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ミッション ドールのダンジョン50階層を攻略せよ。

現在は41階層。このダンジョンの最終階層の50階層まで残り10階層だ。この階層は鎧を着たスケルトンだった。ショートソードにラウンドシールドを装備した騎士の様な戦い方をしてきた。


そしてカレンのファイアで倒されると、何処からか恐竜の爪の様な物が床の上に出現していた。

その爪をコインを収拾がてら、拾い上げた。


「これがドラゴンの牙か?なんか小さいな。」


「最初に考えた人は本物を使っていたのかも知れないけど、今はニセモノが大半よ。」


このモンスターはドラゴントゥースウォーリアと言ってドラゴンの牙もどきに、特殊な加工を施して作成した使い捨てのゴーレムの一種だ。


貴族や裕福な商人が護衛として購入する事が多い。もっぱら戦闘用のゴーレムだ。城壁修理等に使うストーンゴーレムとは用途が違っている。


「凄いわよね、その牙一本でさっきのスケルトンから、武器とヨロイまで作られてるのよ。訳が分からないぐらい凄いわ。」


しかも戦闘用ゴーレムだけあって、スケルトンの形はしているが、動きは素早く熟練した騎士のようだ、しかも力強くもある。


「けど、ガーゴイルのが明らかに強いわよね。」


ドラゴントゥースウォーリアは確かに、魔法もよく効くしヨロイ以外の所は案外と脆い。カレンの言う事も分かる気がする。


「攻略本にも例の奴以外の注意点は書いて無いな。」


「あんなの騙される訳無いわよ。」


そう言っているうちにボス部屋が見えて来た、そしてその部屋の前にメイドの格好をしたドールがテーブルを前にして立っている。


「いらっしゃいませ。ドラゴントゥースウォーリアは如何でしょうか?1体1銀貨となっております。」


テーブルの上には白以外にも黒や赤や緑の竜の牙も並べられている。ドールの仕草に合わせて何処からか声が聞こえて来ていた。


王都での相場は金貨1枚とフランシスカさんが教えてくれた。それだけを聞くとお得に感じる。ただボス部屋で敵にならなければと言う条件がつく。


しかも使用しなくても3日経つと消えてしまうと記載がある。


「アンタ、そのドールは攻撃しないでよ。攻撃した瞬間に全部のそれが襲ってくるから。」


カレンは竜の牙をそれと指差している。それにしても攻略本に書くぐらいだから、攻撃したパーティがいたんだろう。なんたる脳筋だ。


「きっと騙された人が戻って来て、このドールで憂さを晴らそうとして返り討ちに遭ったんじゃ無いですかねー。」


ジェシカさんが名探偵並みに、心理を読んで予想をひけらかす。


「2重トラップかよ。踏んだり蹴ったりだな。」


俺たちはそのパーティに感謝をしつつ、ドールを横目に脇を抜けていく。


「どうする?」


俺はドールを視界に捉えたまま、背後の扉を親指で

指差す。


「お仕置きよね?」


「ああ。」


カレンはテーブルの上の竜の牙に目を細めると、後方で待機していたフランシスカさんやジェシカさんを手招きした。


「みんなで入りましょ。扉を背にして退路を確保しつつ安全優先でいくわ。」


お仕置きという名のトラップを警戒して、俺たちには珍しく通路で戦わずにボス部屋の中に全員で足を踏み入れた。


「デカイな。」


「ホントね、ちょっと大き過ぎよ。」


確かにボス部屋の竜の牙は、通路に比べて大きいとは書かれていたが、ここまで大きいとは思わなかった。


3メールある天井に直径が見事にハマっている。長さも部屋幅と同サイズあるの。これがスケルトンになったらどうなってしまうのか?それだけで俺たちは押し潰されてしまうだろう。


「これがお仕置きでしょうか。」


「エアリアルプレス。」


フランシスカさんが魔法を唱え、巨大な竜の牙は音を立てて潰れていく。すると竜の牙が慌てたのか魔法陣が輝く出した。


「あ、ドラゴントゥースウォーリアよ、あれ。」


カレンが一瞬だけ見たのはスケルトンの頭蓋骨だった。その頭蓋骨は被っていた白い兜もろとも白い塊に圧縮されて行った。


「カレン、私は剣を見たぞ。まるで化け物みたいな大きさの大剣だったぞ。」


タリリは剣をチラッと見えたのが嬉しいらしく、カレンに直ぐに自慢している。最もカレンはそんな事はどうでも良いらしく、全く悔しそうでも無かった。


その後心配していたお仕置きも、どうやら終わりの様で42階層、43階層のボスは2メートル程度の大きさだった。


「私達がボス部屋に入ってるから、お仕置きも止まったんじゃ無いの?」


そうなのだ、売り子のドールは相変わらず、ボス部屋の前に陣取っていた。だれか買う奴がいるのだろうか。段々と可哀想になってくる。


そして47階層でドールはヤケになったようだ。


「お代は不要です。ご自由にお取り下さいませ。」


深々とメイドさんはお辞儀をしてそう言うと、元の直立不動の姿勢に戻った。もちろん無視をした。


そして今は48階層のボス部屋の前だ。


「お願いします。どうかお取り下さいませ。」


48階層ではメイドさんがボス部屋の扉の前でお辞儀をした姿勢で両手を前に出していた。その手のひらには一本の竜の牙が乗せられていた。


49階層でも扉の前にメイドさんが48階層と同じ姿勢で待っていた。


「…。」


このドールは無言で何も喋らない。その横を俺たちは通り抜けていく。


「エイミーさん、お願いね。」


「はい、任せて下さい。」


このボス部屋にはジェシカさん、俺、ヨナーちゃんの後にエイミーさんが後ろ向きで最後に入室する。


「持ってけ泥棒!!」


そんな声が響くとドールは持っていた竜の牙を、ボス部屋の開いている扉の隙間に向かって全力投球した。


その牙はカンとエイミーさんの持つオーバルシールドに跳ね返り落ちた。


「ナイス、エイミーさん。」


「はい、ありがとうございます。」


「え?!」


本来はそれだけで、大丈夫なはずだった。攻略本に記載があった方法だから間違いは無いはずだ。しかしドールは足元に転がって来た竜の牙をサッカーの様にトウキックしたのだ。


メイドさんの長いスカートを両手で捲りながら、蹴り出した爪先によって通路を滑っていく竜の牙はエイミーさんと扉の僅かな隙間を縫ってボス部屋に滑り込んで行った。


「それは反則だろ?」


明らかにレッドカードだ。その行為によって表情が変わる事が無いはずのメイドさんのドールの口元が微かに笑った気がした。


そしてボス部屋の中には、2体のドラゴントゥースウォーリアが出現している。更にメイドさんはバラバラと床に大量の竜の牙を落とした。


「ヤバイわ。アンタ早くしめて!」


俺とジェシカさんは既に扉に手を掛け閉め初めてはいたが、カレンの声に慌てて力を込めた。閉め慣れている俺側は閉まったがジェシカさんが少しだけ遅れた。


その僅かな隙間をメイドさんが纏めて蹴り込んで来た内の3本だけが通り抜けて行った。


ガシャンと扉が閉まったが、俺たちを、囲む様にして立つ5体のドラゴントゥースウォーリアがいた。


既に扉が閉まっている為に、メイドさんの姿は見えないが、きっと頰に手の甲を当て高笑いをしている

事だろう。今までの採掘者達に無視をされ続けたその行いが報われたに違いない。


「何なのよ、もう!」


逆にカレンはドールに弄ばれた事に怒っている。しかもドラゴントゥースウォーリアとの距離が近く思うようにファイアを撃てないのも影響しているようだ。


「タリリ、エアリアルスマッシュ!」


「えい、えい。」


「フランシスカ、エアリアルスマッシュ。」


「ストーンウォール。」


タリリのショートソードが光を帯びて、ドラゴントゥースウォーリアに襲いかかった。骨の騎士はその打ち込みをラウンドシールドで受けようと左手を上げた。


ガンと盾に接触するが、ショートソードの勢いは止まらない。腕の骨を砕いて、盾ごとその頭蓋骨を叩き割った。


ミカンちゃんのメイスは骨の騎士によって繰り出されたショートソードを叩き折り、白いプレートアーマーを凹ませ、内部の肋骨を粉砕した。


そして左手のメイスは、体の外側へと降り抜かれた。そのメイスは骨の騎士のショートソードを持つ小手ごと粉砕した。しかしメイスそれ以降は空を切る。


それで攻撃は終わりでは無かった。ミカンちゃんのメイスから放たれた黄色い光はドラゴントゥースウォーリアの上半身を吹き飛ばし、残った下半身を竜の牙へと変えた。


フランシスカさんのレイピアの先にいた2体の骨の騎士は真ん中を抜けた風に吸い込まれて行く。そして2体分の鎧や骨がグルグルと混ざりながら、壁に

激突して飛び散った。


その破片が天井や床で跳ね返り、勢いが付いたままでパーティを襲うが、マリリさんのストーンウォールで綺麗に守られていた。


「瞬殺でーす。」


「まだまだ大丈夫そうだな。」


「残りは50階層の大ボスだけよね。結構いける物ね。だけど、みんな油断しないでいきましょう。」


攻撃に参加していない2人が、勝手に余裕をかましていると、今回は不参加だったカレンにたしなめられてしまった。


「50階層のおさらいをお願い。」


「ああ、ボス部屋だけの階層で、ドラゴントゥースウォーリアに追いかけられている、お姫様ドールと勇者ドールを倒したらクリアだ。」


攻略本によると、ドラゴントゥースウォーリアは勇者の剣の一振りで倒されてしまい、勇者のターゲットが俺たちに向くという流れだ。



このボス部屋の前にはメイドさんはいない。しかしこの部屋は全員が入らないと始まらない仕掛けになっていた。


「不思議ね、キチンと人数分の椅子があるわ。」


カレンは人数分と言っているが、ジェシカさんの椅子は無い、彼女だけは立ち見席だった。


「この椅子大丈夫なのだろうな。手足を拘束されたりしないよな?」


「アンタ、余計な事を言わないで。メイドの人形といい、お仕置きといいおかしな事ばかりが起きているんだから!」


「あ、すまん。」


これはダメだ。フラグっぽいな。俺はメンバーが座っていく中で最後まで座る勇気が湧かなかった。


「アンタ早くしなさいよ、あっジェシカさん駄目よ!」


俺の代わりに座ろうと、近づいて来ていたジェシカさんにカレンが釘を差した。


渋々と座面にビロードのクッションが敷かれた、重厚な雰囲気を醸し出している木製の椅子に腰を下ろした。


「レデース&ジェントルマン! ようこそ我が劇場へ。」


一段高くなっているステージに降りている真っ赤な緞帳の前にシルクハットを被り、燕尾服を着たドールがステージの裾から中央へと歩いて来た。


「これから始める物語は悪い採掘者が亡国の姫君をを追う所からスタート致します。果たして正義の勇者はお姫様を守り抜き、ハッピーエンドへと辿り着く事が出来るでしょうか?」


ドールがシルクハットを取ってお辞儀をすると、何処からともなく拍手が起き、ビーっと言うブザー音と共に赤い幕がゆっくりと上がって行った。

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