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ミッション ドールのダンジョン 11階層を攻略せよ。

お疲れ様です。

宜しければ2本目をお読み下さい。

「アンタそろそろ出番よ、いい案あるんでしょ?」


その言葉でヨナーちゃんですら、こっちを見てくる。エイミーさんなんてキラキラした目で見つめてくる。そんなに期待しないで欲しい。


「他のパーティはどうしてるんだ?」


「タンクを固めて防御しつつ、1体づつ倒してるんじゃない?」


しかしこのパーティで完全な盾役はエイミーさん1人しかいないし、まだ初心者で先の会話を聞いて落ち着かない様子だ。



7階層でそれまで着けていた効果の高い護符は全て駄目になっており、現在俺たちが身につけているのは2個目の高い護符だ。その所為もあり非常に慎重になっている。主に金銭的に。


「扉の外から5回ぐらいに別けて、一度全滅させてから復活して来たのを倒すしか無いかな。」


「それでどうやって、順番どおりにするのよ。違うのは放置するわけ?」


「そうですわね。わたくし達は守るのは得意では有りませんから。」


「ハーちゃんです。ハーちゃんに連れて来て貰うです。」


「ミカンちゃん、ハーちゃんってそんな事出来るの?」


「出来るです。」


ミカンちゃんの作戦は対象の属性パペットを1体づつハーちゃんに捕獲して貰い、扉まで持って来て貰うという作戦だ。それならハーちゃんに倒して貰った方が楽じゃないのかとも思うがミカンちゃんなりの理由があるのかと思って黙っておく。


「ねぇ、ミカンちゃん?ハーちゃんに倒して貰えないかなー。出来る?」


しかしジェシカさんは違った。そしてミカンちゃんの反応も予想と違った。


「あっ!出来るです。」


どうやら単純に思い付いていなかっただけらしく、ミカンちゃんは文字通りアッと口を開けていた。


ミカンちゃんが扉の外でハーちゃんを創り出し、自らのメイスを渡すとボス部屋に送り込んだ。この後の事はミカンちゃんからの説明だが、ハーちゃんは1体づつ捕獲して部屋の隅でパペットを叩くという作業を繰り返したそうだ。


そして20分も経たない頃、扉がハーちゃんにノックされた。扉の先は猫の人形型のゴーレム、ハーちゃんがメイスを持って立っていた。その体には魔法で出来た焦げ跡や小さな凹みキズはあるが25体からの魔法攻撃に晒されたにも関わらず、まだ余力があるようにみえた。


「ありがとうです。」


「ハーちゃんありがとうねー。」


ミカンちゃんとジェシカさんが御礼を伝えるとそれに呼応するかの様にハーちゃんは土に戻って行った。


ボス部屋の中には布片と形を保ったままのハンドパペットが散乱しており、ハーちゃんが条件を満たした事で活動を停止したのだろう。


「ミカンちゃんのお陰でクリアできたわね。」


「あれを正面から攻略出来るように、精進が必要ですね。」


マリリさんの意見は最もで、メンバーの表情はイマイチ優れない。このダンジョンの様にゴリ押しが通用しないのは俺たち火力重視のパーティには荷が重い。


「レンちゃん、お腹すいたです。」


「ヨナーも。」


「それじゃあ下に着いたら、ご飯にしましょうか。」


「ミカンちゃん、ヨナーちゃん昼メシはホットサンドだ。」


「「?!」」


11階層の始まりの部屋に降りると直ぐに、焚き火の準備をする。煙りは部屋に充満する事無く、天井の隙間へ流れ込んでいく。しかも部屋の壁際には澄んだ水が流れている水路がある。攻略本にも飲料可能との表記もある。


ホットサンドは既に食パンに野菜やハムやチーズを挟んで焼いてある。あとは焚き火の上のフライパンで温めるだけた。中のチーズが溶けたぐらいで出来上がりだ。


焼けたホットサンドを木皿に乗せて、ミカンちゃんとヨナーちゃんに手渡す。


ヨナーちゃんはまだ熱いだろうに、齧りついたが、すぐに口を離している。


「ヨナーちゃん待つです。フーフーするです。」


ミカンちゃんは自分のホットサンドに息を吹きかけている。それを見たヨナーちゃんは口を細くし、恐る恐る息を吹きかけている。


そうして外側が冷めたのを確認するとミカンちゃんは齧りつく、慌ててヨナーちゃんも真似をした。


「熱っ!いです!!」


「☆€%*!!」


どうやら中のチーズが熱かったようで、ヨナーちゃんは言葉にならない声を上げていた。それも2口、3口と食べ進む内に笑顔に変わり2人は笑い合いながら食べ進んでいた。


「カケル、足らんぞ。」


「アンタ、フランシスカさんとマリリさんにもお代わりを頂戴。」


カレンはマリリさん達がお代わりを欲してる様に見せかけて、ちゃっかりと自分の分まで持って行った。


「もーらい!熱ちちち!」


ジェシカさんは俺がフライパンから目を離した隙に、取ろうとしたようで指先に息を吹きかけて冷ましている。そんなんで大丈夫なんだろうか。


そんな昼食が終わるとしばしのまったりとした時間が過ぎる。皆コップを片手にゆっくりとしている。


そんな俺たちが寛ぐ11階層は壁の様子が変わり、赤褐色の煉瓦が規則正しく積まれている。10階層までで市松模様は終わりらしい。



「11階層から20階層まではゴーレムだけらしい。まず11階層はどろ人形だ。」


「注意する点は?」


「基本的に頭が弱点らしい。弱点の魔石を壊せば倒せるらしいんだけど、魔石って硬くないか?」


「魔鉱石って傷は着きにくいけど、叩けば割れるのよ。それで込められた力によって段々と割れ無くなっていくの。」


「なら、精霊石でも、加護石でも無い只の魔石なら叩けば割れるって事か。」


「当てれればね。」


俺の説明に皆黙って聞いていたが、ジェシカさんが俺の肩越しに攻略本を覗き込んで来た。


「相手の攻撃はなんですかー。」


「ん、遠、近どっちもあるな。それと魔法は無い。」


「遠は遠距離攻撃、近は近距離攻撃ですよね。近距離は分かるんですけど、遠距離ってなんですかねー。」


「そこまでは書いて無いな。」


「泥なのよね、口からビューって出すんじゃない?」


「それは、当たりたく無いですわ。」


「他は大丈夫?それなら、出発するわよ。」


皆武器を持ち立ち上がっていく、そして俺とジェシカさんはそれぞれからコップを回収していく。軽く水で濯いでまとめて革の袋に入れるとジェシカさんのポケットに押し込んだ。


その様子を確認するとタリリは通路へと足を踏み出した。そしてその足音はグチャっと水気を含んだ音を奏でた。


「うわぁ、ヨナーちゃん大丈夫?」


通路は大人のくるぶしが見えなくなるぐらいの深さの泥が溜まっていた。カレンはローブの裾をが汚れ無い様に腰のあたりの布地をショートパンツの中へ押し込んで裾を上げていた。


マリリさんは両手で修道服の裾を持ち上げて歩いている。だが、ミカンちゃんとヨナーちゃんはカレンの心配とは逆にバチャバチャと勢いよく歩いていた。泥が跳ねることが楽しいようで、周りから悲鳴が上がっていた。


「ぎゃああー、ミカンちゃん、ヨナーちゃん、辞めてー。」


ジェシカさんの白いエプロンに2人が跳ね上げる、泥の斑点がポツポツと増えていく。エイミーさんはオーバルシールドでその攻撃から身を守っている。

俺はその陰に隠れさせて貰っている。


「出たぞ!」


「タリ…!」


タリリの嬉しそうな声が響く、そしてマリリさんが制止する間もなくバチャバチャと飛沫を上げながら床から盛り上がってくる魔石に向かって走って行く。


「もう1人子供がいるのを忘れていました。」


そう言うマリリさんの修道服にはタリリの跳ね上げた泥が点々としていた。


泥のゴーレムは人の頭と同じサイズの水色の魔石が泥の身体に乗っていた。身体の大きさも人と変わらない。


「アレならアンタでも当てられるわね。」


カレンの皮肉を聞き流しながら、タリリの様子を伺う。タリリのショートソードは的確にどろ人形の魔石を捉えていた。少しショートソードの勢いに魔石が泥の身体に僅かに沈んだかと見えた瞬間に泥人形が重力に従って落ちていくと、少し遅れて魔石が泥の中に落ちて飛沫を上げた。


「やったか?」


「割れてなかったから駄目よ、多分。」


泥の中から二本の腕が伸びて、タリリに掴み掛かる。タリリはそれを見越していたかの様に横薙ぎにしている。


「ほらね。」


「おい、奥にもいるぞ。」


「マリリさん、タリリをお願い。私は奥を片付けるわ。」


カレンはそう言うとファイアを2回唱えた。ゴウと通路の奥に火柱が上がり、床の泥を沸騰させ、天井を焦がす。その熱量は2個の水の魔石を瞬時に炭に変えた。


「何処だ?出て来い!このっこの!」


タリリは自身が汚れるのも構わずに足元の泥に剣を叩きつけている。


「タリリ、後ろですわ。」


マリリさんの声に振り向くと泥から半分以上は露出している水の魔石が有った。泥の深さ的に魔石が全て隠れる事は無いのだが、どうやらタリリはそれでも見失っていた様だ。


「貰った!」


床とショートソードに挟まれた魔石は当たった部分から剥がれる様に割れた。そしてタリリの背後で掴みかかろうとしていた腕は、形を保持できなくなり音を立てて泥に戻っていった。


「カケルさん、早く取ってきて下さいよー。早くしないと泥の中に落ちちゃいますよー。」


ジェシカさんは俺の背を押して、カレンの倒したコインを回収させようとしている。仕方ないからタリリの横を通りすぎるまではゆっくりと歩き、そこからはダッシュした。背中に跳ね上げる泥を気にしながら銀色のコイン目掛けて走っていく。


待ってろ1万円。おれは全身泥だらけになりながらも無事にコインが落下を始める前に回収する事が出来た。そして俺と合流するなりタリリは笑った。


「カケル泥だらけだな。アハハハ。」


自身も顔中泥だらけにしながら、豪快に笑うタリリを見ると俺はお前もだと指をさして笑ってやった。


するとそれを見たミカンちゃんとヨナーちゃんもお互いの泥だらけの顔を見て笑い合う。その笑い声は次第にパーティ全体に広がっていった。

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