6. 彼の回想
意気地なしと言われた彼のこと
母に似て顔立ちは甘く
父に似て背は高く
小さい頃は『絵本の王子様みたい』ってよく言われた
まあ実際王子なんだけど
そんな立場と容姿だからか、女の子やその親達に囲まれたり迫られたり、勝手に喧嘩していたり
挙げ句の果てには私室に忍び込んで来たり、惚れ薬?なんて物を飲ませようとしたり
女の子を怖いと思うのは仕方ないと思う
学園の入学式
新しい出会いは半分楽しみで半分憂鬱だった
立場上新しい人間関係を広げる事は大切だとわかっているけど
女の子はなぁ…近寄りたくはないかなぁ
そんなふうに思っていた
国境の領地だったりすると、学園に入学するまで王都に出てこない子もいる
そんなはじめましての子の中に彼女がいた
淡い茶色の髪は陽の光を浴びると金色にも見えて
振り向いた時に垣間見えた瞳は深い森のような緑色で
立ち姿がとても綺麗で…
あとから思えばその時から惹かれていた
馬を駆けさせたり
飛ばされた帽子を取ろうと木に登ったり
僕の知っている女の子とは違ったけど
僕の知っている女の子達よりも
所作がきれいで
朗らかで優しくて
笑顔が花のようで
どんどん彼女に惹かれていった
なんだか気恥ずかしくて男友達のような距離感だったけど
彼女を狙う男が近づかないようにいつも彼女の隣は確保した
ダンスを誘えば受けてくれるし
ふと目があったり
きっと彼女も僕の事嫌いではない、どっちかといえば好き、なのかなと思っても
居心地の良い関係に甘えて、『好き』のひと言も言わなかった僕は
やっぱり意気地なしなんだろう
もしかしたらあの時言ったように、彼女の気持ちも過去形で、僕の想いなんていらないのかもしれないけど
やっぱりちゃんと好きだと言いたい
彼女が王都を出て行った2日後
僕は彼女の領地に向かった
彼=第二王子