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Case 12「陽夏ちゃんの友達は…」

未青とフレインが買い物に行く帰り道、2人は陽夏に遭遇します。

その陽夏と一緒に歩いていた友達はなんと、人間とは違うようで…

(よう)()ちゃんとこの世界で再会してから、ボクはセンセイと一緒にスピーサさんと(よう)()ちゃんの家に3回遊びに行った。服装はスカートで。

~3度目に遊びに行った時の、家のトイレのドアの前~

「あ…ああっ…」

(ジョロッ… ジョロロロロ… ビチャビチャビチャビチャ…)

()()くん…(苦笑)」

「うぅっ… 間に合わなかったぁ…(泣)」

「フレインさん呼んでくるね。」

「うん…」

とこのように、3回ともボクはおもらしをしてしまったが。


それから3日が経ったある日の午後2時ごろ、ボクはセンセイと一緒に近所のスーパーに買い物に行った。

その帰り道。

「ねえ()()くん、こっちに来てるの(よう)()ちゃんじゃない?」

「あ。ほんとだ。」

先日スピーサさんに会った銀行の側の信号を待つボクたちの方に向かって、(よう)()ちゃんが歩いてくるのが見えてきた。桜色よりもちょっと薄めな色のワンピースを着ているのが分かった。

その(よう)()ちゃんの隣には、大体同じくらいの女子が歩いて…ではなく(よう)()ちゃんの歩くスピードに合わせて羽を羽ばたかせながら飛んでいた。

「飛んでるね。」

「亜人の子じゃないのかな?だって、飛び方が完全にちょうちょみたいじゃん。」


「亜人」。センセイと一緒に読んだ本に書いてあったことだ。動植物や幻獣、それに魔族の特性を持ち合わせた人たちのことだ。特性を持つ動物の特徴の部位がある他は基本的な姿はボクやセンセイのような人間のそれと変わらない。


「あー!」

ボクたちに気づいたのか、(よう)()ちゃんがボクたちの方に駆け寄って来た。

「あーちょっと(よう)()待ってー!」

(よう)()ちゃんの隣を飛んでいた女子が(よう)()ちゃんを呼び止めようとする声も聞こえた。


(よう)()ちゃん!」

()()くん。フレインさんこんにちはー。」

「うふふ。こんにちは。」

「(やや荒い息遣いで)ねえ(よう)()、この人たち誰?」

(よう)()ちゃんに聞いている、(よう)()ちゃんの隣を飛ぶ女子。

服装こそ他の人と全く変わらない黒いミニスカートと黒と白のブラウスを着ているが、彼女の背中では虫のように素早く羽が羽ばたいていて、さらにおでこには虫の触覚のような黒くて細いアンテナみたいなものが生えていた。さながらボクが前いた世界にいたテレビのヒーローのような。


「この人?私が前の世界の病院で友達だった人。『()()くん』。」

(よう)()の友達… って待って!『くん』ってどういうこと!?」

「見ての通りスカート履いているけど… 男の子なんだ…(汗)」

「そうなの!?待ってぜんっぜん違和感ないんだけど!顔も体も完全に女子みたいだし!」

ボクは今、下に明るい黄色のチェックのミニスカートを履いている。彼女から見てもそのスカートを履いている姿は違和感がないようで、興味津々な様子がした。

「えへへ…」

「私がなんとなく勧めてみたら、()()くんも気に入っちゃって… あなた、名前は?」

「私?」

「うん。」

というセンセイの呼びかけに応じて、彼女は自己紹介を始めた。

「うちは『ヴィオナ・レイス』。(よう)()とは同い年でマンションの部屋が隣同士なんだ。あなたたちは?」

「ボク?『赤砂()()』です。13歳。」

「私は『フレイン・スノーウィー』。よろしくね。」

「はーい。()()くんとフレインさんね。()()くん。年近いんだから、『ヴィオナちゃん』でいいわよ。」

「いいの?」

初対面でなおかつ年下の女子から『ちゃん』付けで呼んでいいと言われたことにボクは恥ずかしかった。今から3年前、(よう)()ちゃんと初めて会った時だって最初の数日は学校と同じ感じで「真間さん」と呼んでいたくらいだし。


「そうだ。」

と、(よう)()ちゃんが口を開いた。

「2人とも、今からヴィオナの家遊びに行く? スピーサさんまだ学校だから。」

「うん。せっかく(よう)()の友達なんだし!」

ボクは突然ヴィオナちゃんの家に遊びに来ないかと誘われた。立て続けに年の近い女子の家に遊びに行くなんてボクにとっては初めての経験だ。

ボクは緊張していることなど、言うまでもない。

「私も一緒に行くよ。買ったものはもう家に魔法で転送しちゃってるんだし。」

「センセイも一緒なら…(照)」

「フレインさんも来てくれるんだ!やったー!4人もいるー!」

ヴィオナちゃんはすっかりご機嫌な様子だ。


マンションの7階。ヴィオナちゃんの家はスピーサさんと(よう)()ちゃんの部屋のエレベーターホールにより近い方の一つ隣にある。


手洗いうがいを済ませてヴィオナちゃんの部屋に入るボクたち。そこには驚くべき光景が広がっていた。

部屋に2つある机。一つはごく普通の勉強机だが、もう一つの机には前の世界のテレビで見た、人気YouTuberのドキュメンタリー番組で見たような機材が乗っかっていた。

「ヴィオナちゃん、凄い機材だね。」

「えへへ。ありがとう。」

「実はヴィオナちゃんはね、アスムールでトップクラスのBuzz(バズ)Bell(ベル)ster(スター)なんだ!」


BuzzBell(バズベル)」。アスムール民主国でトップクラスのシェアを誇る動画配信専門のSNSサイト。

ヴィオナちゃんはなんと、そのBuzzBellでトップクラスの人気を誇っているユーザーという。ボクもBuzzBellの動画を何度か見たことがあるが、ヴィオナちゃんの動画はまだ見たことはない。


「そうなの!?ボク、ヴィオナちゃんのはまだ見たことがなくて…」

「そうなんだ。じゃあこれ。」

ヴィオナちゃんはタブレット端末を渡してきた。

画面を起動すると「VionaChannel」。名前から察しがつくようにヴィオナちゃんのチャンネルだ。


動画を再生する。その内容は雑談を中心にASMR動画から歌ってみた動画まで様々なジャンルがある。

「これ、編集とか全部ヴィオナちゃんが一人でやってるの?」

「そうよ。たまーにお兄ちゃんに手伝ってもらうこともあるけどね。お兄ちゃんもそういうの得意なんだ。」

しばらく動画を見ていて…

「ちょっとうちトイレ行ってくる。」


ヴィオナちゃんがトイレに行ってからしばらくして、ボクもトイレに行きたくなってしまった。初めてのヴィオナちゃんの家で緊張したのに加え、完全に尿意が伝染した格好だ。

「センセイ… トイレ行きたい…」

「そうなの?」

「うん…」

ボクはセンセイと一緒にトイレのドアの前に行った。


「ねえヴィオナちゃん。」

「なあに?フレインさん?」

()()くんが、トイレ行きたいの…」

「マジで?分かった。」

しかし10分くらい経っても、ヴィオナちゃんはトイレから出てこない。

「ごめんね… (ちゅう)(じん)の人は、トイレが長いんだ…」

と、(よう)()ちゃんは言う。

しかしボクの「トイレいつ空くの…?」という不安が高まるのに比例して、尿意はどんどん増している。

激しい痛みを帯びる膀胱。ボクはスカートの上から大事なところを押さえて、パンツの中に滲み出始めたおしっこを食い止め続けた。


しかしそれからさらに5分くらい経ち、ボクの膀胱に激痛が走った。

「あっ、ああっ… あああっ…」

(出ちゃう、出ちゃう…出ちゃうっ…!)

必死に膀胱括約筋に力を込めて耐えようとするボク。でもそれに抗うことはできず…

「ジョロッ… ジョロロッ… ジョロロロロロロ…」

膀胱括約筋の力が抜けていき、押さえている手からスパッツやスカートが濡れていく感覚が広がっていく。

「ビチャビチャビチャビチャ…」

溢れ出したおしっこが、スカートから染み出るだけでなく脚にもまとわりつきながら床へと降り注ぐ。

ヴィオナちゃんの家のトイレのドアの前、ボクは、ヴィオナちゃんが出てくるまで持ち堪えられずおもらしをしてしまった。


トイレの流れる音が聞こえたかどうかは、ボクには分からなかった。


おもらしが終わったボクは、スカートの濡れた部分をただ、涙目の状態で見つめていた。

()()くん… 大丈夫?」


「お待たせー… ってこれ…」

トイレからヴィオナちゃんが出てきた。びっくりしている様子なのが聞こえてくる。

床に水溜まりが広がっている上にボクは泣きながら立ち尽くして、センセイに慰められていた。その様子を目の当たりにしたヴィオナちゃんが、びっくりしないわけがないだろう。

「これ… おもらし…だよね…?」

「うん… ()()くん、我慢できなかったんだ…」

「そうなの…? ごめん…」

「いつものことなんだ。()()くんにとっては。」


泣き続けるボク。ヴィオナちゃんが申し訳なさそうなのが聞こえてきた。

()()くん、バスルーム… 使っていいよ。」

「(泣き声交じりで)ありがとう… ヴィオナちゃん…」

「本当にごめんね…」

「謝らなくていいよ…」


ボクはセンセイと一緒にバスルームに行き、そこで一人シャワーを浴びた。

汚れたパンツ、スパッツ、スカート、それに靴下はセンセイが転送したという。


ボクは着替えの服を着た。それはテニスウェアっぽい、レモン色に近い黄色のスカートだった。

着替えを終えてドアを開けると、センセイが待ってくれていた。

「おかえり。ヴィオナちゃんには()()くんのこと話しておいたから。このスカートも可愛いわよ。」

「うん… ありがとう…」

クレープの生地みたいな薄めな布で、裾がヒラヒラしていて動きやすい。

「お待たせー。」

「おかえりー。」


ヴィオナちゃんはスマホを持って何かを待っている様子だった。

「ヴィオナちゃん、どうしたの?」

「これ?みんなで写真撮って乗せようと思って。せっかく4人で集まったんだし。」

「うん!」



(よう)()ちゃんから女子のポーズを教えてもらった後、写真を撮る。

「行くよー。」

女子っぽいピースのポーズがボクには恥ずかしかったが、4人で並び立って写真を撮るのがなんだか嬉しかった。


その写真は可愛くデコレーションされた上で、アスムール民主国でこれまた人気の写真投稿SNS「Captures(キャプチャーズ)」にアップされた。

Capturesでも人気者のヴィオナちゃん。その写真はその日の夜8時の時点で1,200もの「Awesome(オーサム)!」、つまりボクが前いた世界でいうところの「いいね」がついたという。

-用語解説-

【亜人】

フレインたちの世界にいる動植物や幻獣の特性を宿した人間のこと。基本的な姿は人間と変わらない。

・陸生動物の特性を持った「獣人」

・鳥類の特性を持った「鳥人(ちょうじん)

・海の生き物の特性を持った「海人」

・川や湖の生き物の特性を持った「真水人(しんすいじん)

・昆虫の特性を持った「(ちゅう)(じん)

・ドラゴンの特性を持った「龍人(りゅうじん)

・ドラゴン以外の幻獣の特性を持った「幻獣人」

・植物の特性を持った「花樹性人(かじゅせいじん)

・魔族と人間のハーフの「半魔人」

がある。

また海中には人魚もいてそれも亜人に含まれるが、「幻獣人」には含まれない。



Buzz(バズ)Bell(ベル)

フレインたちの世界に存在する動画配信専用SNS。アスムール民主国では動画配信サイトのトップシェアを誇っている。

Buzz(バズ)Bell(ベル)ster(スター)」という同サイトでの配信を職業とする人が人気を博している。


Captures(キャプチャーズ)

フレインたちの世界に存在する写真投稿SNS。

登録ユーザー数、全世界でおよそ1,200万人。


-新しい設定付き登場人物-

ヴィオナ・レイス(Viona=Rayth)

陽夏の親友である蟲人の少女。12歳。蟲人の中で蝶の特性を持った「蝶族」に属する。

陽夏との出会いは家がマンションの隣同士なことと、兄がスピーサの魔法専門学校の同期生であること。

性格:明るくてノリが良い。

身長:約141cm

誕生日:4月7日

趣味・特技:動画配信・ダンス・メイク・空を飛ぶ

好きな食べ物:はちみつ・エビフライ

好きなもの:可愛い服・コスメ

苦手なもの:苦いもの・ヘビ

一人称:うち・私

トピックス:「BuzzBell」でトップクラスの人気を誇っている。その人気ぶりはある経済学者から「収益化した場合の収入はおそらく200万苑を超える」と言わしめたほど。ただ年齢の関係上収益化はまだできない。(18歳から可能)

トピックス2:母親はBuzzBellの運営会社の社外取締役を務めている。


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