呪われた宝石
「まあ、似たようなのはいっぱいあるんだ。気にしないで次の店に行こうよ!」
「いえ、これ気に入りました。これにしましょうよ!」
「まあ、気に入ったのは分かるけど、お金全然足りないじゃん。どうすんのさ?」と言うが
「え?そりゃあ値引きしてもらうに決まってるでしょ!」
「いやいやいくら何でも無理でしょ。俺の手持ちって30万程度しかないのに…」
「そこは黄鬼さんが頑張るのよ!」と言うが
「何を根拠にそう思うんだよ!俺には交渉力なんて皆無に等しいんだぞ!」
と抗議するが
「大丈夫よ!黄鬼さんなら出来る!私信じてるから!」
と言って背中を押される黄鬼であった。
仕方なく店内に入り店主に交渉を試みる事にした。
「すいません。これいくらなんですがもっと安くしてもらえないですか?」
「ええ、いいですよ。希望額はおいくらで?」と言われたので金額を提示すると
「お客さん…それ冗談ですよね?」と苦笑されたので
「いやいや、冗談じゃないですよ。本気ですよ!」
と食い下がると店主はしばらく考えてから言った。
「仕方ありませんね……いいでしょう」
「本当ですか?」と言うと店主は首を縦に振りながら続けて話した。
「ただし条件があります。」
「条件?条件と言うのは」
すると店主は腕を組み少し悩むそぶりを見せた後、はぁーとため息をついた後何やら豪華な模様のついた小さな箱を取り出し箱を開いて見せた。
「これ何ですけどね…」箱の中には美しい輝きを見せる宝石エメラルドが入っていた。そして続ける
「この宝石の処分に困ってまして…」
と言うので
「え?どうしてですか?」と聞くと店主は重々しく真剣な顔つきで話し始めた。そしてそれを聞き終わった後の黄鬼は唖然としていた。そして話をまとめると……このエメラルドにはいわくつきの曰く因縁があるそうだ……。
かつてある富豪の一家が所有していた物だがその当主と妻は惨殺されてしまったらしい。そして残された娘だけが助かったのだがその娘は精神を病んでしまい失踪したのだとか……
そしてその後もエメラルドを手にした者は次々に不幸に見舞われる事件が続いた。そして最終的に現在は呪いの宝物として市場に出回っていたのを事情を知らなかったここの店主が譲り受けてしまったとの事だった。なので手放そうにも怖がって引き取りてもなくかといって捨てるのも縁起が悪そうだという事でほとほと困っていたらしく、最近では恐怖で夜もほとんど眠れず悩んでいたとの事だった。
「……そんな訳で厄介払いで結構安くします。それでいかがですか?」
「そ、それじゃあ三千万円の商品を30万円で買えるって事ですか?」
「そういう事です。つまりそちらの皿十枚とこの呪いのエメラルドを含め30万円てことで」
「やったあ!買ったーー!」と言うとお菊は興奮した様子で言った。
「まあまあ……落ち着いてよお菊ちゃん。じゃあ、これで商談成立って事で!よろしくね!」
「はい、わかりました。ではこちらへどうぞ」と言われて案内された部屋には先程の皿の他に
問題のエメラルドも用意されていた。
「おお!これは……」
と感嘆の声を上げる黄鬼だがその隣でお菊が
「わあ、綺麗な宝石……」と呟いていた。
そして黄鬼はお金と皿を受け取ってその店を後にしたのだった。
それから数時間後……夕方近くになりようやく帰路に着いた二人だった。
「いやー長旅だったね」
「本当ね。疲れたわ」
などと会話をしているうちにマンションに到着した。
そして部屋に入るなり早速皿を取り出して眺めているお菊を見て黄鬼は言った。
「しかし九枚でよかったものを十枚になってしまったけど一枚勿体ないけど割っておく?」
そう言うとお菊は
「え?何を言っているの?せっかく買ったんだから大事にするに決まってるじゃない」
と言うので
「そ、そっか」と答えるしかなかった。しかし……
「まあ、でもこれは呪いの宝石なのよね。どうしたものかしら」
などとブツブツ呟きながらエメラルドを手にしているお菊を見て黄鬼は提案する。
「何だったら羅夢さんにでもあげちゃおうか?」
「ええ?何言ってるのよ!そんな事したら羅夢さん怒るわよ」
「いやいや、喜ぶと思うよ。考えても見なよ。地獄の鬼に呪いの宝石なんて効くと思う?」
そう言うとお菊は
「それもそうね。じゃああげちゃおうかしら?」と納得していた。そしてそれを聞き黄鬼は
「よし、じゃあ決まりだな!早速行こうぜ」と言い出したので
「え?今から行くの?」と驚くお菊だったが
「当たり前だろ?善は急げっていうじゃん!」
と意気揚々と歩き出す黄鬼に渋々ついていくお菊であった。そしてしばらく歩く衆合地獄に到着。
そこでは羅夢が一生懸命?ひかりをこれでもかといたぶっていた。
「おらぁ!これでもか!これでもか!」
と罵声を浴びせながらひかりを炎の中に突っ込んでは蹴り出している。
「あ、黄鬼さん……助けてぇ……もう嫌だぁ……」と弱弱しく言うひかりに
「よお、やってるねえ」と言うと羅夢が気付きこちらを見て声を掛けてきた。
「おお、丁度いい所に来たな。そっちの調子はどうなんだよ?」
そう聞かれた黄鬼は
「おう!こっちは順調だぜ!今から渡したい物があってさ!こっちこっち」と言って呼び寄せた。
「なんだ?何をくれるんだ?」と聞く羅夢に
「はい、これどうぞ」と言って宝石の入った小箱を差し出した。
それを手に取った羅夢は
「ん?これは……」と言いながら不思議そうな顔をする羅夢に向かって黄鬼は説明した。
「綺麗でしょ?皿を探してるついでに手に入れたんですけど羅夢さんに似合うかなと思いまして…」
「おお!いいとこあるな。お前!遠慮なく貰っとくわ」そういってエメラルドに紐をつけネックレスのように首にかけてしまった。
そして満足そうな顔をして言った。
「うん、良いね!気に入った!」と嬉しそうな羅夢に対しお菊は呟いた。
「あのエメラルド……地獄の鬼相手に呪いが利かないって言ってたけど大丈夫かしら?」
との心配をよそに…、何かあるかもと思っていた人の期待とも裏腹になーーんも起きなく普通の生活が続くことになるとは思わなかった。これにてこの宝石の問題は無事に解決する事となる。
本当に地獄の鬼にはただのアクセサリーだったのだ。
しかし……何故だろう?
そう思った黄鬼は羅夢に聞いた。
「なあ、その宝石にはいわくつきの曰く因縁があったんだけど本当に何ともないのかい?」
と言うと羅夢はニヤリと笑いながら言った。
「お前はバカだな。本当にバカだな。いや、バカというより愚かというべきか……」
「ど、どういう意味だよ!」とムキになる黄鬼を見て羅夢は鼻で笑うと言った。
「いいか?私達のような地獄の鬼にとって呪いの宝石なんぞあってないようなものなのだよ。逆に体の調子は最高だぜ!それよりお前の方こそ衰弱してるようにみえるぞ。司録の仕事がキツイじゃねーの?」
そう言われた黄鬼は
「ま、まあそうだけど……羅夢さんだってあの仕事やったらキツさが理解できますよ!どうです、少し変わってみません?」
と言うと羅夢は
「無理無理」と両手を振りながら拒否った。
「なんでさ?」と言う黄鬼に対して羅夢はこう答えた。
「何でってお前……馬鹿だなあ……。そんなの当たり前だろ?お前見てれば過酷さがわかるからな。私達みたいな脳筋には絶対無理だって」と得意気に言うと続けて言った。
そして……。
「そもそも私は肉体労働以外はからっきしだからな。一日中机にしがみ付いてるような仕事なんてできる訳ないだろう?」
「ぐぬぬ……」と言って悔しがる黄鬼に対して羅夢は
「まあ、いいじゃねえかよ。大好きなお菊ちゃんと一緒に仕事してるんだし。なんならもうこっちに戻って来なくてもいいぞ!」
と煽ってきた。
「絶対嫌だね!」
「まあ、せいぜい頑張れよ」と言ってその場を後にする羅夢。そして去り際に振り向いて言った。
「そうだ、これ!ありがとな!」そう言ってネックレスのように掛けたエメラルドを指差しながらにこやかに手を振り去って行ったのであった。それを見て黄鬼は呟く。
「いい人なんだか悪い人なんだかわからないな……」そう呟きながらお菊と並んで帰宅した。
その後自宅に帰った黄鬼はすぐに眠ってしまった。それほどまでに疲れるのだろう。その傍らで……
お菊はそんな黄鬼を優しい目で見つめている。そして……。
そんな穏やかな夜は過ぎていった。




