた。


痩せ細った、いかにも弱々しい体つき。


だが、その全身から漂う血の臭いだけで、見る者の胃をひっくり返しそうになる。


「おお……どうやら、私の見立てが甘かったようだ。

今の君が立っていられるのは、肉体じゃなく……意志の力、か。


ふん、興味が失せたよ。

特別な肉体を持っているのかと思ったが、ただの凡庸な人間とはね。

正直、がっかりだ」


短剣の男は、心底つまらなそうに言った。


「はぁ……はぁ……

なあ、なんでそんなに喋り続けられるんだ?

戦う気があるのか、ないのか……どっちだ?」


ガネルは荒い息をつきながら問いかける。


「は? 戦う?

何のために?

その身体の状態じゃ、放っておいても勝手に死ぬだろう。

わざわざ指一本動かす必要もない」


短剣の男は肩をすくめた。


「……つまり、お前は俺を越えていくつもりなんだな?」


「もちろん、越えていくさ。

だが、お前と戦うつもりはない」


「……へっ。

なら、やってみろ。俺を越えてみせろ」


ガネルは、小さく笑って挑発する。


「やれやれ……好きにしな」


その瞬間、短剣の男は音もなく加速し、ガネルの横をすり抜けようとした。


――だが次の刹那。


ガネルの剣先が、すでに男の眼球の目前に突きつけられていた。


「なっ……!?

ば、馬鹿な!!

どうして……俺の速度について来られる!?


違う……ありえない!

その身体の状態で、俺の速度を捉えられるはずがない!

俺はこの国で、最速の人間だぞ!!」


短剣の男は、後方へ飛び退きながら怒鳴り散らす。


「へっ、ガキ……

その程度の速さならな。

あと五年もすれば、セシリアでも追いつけるさ」


ガネルは、鼻で笑った。


「セシリア?

あの偽りのプリーステスか?

はっ、冗談はよせ。


……いいだろう。

さっきの言葉は撤回だ。


六人の騎士どもが嫉妬するほどの、俺の本当の速さ……

その目に焼き付けてやる」


短剣の男は、低く構えた。


「……来い」


別の場所では、セシリアはすでに塔の最上部へと辿り着き、自らの儀式を行うための呪文を詠唱していた。


厳かな空気の中、セシリアは非常に長い呪文を、静かに、そして真剣に紡いでいく。

時折、その詠唱はわずかに遅れる。


外では今も仲間たちが必死に戦っている――その姿が、どうしても脳裏をよぎってしまうからだ。


それでも同時に、彼女は必死に自分を叱咤し、あらゆる不安を押し殺して、呪文への集中を保とうとした。


――そう、すべては皆のため。


セシリアは、仲間たちのことを「忘れる」ことを選んだのだ。


「ごめんなさい……」


その言葉を、セシリアは心の奥でそっと呟いた。


セシリアがなおも呪文を詠唱し続けていた、その時だった。


突如として、塔の屋上から一本の槍のような竜巻が、一直線にセシリアへと襲いかかる。


攻撃を察知したセシリアは、反射的に後方へ跳び退き、それを回避した。


「バァァンッ!」


竜巻は、先ほどまでセシリアが立っていた床へと叩きつけられ、激しい音とともにそれを粉砕する。


やがて、荒れ狂っていた風の渦は徐々にほどけ、静かに消え去っていった。


――そして、その竜巻が消えた場所に、一人の女が姿を現す。


ヘーゼルナッツ色の髪を持つその女は、すでに臨戦態勢に入り、槍の切っ先をセシリアへと真っ直ぐ向けていた。


その姿を目にした瞬間、セシリアの両目の瞳孔が、はっと見開かれる。


「……え? マリー!? どうして、あなたが……!?」


セシリアの声は、明らかな動揺を帯びていた。


「セシリア……ごめんなさい……」


女――マリーは、ほとんど息に紛れるほどの小さな声で、そう呟く。


「ズブッ――!」


次の瞬間、マリーの槍が一閃し、セシリアの胸を貫き、そのまま背中へと突き抜けた。


同時に、激しい竜巻と鮮やかな赤い血が、背中の傷口から噴き出す。


「――あああっ!?」


耐え難い激痛に、セシリアは悲鳴を上げた。


純白で美しかったプリーステスの衣は、今や生臭い赤に染め上げられていた。


かつて聖らかだったその顔も、苦悶と血に覆われ、暗く変色している。


さらに、長く美しかった髪の毛さえも切り裂かれ、まるで運命に断ち切られた赤い糸のように、宙を舞っていた。


「……ごほっ! マリー……!? どうして……あなた……」


マリーに問いかけようとするセシリアだったが、激しい痛みによって、言葉も呼吸も、途切れ途切れになってしまう。


「おっと! 悪いけど、遊びはもう終わりよ!

もう、あなたたちからお金をもらう必要はないし、それに――あの騎士たちが、あなたたちよりもずっと多くのお金を払ってくれたんだもの!」


「お前……やっぱり、何度も私たちの計画を邪魔していたのは、お前なのね!

お前のせいで……お前のせいで、私は……この苦しみを、何度も何度も繰り返さなきゃならなかったのよ!

お前のせいで……私は……っ、ゴホッ! ゴホッ! ゴホッ!」


セシリアは叫ぶが、途中で激しく咳き込み、言葉が途切れる。


「くそっ……!

昔、お前は言ったじゃない……!

私たちは、同じ志を持つ仲間だって……!

ゴホッ……ゴホッ……!

――それは全部、嘘だったの!?」


怒声の直後、セシリアは血を吐いた。


「やめてよ、仲間。

そんなふうに私を責めないで……。

ほら、私だって――お前たちの計画を騎士たちに漏らしたのは、たった一度きりなんだから」


マリーは軽い口調でそう言い、肩をすくめる。


「それにさ……分かってるでしょ?

この国で、お金を持たずに生きていくのが、どれだけ大変かってこと」


そう言いながら、マリーはセシリアの唇についた血を、自分の手で拭った。


「パシッ!」


次の瞬間、セシリアはその手をはっきりと払いのける。


「……触るな……

その……汚れた手で……私に……」


かすれた声で、しかし強い拒絶を込めて、セシリアは言い放った。


「……タッ、タッ、タッ……」


突如として、足音が響き渡り、セシリアとマリーが向かい合うその部屋へと、誰かが足を踏み入れてきた。


「やれやれ、やれやれ……これはこれは。

いつから――お前みたいな野良犬が、そんなに大きな声を出せるようになった?

俺の記憶じゃあ、礼儀も知らない犬に育てた覚えはないんだがな」


そう言い放ったのは、今しがた部屋に入ってきた、錬金術師アルケミストの男だった。


その侮辱を受けても、セシリアはただ俯いたまま、男の方を一切見ようとしなかった。


「チッ……本当に野良犬だな。

どこへ行った、礼儀作法は?

――今、自分の主人が目の前に立っているってことも、分からないのか?」


苛立ちを露わにした男は、舌打ちをしながら声を荒げる。


「くそっ……やっぱり、もう一度“しつけ”が必要みたいだな!」


そう怒鳴りながら、男は歩み寄っていく。


マリーに槍で貫かれたまま、なお立ち尽くしているセシリアへと。


「おい、イザーク。落ち着けよ。

こいつが――自分のやったことのせいで、村の住民全員が帝国軍に皆殺しにされたって知ったら、どんな顔をするのか……ちょっと見てみようじゃないか」


そう言ったのは、先ほどまで塔の入口でガネルと戦っていた、短剣を携えた男だった。


「そうそう、確か……

何人かは、皇帝の飼っているワイバーンやナーガの餌にもされたんだっけ?」


男は、まるで世間話でもするかのような軽い口調で、そう付け加える。


「ふむ……ジュリアス、か?」


その声に応じたのは、一人の女を伴った男だった。


「ふん。どうやら今回は、誰一人殺していないようだな」


男の手には弓が握られており、その隣に立つ女は、一対のシカ剣を静かに構えていた。


「おいおい、ひどい言い方だな。

一応言っておくけどさ――さっき俺が相手にしてたの、かなり強かったんだぜ?

もし先に毒を盛ってなかったら……今ごろ、地面に転がってるのは俺の首だったかもしれない」


短剣を携えた男――ジュリアスは、肩をすくめながらそう言った。


「ワハハハハハ!

弱い! 弱すぎる!!

さあ、見ろ! そして思い知れ!!

――これが、お前たちの愚かさだ!!」


突如として、怒号と嘲るような高笑いが、塔の最上階いっぱいに響き渡る。


セシリアは、わずかに視線だけを動かした。


するとそこには、三人の男が、ゆっくりと彼女へ歩み寄ってくる姿があった。


そのうちの一人は、先ほどまで――青い炎を操り、仲間二人を相手に戦っていた、「予言の英雄」。


その隣には、ツヴァイハンダーを肩に担いだ男。


さらにもう一人、右手に緑色の槍を握り締めた男が並んでいる。


「おい、隊長!

さっきの戦いはどうだった? 満足できたか?」


ジュリアスが、軽い調子でそう尋ねた。


「はっ! 退屈だったな。

あいつらは、叫ぶことしか能がない連中だった」


そう答えたのは、杖を手にした男――

予言の英雄であり、同時に騎士たちの隊長でもある人物だった。


「気になるなら、外を見てみるといい。

さっき、全員まとめて突き刺して、焼き払ってきたところだ」


「うわぁ……残酷だな」


ジュリアスは、引きつった笑みを浮かべ、わずかに笑い声を漏らす。


「チッ……そんなことはどうでもいい!

それより、どうする?

この野良犬を、これからどう始末する!?」


苛立ちを隠そうともせず、錬金術師の男――イザークが吐き捨てるように問いかけた。


「他に何がある?

殺せ。


俺たちはすでに――あの角の生えた魔物を討ち、予言されていた大災厄を未然に防いだ。

それに、罪深き者どもも、今やすべて滅び去った」


そう語るのは、予言の英雄だった。


「もし、まだやり残した任務があるのかと聞かれるなら……

俺の答えは一つだ。


残っているのは、街へ戻り――勝利を祝う宴の準備を始めることだけだ」


「宴!? 宴だって!?

よっしゃあ、宴だ!

早く帰りてぇな! 今すぐ祝おうぜ!」


ジュリアスは、目を輝かせながら一気にまくし立てる。


「料理は何だ?

余興は?

見世物はあるのか?」


そして、ふと思い出したように、舌なめずりをした。


「そうだ、確か……罪人を何人か捕らえてたよな?

グラディエーターの闘技場で、

――あいつら同士を戦わせようぜ!」


「待てよ、ジュリアス。

お前が浮かれてるのは分かるが……今も目の前に立っている、あの愚かな罪人を忘れたわけじゃないだろ?」


そう言ったのは、緑色の槍を手にした男だった。


「ああ、あいつか。

村人を救うだなんて大口を叩いてたくせに、結果はどうだ?


――村は全滅、しかも無惨に弄ばれて死んだ」


ジュリアスは、嘲るような視線をセシリアへ向ける。


「ははっ! 本当に滑稽だな。

地獄で村の連中に会った時、何て言い訳するつもりなんだ?」


「そこまで気になるなら、

お前も一緒に地獄へ行ってみたらどう?」


そう切り返したのは、二振りのシカ剣を構えた女騎士だった。


「もしかしたら――

お前が卑怯なやり方で殺してきた連中全員に、向こうで会えるかもしれないわよ」


「おいおい、言い方きつすぎだろ!」


ジュリアスは肩をすくめ、大げさに首を振る。


「誰がそんな荒くれ男どもの集団に会いたいんだよ。

俺が欲しいのは――


天上の乙女たちの、情熱的で温かい抱擁……

それか、街の可愛い娘たちだな!」


その言葉に、騎士たちは一斉に声を上げて笑い出した。


その間も、セシリアは何も言わず、ただ――予言の英雄を、鋭い眼差しで見据え続けていた。


その視線に気づいた瞬間、予言の英雄は、露骨な苛立ちを滲ませて怒鳴りつける。


「……なんだ、その目は?

この罪人風情が!」


彼は吐き捨てるように言い放ち、一歩、また一歩とセシリアへ近づいていく。


「見ろ!

お前たちが、この聖なる国土に何をしてきたのかを!


俺たちは、お前たちに――

罪を償うための、まっとうな生を与えてやったはずだ!」


その声は、正義を語る者のそれだった。


「それなのに……

お前たちは愚かにも、それを自ら捨て去り、

くだらない幻想の夢を追い求めた!」


怒声を響かせながら、予言の英雄は歩みを止めない。


その先にいるのは――

なおも立ったまま、マリーに握られた槍に貫かれている、セシリアだった。


乱暴に、予言の英雄はマリーの手を槍から弾き飛ばし、そのまま――セシリアの体を貫いている槍を自ら掴み取った。


そして、槍先をゆっくりと、上へと向ける。


「――っ、ぐっ……!」


セシリアは歯を強く食いしばり、両手で必死に自分の体を支えようとする。


だが今や彼女の体は――傷口と、予言の英雄に握られた槍だけに吊り下げられていた。


「貴様ら、下等な存在どもは……

俺たちが何を与えてやったのか、まるで理解していない!」


槍を握る手に、力が込められる。


「いいか、よく聞け。

俺たちの祖先の慈悲がなければ――

お前たちは、とっくに生きることすら許されていなかった!」


その言葉は、断罪そのものだった。


「さあ、答えろ!

俺たちが与えたこの“善意”は――

まだ足りないとでも言うつもりか!?

ああっ!?」


怒号が、塔の最上階に響き渡る。


――しかし。


その叱責を浴びても、セシリアは、なおも沈黙を保ったままだった。


歯は砕けんばかりに噛み締められ、瞳孔は鋭く細まり、その怒りは――盲人ですら見て取れるほどだった。


それでも。


セシリアは、何も言わない。


「答えろ!

今、俺が冗談を言っているとでも思っているのか!?

これは、ただの遊びだとでも思っているのか!?

俺たちが――お前たちの同族を皆殺しにしたというのに、それでも怒りを感じないのか!?

答えろ!!」


予言の英雄の怒号が、耳を裂くように響く。


――その瞬間だった。


セシリアの、固く噛み締められていた歯が、ふっと緩む。


血と唾液に汚れた口元に、小さな笑みが浮かんだ。


「……ふ、ふふ……

遊び……ですって?

私たちが……命を削って、必死に足掻いてきたものを……

お前は、それを――遊びだと言うの……?

ゴホッ……ゴホッ……!」


激しく咳き込みながら、セシリアは血を吐く。


その血飛沫が――予言の英雄の顔を、赤く汚した。


しかし。


予言の英雄は、それを気にも留めなかった。

顔に付いた血を拭うことすらせず、ただ――虚ろで、感情のない瞳で、セシリアを見下ろし続けていた。


セシリアは、自らの体を貫く槍を、さらに深く突き入れた。


それは――予言の英雄の顔へと、にじり寄るために。


「はぁ……はぁ……はぁ……

ウォレス……

今回は……私は、決めた……

本気で、やり遂げる……

必ず……やってみせる……」


荒い息が、唾液と血に濡れた口から漏れ出す。


彼女の左の瞳が青い光を放ち始め、やがて炎のように燃え上がり、その目を灼いた。


「すべてを犠牲にしても……!

この大地が血に染まろうとも……!

全人類から、罪人と呼ばれようとも……!

お前たちの手で、この世界が腐り落ちるのを――

私は、絶対に許さない!!」


セシリアは血に染まった口で、怒鳴りつける。


「よく聞き、そして刻み込め!

私は今、誓った!

どんな手段を使おうと……

どんな結末になろうと……

必ず、我らが神を解き放つ!

この大地を、神の御許へと返す!

そして――

お前たちの足跡すら残らぬほど、この地を浄化してみせる……!

ゴホッ……ゴホッ……ゴホッ……ゲホ……」


血と唾液を、予言の英雄の顔へと吐き散らす。


「……これをもって……

儀式、完了……!

神聖級魔法、発動……!

リバース――」


――その瞬間。


ズブッ!


言葉が終わるよりも早く、一本のナイフが飛来し、セシリアの額の中央へと深々と突き刺さった。


「……っ、ぐ……くそ……」


そのまま、セシリアの意識は途切れ――彼女は、その場で命を落とした。


「……死んだか?」


ナイフを投げ放ったばかりのユリウスが、問いかける。


「……ああ、どうやらな」


予言の英雄はそう答えると、セシリアの亡骸ごと槍を放り投げる。


まるで――ゴミでも捨てるかのように。


「ふん、田舎犬に相応しい最期だな」


錬金術師が吐き捨てるように言い、残った騎士たちも、それに続いて去っていった。


ほどなくして――

七人の騎士は全員、命を失ったセシリアの亡骸を残したまま、塔を後にした。


「……タッ、タッ、タッ……」


静まり返った塔の空間に、再び――足音が響く。


マリーは、ゆっくりとセシリアの亡骸へと近づき、突き刺さったままの槍を、そっと引き抜いた。


「……やっぱりね。」


セシリアの瞳は今も青い炎に灼かれていた。


「お前があそこまで静かだったのは――

まだ、詠唱が終わっていなかったから……」


しばらくの間、マリーは亡骸を見下ろしていたが――やがて、小さく息を吐く。


「……うまく、いくといいね……」

「……セシリア」


KK:イェーイ、プロローグが完成した!


???:長すぎる! 登場人物が多すぎる! しかも主人公がいきなり死ぬってどういうことだ!? そもそもこのプロローグ、何のためにあるんだ! この無能!(╯°□°)╯︵ ┻━┻


KK:ちょっと待って! 今まさに読者に謝ろうとしてたのに、なんでいきなり攻撃してくるんだよ!?(T_T)


???:こんな無意味なプロローグ、読者は絶対に混乱するに決まってる!


KK:まあまあ、そんなこと言うなよ……いつかこのプロローグもちゃんと意味を持つって信じてるんだ。(¬‿¬)


???:で? そのプロローグの言い訳は?(-_-)


KK:うーん……戦争なんだから、混乱してて当然だろ? てへっ♪(・ω<)

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