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ー4章ー 28話 「帰還への布石」

セリオンは生きていた……もう二度と会えないと思っていた失意が消え去った瞬間だった。


「リゼル!セリオンには実際に会えたのか?元気だったか!?」


「今はベルムランドで何をしているの?どうして連れて帰ってこなかったの!?」


嬉しさの余り、質問ばかりが先行する。

気持ちを察しながらも戸惑うリゼルは、冷静に現状を語った。


「セリオンには会えなかった。理由はベルムランドに入れなかったから。ベルムランドの国民や兵士は、英雄を敵だと思ってる人達が多い。それはグランゼルのせいだけど、皆はあの侵攻の真実を知らない」


その後もレオルドとのやり取りで分かった、当時の経緯を説明した。


「……そうか。バルクス王とレオルド騎士隊長が……。敵であったにも関わらず、セリオンにとって最善の道を作ってくれたのか」


オルセアは二人の考えを理解し、会えなかった理由、多くの国民に真実を知らせていない理由を汲み取った。


「今セリオンは、カイル・シルフォードという名前でベルムランドに暮らしている。セリオンは死んだ……この世界から。グランゼルもこれ以上何も出来ないし、戦死したベルムランド兵の家族も、それで少しは救われる」


「……そうよね、その判断は正しいと思う。いくら真実はこうだったって説明したって、多くの人は納得しないでしょうからね」


メルフェリアは冷静に民衆の気持ちに寄り添った。

セリオンの死が与えた救いの大きさを。


「レオルドはセリオンを近いうちに返すと言ってた。だから今は待つしかない。後、重要な事を言っていた。それがここに集めた理由」


全員が思っていた疑問だった。

セリオンが生きていたという話を、何故人目のつかない場所でしなければならなかったのか。


「レオルドはここに居る人以外には話すなって言ってた。多分、察しはつくと思うけど」


「英雄が悪名を背負って死んだ。あれから10年….その歴史は完全に刻み込まれている。カイル・シルフォードとして生きていくセリオンを守るためにも、俺たちに知らせて幕引きにしろって事だな」


オルセアはレオルドの意図を理解し、頷いた。

それを聞いていた全員も、その見解で一致した。


「それが世界とセリオンのため……か。だが、セリオンはこの森に来るんだよな?この街の人は、元々グランゼル国民だった人が殆どだ。間違いなくセリオンを全員知っている……どうするんだ?」


グランゼルから誕生した英雄をグランゼル国民が知らないはずがない。

オルセア達が口を噤んだとしても、本人が現れたら瞬く間にセリオンの存在がバレてしまう。


ローデンの意見に対応策を考え込んでいると、メルフェリアが口を開いた。


「最近編み出したんだけど、良い方法があるわ!セリオンの記憶を消す、忘却魔法を街の人に掛けるの。まだ編み出したばかりだから3年くらいしか持たないのだけど……」


「……いつの間にそんな魔法を編み出していたんだ!?って、一体何に使うつもりだったんだ?」


「用途なんて決めてないわ。大魔法使いとして、知識の探求は必要でしょ?」


メルフェリアは笑っていたが、このタイミングでの忘却魔法というものは有難かった。


「問題は子供たちよ。あの子達は突然現れたセリオンが何者なのかを知りたがる」


リゼルの意見にオルセアはこの間ずっと考えていた事を話した。


「子供たちには俺の二番弟子という事にしておく。セリオンが生きているなら、アレンの師匠に付けてやりたい。俺は少し歳を取り過ぎた……アレンに天断は見せてやったが、キチンと教えてやる事ができないからな。それでもアイツは今もずっと練習している……その師匠としての役目を、セリオンに託したいんだ」


オルセアはずっと考えていた事を話した。

そして、自分が衰えてきている事も。


「ならこれで決まりね。メルフェリアは今夜忘却魔法を施して。明日にはもう一度ベルムランドに向かう」


淡々と仕切るリゼルに、オルセアは一言口を挟んだ。


「リゼル。グランゼルの動きと、ベルムランドの対応策に関して話を聞いてきてもらえるか?魔王復活の前に、あの厄介な王を……グランゼル王国をできる限り無力化しておきたい」


オルセアは静かに拳を握りしめながら、いずれ訪れる未来に向けて思いを巡らせていた。


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