ー4章ー 15話 「茶香る盟約」
この森に人が住み出してから10年。
ようやく他国との繋がりが生まれた。
願わくばもっと平和な情勢の中で繋がりが持てたなら良かったのかもしれないが、それでもこの一歩は、暮らしを守るための大きな出来事と言えるだろう。
こんな小さな名も無き街に、大国の国家元首が自ら危機情報を共有するために足を運んでくれた事。
これだけでも普通は有り得ないことだ。
オスカー・ファルドという人の器の大きさは、オルセアとはまた違った色合いがあると感じていた。
「ところでこの紅茶とシナモンですが……是非アステルド連合国と取り引きをしていただけないでしょうか?」
ずっと頷いて味わっていたオスカーさんの反応から、何となくそういう話になるのではないかと予想はしていだが……やはりか。
だけど今はそこまで大規模に生産している訳ではない。
とはいえ折角気に入ってくれたのに、無下に断るのも失礼かな。
「茶葉は、まだお売り出来るほど生産できていないし、シナモンは僕が森から見つけてきている程度なんです。なので今すぐに、とはいきませんが……出来るだけ早いうちにということでいかがですか?」
正直、こういう交渉はやった事がない。
何故こんな時にボルン達がいないのか、それが悔やまれる。
彼らならもっと上手に交渉しただろうに……。
しかも相手は国の代表だ。
この件が成立したら、この街の発展に大きく繋がる話だから何とかしたいけど……。
「それで構いませんよ。お願いしているのはこちらです。売って頂けるようになったら、ボルンさんを通じてお知らせください。手筈を整えておきますので」
……あれ?交渉成立!?
何とも拙い言葉で返事をしただけだったから、断られると思っていたけど。
「お願いするだけでは良くないので、こちらからも魔物対策用に武具の提供と、練兵支援をさせて頂きます」
まさかの申し出だった。
こちらとしては茶葉をアステルド連合国で取り引きできるだけでも有り難いのに、武具と街を守る自警団育成までしてもらえるとは!
今は僕らの練習の合間に、勇者パーティのメンバーが交代で指導してくれているが、そういった支援が得られるなら、街の安全はもっと早く整備されるし、勇者パーティのみんなも負担が減るだろう。
せめてものおもてなしのつもりで出したお茶から、こんな展開になるとは……全くの予想外だった。
……オスカー・ファルド、恐るべし!
このオスカーさんの申し出に、とても有難いとオルセアをはじめ、勇者パーティのメンバーも快く承諾した。
話し合いがひと段落すると、オスカーさんは立ち上がり僕に手を差し伸べてきた。
「アレンくん、今はこんな時代だ。だからこそ互いが出来ることで手を取り合うのが、この先の未来を築くのだと、私は考えている。そのキッカケが今日の出会いである事を願っているよ」
そう言ってオスカーさんは僕の手を強く握った。
その手からは強い信念と、どこまでも深い優しさが伝わってくるのを感じた。
まるで昔から知っていた盟友のように。




