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「ん? どうしてケープ半島所属のメイソンがここに居るんだ?」
「はいはい、その説明は後でしてあげるからまずはテロリストを殺すよ」
「それもそうだな」
既に軍が許可をとったビルの中に入り、屋上へと向かう。
「そのテロリストってどっちだ?」
「あっちだね」
ミアが民衆が向かっている方向の逆を指さす。
そこでは機関銃を手にしたテロリストが装甲ジープに向けて乱射していた。
「機関銃の種類は?」
「GSh-6-30だね」
「え? おかしくないですか? 確かそれって150キロぐらいある艦載兵器ですよね? 映画なの中ならともかく1トンレベルの反動を人体で抑えるのは無理ですよ」
「そんなわけが無いだろう。ほら見てみろ」
アメリアに渡された短距離狙撃銃のスコープをテロリストの方に向けてみるとそこには10トントラックに機関銃を固定して銃を撃ちまくっているテロリストの姿が見えた。
固定している部分は回転することが出来るようになっていて扇形に銃弾を飛ばしている。
トラックのボディ、すなわち荷物を載せる部分は既に無くなっていて周りにその残骸らしきものが落ちている。
「いやぁ、考えたね。銃本体が150キロで弾薬含めればもっと重くなるからってトラック自体に固定して運搬するとはね。それにトラックが動かないようにタイヤをわざとパンクさせてる。あれじゃあそこから動かせないだろうね」
「しかし、装甲車もよく耐えていますね」
「海戦が基本のケープ半島ではあまり見ないのか?
あのジープは運搬用ではなく盾用に開発されているんだ。装甲を傾けることによって上に弾丸をそらす。そうして後ろに隠れている兵士を守るよう設計されているんだよ」
「あのサポート役、お腹から血が出ていませんか?」
「恐らく君のとこの兵士が撃った弾が運良く当たったんだろうね。いや、この場合は運悪くかな?」
メイソンから銃を返してもらったアメリアが寝そべって狙撃体勢に入る。
まず両目を開けてある程度調整してから遮光板のようなもので左目をの視界を塞ぐ。
「距離は?」
「約230ですね」
メイソンが双眼鏡を使って測った距離を言う。
そして撃つ、撃ったのは3発。それぞれ射手、サポート役、運転手に向かって飛んでいく。
運転手は運転席から身を乗り出していたので思ったよりも上手く命中した。
そしてアメリアが狙った場所。それは頭ではなく胴体、それも胸だ。
テロリスト達は防弾チョッキなども着ておらず、弾は体の中へと侵入した。
FPS系のゲームをやったことがある人の中にはヘッドショットを狙った方がいいのでは?
と、思う人もいるだろう。だがこれは現実でアメリアの持っている銃は短距離狙撃銃である。
音速を超えないため音は小さいが貫通力は低い短距離狙撃銃の弾は曲面の頭蓋骨で逸らされる場合もあり、胴体と違ってど真ん中をピンポイントで当てなくてはならないので難易度が高い。
ヘッドショットをする必要がある時は犯人の指が爆弾のスイッチにかかっていたり、人質が取られていたりする時で今回はそんなことがないので狙うは心臓である。
まあ、そんなわけで3人のテロリストは無力化され、兵士たちによって片付けられた。
「これで一件落着ですね」
「そんなわけが無いだろう。胴体に当たっていても一発ですぐ死ぬような致命的な場所には当たっていない。恐らく、あいつらはこれから集中治療室と尋問室を順番に回るだろうな」
メイソンがうへぇ、という顔をする。
基本的に体を動かして戦地でドンパチやるのが仕事の兵士だ。
そんな警察の延長線上のようなことはやりたくない。
もっとも、アメリアと離れたくないというのが本音だろうが。
「まあまあ、そんな顔しないで。私たちの目的は別にあるんだから関係ないよ」
「目的あったんですか?」
「もちろん、だから君も呼ばれたんでしょ」
「一緒にメイソンがここにいる理由も話して貰ってもいいか?」
「もちろん!」
ミアがやけに楽しそうにパニックが落ち着いてきた街を軍基地目指して歩き出す。
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「さて、いつも通りミーティングを始めるよ。今回のターゲットはリンダ・ブロッサムと、グラン・ヘリオス。両方とも相当の手練だから気をつけるよーに」
ミアが顔写真を2枚ずつ、2人に手渡す。
片方は悲しそうな顔をした白人女性でもう1人は逆に楽しそうな顔をした健康そうな白人男性。
写真を見たアメリアの顔が一瞬歪む。
「心が痛むかい?」
「いいや、元々そういう仕事だ。だが仲間の背中を撃つというのは気持ちがいいものでは無いからな」
「それはみんな同じだよ」
ミアとアメリアが悲しそうに話をしているがなんの事だがさっぱりわからないメイソンが置いてけぼりにされる。
「この人、アメリアさん達の知り合いなんですか?」
「うーん、まあ、知り合いっていえば知り合いかな?」
「片方は私たちと同じ『死神』だ。もっとも数回会ったことがあるくらいで別の『死神』に所属している者だがな」
へぇー、と2つの写真とアメリアさん達を見比べてみる。
「こっちですか?」
「そう、その女性が『死神』の中でも古参と呼ばれる人物だよ。殺した人数は私なんかよりもずっと多く、ずっと強い。沢山いる『死神』の『鎌』の中でもトップクラスだな」
「特に『顔』のメア・グリーンバーグの状況把握とのコラボは強かったみたいだね。リンダが周りの状況をメアに報告してメアが最適解を導き出してリンダがそれを完璧なこなす。まさに最強のコンビだったそうだよ」
「グリーンバーグってミアさんの親戚ですか?」
「そう、お姉ちゃんだよ。家ではグータラしてるくせに仕事になるとシャキってする性格だったよ」
メイソンが写真に視線を戻す。
「どうしてそんな『死神』のエースが神敵になったんだ?」
「わからない。ただグランの暗殺を頼まれてグランに接触したあたりからおかしくなったってお姉ちゃんから聞いてる」
「グランが何かしたのか?」
「それすらもわからないから困ってるんだよねぇ。お姉ちゃんも忙しいみたいで連絡つかないし」
『死神』の2人がうーんと唸る。
「あ、グランについてはそこに資料があるからね。リンダのもあるよ」
ミアが指さした机の上にはいくつかの資料が乗っており、その中に2人の資料もあった。
「(グラン・ヘリオス、シリアルキラー。『神政主義』フランス出身。現在27歳。幼少期に両親を殺害されその後は医者の叔父と過ごし、その叔父は世界各国を回りながら病気の人々を治していた。笑顔が似合う白人男性で優しい青年だったという証言もある)」
ここまでは普通の資料だ。
だが2枚目から狂気じみてくる。
「(計42人にも渡る殺人、それも初めての殺人は7歳の頃?
両親を殺した殺人鬼を近くにあった包丁で刺殺、恐怖のためか20以上にも及ぶ刺傷があった。死因は失血死。その後も叔父と立ち寄った街で殺人鬼が似たような手口で殺されており、
数ヶ月前にロンドンの警察がグランの犯行だと認定。42人というのはわかっているだけでさらに多くの人を殺している可能性もあり、ですか。最初の殺人は正当防衛で見逃されたがあとから発覚した罪に対しては正当防衛は適応されない。まぁ、当たり前ですね)」
リンダの資料にも目を通す。




