表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/78

Vol.19

「……それにしても、毎日毎日すごいな」

 部室に入って未散から預かった『本日回収した衣への嫌がらせの品々』を机にバサッと置くと、数の多さに佳佑は肩をすくめた。

 今日は手紙や紙切れだけでなく口にするのもおぞましいことがペンで書いてある衣の上履やズタズタに切り裂かれた衣の体操着まである。

「すんません、なんか先輩たちまで巻き込んじゃって……」

 シャツを脱ぎながら優太は佳佑に謝った。

「いや俺は別にかまわないよ、特別並木たちのために何かしてやってるわけでないし。それよりも……小橋さんは大丈夫なのか?」

 優太に尋ねながらすでに部室の隅っこで陣取っているゴミ袋3個を佳佑は見る。

「まあ衣自身は俺や未散が護衛してるんで大丈夫ですけど、衣のモノがいろいろと被害に遭ってるというか……」

「……確かにそうだろうね」

 優太に相槌打ちながら佳佑はテーブルにある上履きを見た。

「……先輩、俺ってひどい男ですよね」

「はぁ?何だよ急に」

 優太の自虐的な言葉に佳佑は目が点になった。

「だって衣のことこんな目に遭わせてるの俺だし……」

 机の上とゴミ袋を見て優太は涙声になっていた。

「それに……未散に言われるまで自分が何なのかって全然わかってなかったし……」

 俺最悪ですよね、と優太は無理に笑った。

「……しょうがないだろ、並木はそういう男だし」

「……へ?」

 言っている意味がわからない優太は佳佑を見てぽかんとする。

「練習はサボらず一生懸命で、試合に出れば役割上一番タフで、いろんな意味でおバカさんで、あんなにたくさんの女たちにちやほやされてもずっと一人の女しか見てなくて。……並木は天下無敵。ある意味誰もかなわない」

 言いながら佳佑は自分のロッカーを開けた。

「けどさ、そういうのって女から見ると余計に嫉妬心煽るみたいなんだよね。なんでなのかよくわかんないけど」

 佳佑はシャツのボタンに手を掛けた。

「……つまり、並木のその行動がこの原因」

 佳佑はそう言って顎でテーブルを指した。

「けど、明日で終わりにしてやるからな」

 佳佑はシャツを脱ぐとバッグに放り込んだ。

「並木たちのことは俺たちがちゃんと守ってやるよ。俺達はお前の味方だからな」

 佳佑は優太にそう言って微笑んだ。

「先輩、ありがとうございます、ありがと……」

 優太はお礼を言おうとしたが感無量で言葉が出ない。

「…………」

 それを見ていた佳佑は微笑んだまま何も言わずにジャージをかぶった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ