F9
「まぁいいや、早く仲間集めよ」
俺は、気分が沈んだまま、「ユニオン」の中へと入った・・・
すると、
「もうやめて!私のために争わないで!」
突然、美女が泣きながら俺の隣をすれ違い、「ユニオン」を出ていった。
「レイナ!待ってくれ!」
それに続くように、二人のイケメンが、後を追ってユニオンを出ていく。
そして、ユニオンのロビーには、
先程の三人のパーティーメンバーだったであろう少女が取り残されていた。
俺は、その様子を、良いものでも見るかのような目で眺めていた。
・・・こういうことって本当にあるんだ。
少し驚く。
「でも、あの人可哀想だな」
何が起きてああなったかは、何となくわかる。
あの美女をめぐって、イケメン二人が争っていた。
それが嫌で、美女は逃げ出し、イケメン二人はその後を追った。
そして、あの少女が取り残された。ってとこか。
でも、なぜあの少女は三人を負わなかったのだろう。
・・・いや、追いかける気力がないのか。
ロビーには、呆然とした様子の少女がポツンと立っている。
「・・・なんか可哀想だし、慰めてくるか」
俺は「紳士」だから、ほっといたりはしない。
すぐさま、受付の奥にいる少女の方に歩いていく。
幸か不幸か、周りには誰もいない。
「元気だせよ・・・」
俺は、その少女の方をポンと叩いた。
「べ、別に落ち込んでなんかないです・・・」
明らかに落ち込んだ口調で少女は言った。
明らかに落ち込んでるのに何言ってんだこいつ。
「絶対強がってるだろ」
なんか泣きそうで怒りそうな顔してるもん。
「べ、別につよがってなんかないiiiiii」
強がり
「ま、それはともかく。傍からみたら君、仲間に捨てられた哀れな少女にみえるけど、実際そうなのか?」
「お、おそらく・・・。私はテレポートが使えないので追いつけない、、、それに、あの感じだと戻ってこないと思います・・・」
捨てられたってことか。
「やっぱり、私なんてどうでも良かったんです、、、、どうせ私なんて・・・」
地面に手をつく
唐突に落ちこむ
「で、でも、もしかしたら仲間が帰ってくるかもしれないからさ、ほら」
軽く肩を
別れも告げず捨てるなんてしないだろ。
人の心があれば。
「もう、いいんです・・・。どうせ戻ってきても、気まずい雰囲気になるだけですから」
天を仰いで未来を見るようにそう言った。
なんだよ。
可哀そうじゃねぇかよ。
「それで君、これからどうするんだ?」
「え?・・・あ、そういえば考えてなかったです」
全然未来見てなかった。
ま、「ように」だったんで。
「そこでなんだが、俺といっしょに来ないか?」
「今なんと?」
「いやだから、俺といっしょにこないか?って」
いまは、何がなんでも仲間が欲しい。
I’m bocchi!!!!!!!!
I’don’t like bocchi!!!!!!!!
「うーん・・・、まぁ行く当てもないしいいですよ。というか、私も誘おうと思ってたので」
Fooooo!!!!!!
I’m not bocchi!!!!!!!
心の中と外でむっちゃ喜んだ。
______________
「で、俺に何をしろと?」
ロビーの奥で、少女に問い詰める。
「そんな焦らないでください。
まだ名前も知らないじゃないですか」
・・・言われてみれば、この少女の名前、知らない。
あと、俺の名前も言ってなかった。
「えーっと、とりあえず俺から。
俺の名前は森 未來。
見ての通り、謎の別国人だ」
俺は、着ている部屋着を指差す。
「普通、自分で謎の人とは言わないんですが・・・」
少女が軽く引く。
そんなおかしいことなのか?
「で、お前は?」
少女に尋ねる。
「私の名前はメラ。
見ての通り、魔法使いです」
メラは、着ているローブをかざした。
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メラはかなりの美少女だ。
美しく輝く金色の髪。
人形のように整った顔。
身長は俺より少しだけ低く、黄色が少し入った黒のローブを着ている。
「なんというか、そのローブ変だな」
黒に黄色が少し入ってるローブって、あまり見ない。
「変とはなんですか!
このローブはオーダーメイドなんですよ!」
オーダーメイドだと!?
俺も、オーダーメイドの剣とか使ってみたい!
俺は、心がおどった。
「だから、この色も自分で決めたんです!
変とか言わないでください!傷つきます!」
メラが怒りながら言う。
・・・確かに、メラの金色の髪と、この色のローブは合うかもしれない。
・・・かもしれない。
__________________
「それで、俺に一体何をしろと?」
自己紹介が終わったところで、本題に戻る。
「ちょっとスルーしないでください!」
ちょっと罵声が聞こえてきますが、気にしません。
「・・・まぁ、聞かれたので答えますけど」
メラは納得いかない顔をしている。
「あなたにしてもらいたいことというのは・・・・
魔物討伐です」
魔物討伐、だと!?
異世界に来たらまずしたいことランキング上位のやつじゃないか!
でも・・・
「魔物討伐、嫌なんですけど」
「え!?どうしてですか!?
魔物討伐、楽しいのに!」
メラは、驚きながら、不思議そうな目で俺に問いかけてくる。
俺、どっちかっていうと、採集とかの方が好きなんだよね・・・
「嫌っていうわけじゃないんだけど、あんまり乗り気じゃないというか・・・」
「嫌じゃないなら、嫌って言わないでくださいよ!
でも、採集が好きだなんて変わってますね」
そんな変わってないと思うんだけど。
だって、採集とか発掘とかってなんか楽しいじゃん。
「まぁ、乗り気じゃないだけだからやるけど」
「なら、早速魔物討伐に出発・・・・・・と行きたいところですが、
装備がないと何も始まらないので、武具屋に行きますか」
メラが、ユニオンの出口へと歩き始めた。
どうしてこんなめんどくさそうなことするって言ったんだろう・・・
俺は、落ち込みながら、ユニオンから出ていくメラを追った。
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