奇妙な癖
お題は包丁!
私にはある奇妙な癖があった。
それは、包丁を見ると笑ってしまうというものだ。
日頃の悩みであり、来週にある料理会の時までには解決したい。
だから、私は頭が切れる友達にそれを相談することにした。
「私、包丁を見ると笑っちゃうのよ。どうすればいいかな?」
「殺人鬼の血でも流れてるんじゃない?」
「お父さんとお母さんは人殺してないよ!?」
「突然変異も考えられる……」
「えぇ……一回その可能性からは離れようよ」
「そうね。じゃ、実際に包丁を見てみて、気づいたことを言ってあげる」
「ほんと!?ありがと!」
「感謝しなさい」
私達は台所へ行き、戸棚を開ける。
そして包丁を取り出すと……やっぱり笑ってしまう。
「ほらね?」
「体質の問題では?」
「いや、お医者さんに言っても、そういう体質はないって言われて。しかも、切ってる時には笑わないの」
「そう」
美智子は黙って、顎に手を当てて考えだす。
暫くたって、美智子が再び口を開く。
「包丁はそれだけ?」
「いや、三種類あるよ。全部出した方がいい?」
「そうね。できれば、一本づつ」
「分かった」
そう言って、二本目を取り出す。
すると、笑いは――
「笑わないじゃない」
「ほんとだ」
「ちょっと見せて」
私は美智子に包丁を渡す。
美智子はそれを、まじまじと見つめる。
「……三本目は?」
「これだよ……アハハ!」
やっぱり笑ってしまう。
「やっぱりね」
不意に美智子がそんなことを呟く。
「何か分かったの?」
「ええ、全部分かったわ」
「ほんと!?」
「ええ、ほんと。でも、もう一つだけ確かめたいことがあるわ。洗面所はどこ?」
「え?洗面所?えっと、廊下出て右にあるけど……」
「ついてきて」
言われるがままついて行く。
何かあるのだろうか?
「さ、鏡を見て」
「え、どうして?」
「いいから」
「分かっ……アハハ!アハハハ!」
「やっぱり」
「え?ちょっと、どういうこと?」
「つまり、貴方は自分の顔を見て笑っていたのよ」
「え?」
虚をつかれ、思わずそんな声が出てしまう。
自分の顔を見て笑っている?
じゃあ、なんで包丁を見て笑って……あ、そういうことか!
私は包丁の刃に反射した自分の顔を見て笑っていたのか!
二本目で笑わなかったのは、反射しないステンレス製だったということだ。
ようやく合点がいった。
「ありがとう。謎が解決したよ!」
「良かったわね。それはそうとして……貴方、自分の顔に自信を持ちなさい」
「うん、そうする……アハハ!」
「はあ、どうやらそっちの問題は解決できないようね……」
美智子のそんな嘆息混じりの声が、私の笑い声をさらに大きくするのだった。
書くまでにかかった時間28分。推敲5分。はみ出した時間3分。




