一、よお
〈二階建て空中楼閣のF〉
一、よお
さて、人は常に上を目指してきた。鳥のように空を飛ぶことを夢見た。月へ到達することを目標にした。それらはもう昔の話である。
ライト兄弟が飛行機で空を飛ぶ偉業を成してから、百年も経たない内にロケットの打ち上げに成功。今では海外旅行もジェット機でお手軽。宇宙旅行も浦島太郎の気分を味わうことを覚悟すれば、あれよあれよと夢ではない時代ときたものだ。
スーパーマンに鉄腕アトムにドラえもん。例を上げればいくらでも羨望の的がある。体に飛ぶ性能がない故に空を目指す。夢に空を描く。上へ、上へ。不可を可に、と頭を抱え悩ませるのが人間の性と言えよう。
まあ、それはともかく。いい加減そちらでも不動産屋トウキョウスカイホームの都市伝説が伝わっているのだろうか?
スカイホームではなく、トウキョウスカイホーム。似ているが無関係。誤解しないよう何度も言っておく。トウキョウスカイホーム。
トウキョウスカイホームの都市伝説。出だしの流れから想像はつくだろう。
そう、トウキョウスカイホームは『そういう家』を提供しているという伝説である。ビジネスジェットかはたまた飛行船か。いやいや、本当に家そのものがそういうことになっているのである。
一体どうやって? 構造に関しては専門外でもある俺の立場では一句たりとも説明できないが、設計士はそんなドリーミーな家に住みたかったのだろう。とまあ、俺の勝手な後付け空想に過ぎないが。とにかくドリームだ。いい響きだろう? ドリーム!
そしてこれは、この都市伝説はけして伝説なんかではないという物語。なぜなら俺がそこに住んでいるから。それこそ単なる空想だと言うなら実に結構。正しい判断である。俺はレジェンドでいいと思っている。レジェンド。実にいかしている!
ところで、そちらにも訳あり物件というものがあるだろう。妙に家賃が安いと裏がある。カーテンを開ければ墓地。過去に自殺ないし殺された住人。あっと缶ジュースを倒せば部屋の角へコロコロ転がり、天井には謎の染み。それが手形に見えた日には夜も眠れない。裏を知れば拒否したい。不動産屋は何としても住まわせ売り上げを得たい。だから安くするしかない。嗚呼、訳あり物件。
さあ、前置きはここまでにしておこう。俺はこれより二階建ての空中楼閣に住んだことで始まったドラマを披露する。主導権は常にそちらにあるのだから、気楽にいこうぜ。




