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ドア

翔が目指した建物は自衛隊の立体駐車場である。

(何だこれは!駐車場だ!)

骨組みだけの駐車場であるため壁も何も無い。

(仕方が無い。少しでも上に行くしか無いか!)

翔はブレキーも踏まずに駐車場入口に突進する。

車が横に向いたときに快晴は見た。

「急いで!煙が来る!」もう悲鳴だ。

車は2速のフルパワーで駐車場の中を駆け抜ける。

時速にすると100キロは出ていた。


2階から3階へ通じるスロープへ行くために右へ急旋回した時だ。

”ガンッ”後輪が耐えきれずにスライドして壁にぶつかった。

その反動でハンドルが反対方向に持っていかれる。

「駄目か」翔の心は切れかけていた。

「・・・お父さん」何か聞こえた気がする。

(お父さんって俺のことか?)

(俺だよな!)千夏と快晴の顔が浮かんだ気がする。

(俺だ!)

翔はハンドルを逆に切ってアクセルを吹かした。

車は左側のガードレールを擦りながらもスロープを上って3階まで辿り着いた。


快晴が「煙が来る!」

巨大な煙の塊が全ての視界を奪っていた。

(これまでか)翔には全てが止まって見えた。

その時だ!

外側のスロープからは見えなかったがドアがあった。

「車を降りるぞ!」翔は叫んだ。

車をドアの側面に急停車させてから

「快晴、壁のドアを開けろ!」快晴がドアに走る。

「千夏、彼女を車から引きづり出せ!」

誰もが必死に動いている。

車を止めてから15秒も経っていないが死力を尽くしている。

「ドアへ走れ千夏。彼女は俺が連れて行く」


翔は少女の脇に自分の肩を入れて引きずって歩いた。

千夏はドアを開けて「急いで!」と必死に叫んでいる。

(もう少しだ)

翔には大きな煙が地鳴りと共に迫っているのが見えている。

(間に合わない)

(もう、ドアを閉めて良いよ。千夏)

(危ないから早く閉めてくれよ!)

もう、駄目だと思ったときである。

「お父さん、急いで!」体が急に軽くなった。


「快晴、何で戻って来た!」

「お父さんが死んじゃう」

快晴がドアから出て手助けに来たのだ。

(バカヤロ~)

(このままじゃ、一緒に死ぬだけだ)

「お父さん、あきらめ無いで!」

(そうだ!俺はお父さんだ)

(快晴を守る責任がある)

「うぉ~~!」翔は最後の力を振り絞った。

快晴は少女の右側を担いだ。

「快晴、がんばれ!」

「お父さんも!」

二人がドアの前に付くと千夏が快晴を中へ引き入れて少女を抱き寄せた瞬間である。

灰色の火砕流が開いたドアごと翔を飲み込んでしまった。


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