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ミッション ドールのダンジョン29階層を攻略せよ。

「危な!」


1センチにも満たないバリスタの矢を盾で受けた、エイミーさんが悲鳴と共に後退りさせられている。


更に小さな無数の矢もガンガンと連続的に盾を叩いている。見た目と威力が一致していない。


矢の猛攻に耐えていると、城が天井からのスポットライトで照らされた。その光の中で3体のゴーレムがテラスに立っている。王冠を被っているのが王様、その横のドレスを来た女性は王女、そしてもう1人は王子だろうか。小さくて良く見えない。


突然鳴り響くテンポが良く勇猛なクラッシック。そのリズムに合わせて矢が飛んでくる。テラスの王様が腕を挙げ攻撃の合図をしている。


「もう鬱陶しいわね、ファイア。」


カレンのファイアが正面の城壁とその上にいたゴーレム諸共消滅させる。するとBGMのテンポがスローペースになり物悲しい雰囲気を醸し出した。


城下町にいる街人ゴーレムが逃げ惑っている。必死に正面の城壁から離れて行く。それに伴いBGMに悲鳴が混じってくる。これは逃げ惑う住人達の悲鳴を表しているようだ。


今度はボス部屋の出口がライトアップされると、ドレスを来た女性のゴーレムと王子らしきゴーレムがいた。女性のゴーレムは心惹かれる様に王城を振り返ると手を伸ばしていた。そのゴーレムの手を取り王子のゴーレムは自然と開かれた出口へと消えて行った。


「なんだあれ?」


「攻略本に書いてあったでしょ。魔王の侵略に有った国から勇者とお姫様が脱出して行くって。そして2人を逃がすために王様は独りで残り、魔王と戦うって。」


「あー、今理解した。だから王様を倒せって書いてあったのか。」


攻略本にはカレンの説明してくれたストーリーが書かれていたが、まさかボス部屋の情報とは思わなかった。どうしてここにヒロイックなファンタジーストーリーが書いてあるのか不思議だった。


掻き毟る様な悲鳴が一段と大きくなり、もうBGMのクラッシック音楽は全く聞こえない。この国の滅亡を明示するかの様な悲鳴を聴いているだけでも、なかなか精神的に訴える物がある。


なんだか弱い者イジメをしている気分にさえなってくる。しかし、飛来してくる矢や投石、熱した油や魔法攻撃はどれを取っても採掘者の命を危うくする威力を持っているのを忘れてはいけない。


それでも気が滅入ってくるのは確かで、あちら側が主役な設定は辛いなと考えていたら、顔を熱風が襲う。


そこには杖を王城に向けて伸ばした、カレンがローブの裾をはためかせていた。


炎の柱は王城を完全にその支配に収め、王様のゴーレムごと、その熱量で灰に変えていく。その柱が消えた時には魔方陣が赤熱していた。


「終わったわ。」


「ああ。」


それは王様を失った事で、兵士や住人のゴーレムは動きを止め、城壁や町並みもガラガラと崩壊している。いつの間にか悲しげな演奏も止み、静けさを取り戻していた。


「ミカンは勇者の敵です?」


「魔王嫌。」


そう言えばミカンちゃんは、ストーンで攻撃していなかった。ストーンウォールで雨の様な矢からパーティを守ってはいたが、戦闘中から既に表情が暗かった。ヨナーちゃんは余り口数が多くないが、さきの戦闘でしっかりとダメージを蓄積しており、更に口数が減っていた。


「あー、あー。」


「どうしたのよ。」


突然声を出した俺を変な目でカレンは見る。


「いや、悲鳴が耳に残って未だ鳴ってる気がしてな。」


「ふーん、そう。」


カレンはそれだけ言うと、年少組の頭を撫でながら21階層への階段を3人で降りて行った。



「この階層からガーゴイルだな。魔法も効きにくいし、石で出来た身体も硬く剣も通らないから、ボスに行く前に、引き返すかどうかを判断しろって書いてあるな。極太の赤文字で。」


俺の見ている攻略本に、重要との文字と共に目立つように赤文字で書かれている注意を促す文言は、今までの階層の説明には無かった。それだけにこの階層の危険度が実感できる。


「ファイア!」


俺の説明を聞いていたのか分からないタイミングで、カレンはファイアを唱えた。その魔法で対魔法モンスターのガーゴイルは床に落ちると燃え尽きた。


それでも新たなガーゴイルがその背中の羽を羽ばたかせて飛来してくる。悪魔と鳥を合わせた異様な姿に由来する長い手から伸びる鉤爪やその鋭いクチバシはどれだけの採掘者を恐怖に陥れて来ただろう。


今その鋭い鉤爪はエイミーさんに振り下ろされていた。ガンと重い音が通路に響く、エイミーさんはその衝撃を膝を曲げ腰を落とす事で耐えていた。


ガーゴイルがエイミーさんに攻撃を終えたタイミングでミカンちゃんのメイスがガーゴイルの脇腹に叩き付けられる。


ガーゴイルは打点を中心にくの字になりながらも、空中で態勢を立て直そうとするが、天井からミカンちゃんのストーンが真っ直ぐに落下してくる。


「えい。」


ストーンに胴を押されながら落下してくるガーゴイルをミカンちゃんのメイスは下方から掬い上げるように頭部を挟み撃ちにした。ガーゴイルの頭部はメイスによってせん断され天井に打ち付けられた。


ストーンで床に縫い付けられたガーゴイルはどうやら頭部を分断された事で再び動き出す事は無かった。


「タリリ、エアリアルスマッシュ!」


タリリは飛来して来たガーゴイルに緑の光を帯びたショートソードを正面から振り下ろす。しかしガーゴイルの鉤爪はショートソードをガッチリと受け止めていた。


「ブースト!!」


ショートソードが止められた姿勢でタリリが、また恥ずかしいセリフを叫ぶと緑色の輝きが増していく。光を纏ったショートソードは鉤爪を断ち割り、腕を裂く、最後には守っていた頭部をも割った。


その光景を見ていたマリリさんはタリリの右腕にヒールを掛けていた。


「ああ、マリリ助かる。やっぱり石を殴ると手が痺れるぞ。」


流石、双子の姉妹と言うだけあって、こう言う所は感心する。いやマリリさんが凄いだけだ。


「ボス部屋よ、準備はいいわね。」


このボスは22階層の雑魚ガーゴイルがボスとしている。21階層の雑魚ガーゴイルよりも少しだけ魔法耐性がアップしている。30階層までガーゴイルの姿形は全く同じで、魔法耐性がドンドンと強化されていく。ボスガーゴイルは次階層のお試しだと考えると納得できる。


「フランシスカ、エアリアルスマッシュ。」


風が渦巻きガーゴイルを翻弄するが、その石の体にはダメージが見えない。


「エアリアルプレス。」


ガゴ、ギ、ガガと鈍い音がその圧力の強さを物語っている。石が圧縮されるという非常識を目の当たりにして理解が追い付かない。俺以外は当然な物として眺めているがその事も理解出来ない。


「ふう。魔法耐性持ちには苦労させられますわ。」


たいして浮かんでもいない額の汗を拭う振りをして、溜息を大袈裟につくフランシスカさんの笑顔は絵になる。きっとタリリの安っぽい汗とは違う汗に違いない。


岩をも燃やすファイアに、硬い石を更に小さく圧縮していまう風魔法、いつの間にかイメージ力が彼女達と逆転してしまっている。確かに溶岩だって見た事あるし、ブラックホールってのも知識ではある。だけど俺の常識が邪魔をして咄嗟のイメージがし辛いのは実感した。


その後、22階層、23階層と順に進んでいる。現在は29階層のボス部屋の前だ。今までの階層と同様にカレン、フランシスカさん、タリリ、ミカンちゃんは順にガーゴイルが倒せるかを試しながら来ている。


試した結果は現在の29階層の魔法耐性も21階層の魔法耐性とどう違うのか、だれもよく分かっていない。他のパーティでは徐々に苦戦を強いられる事で差を感じられるのかも知れないが俺たちのパーティでは魔法耐性の差を感じる事が出来なかった。


「マリリさん、やってみる?」


ここまでマリリさんはガーゴイルには、ほぼノータッチで来ている。彼女のストーンでは致命傷を与えるのは困難と考えて自ら自粛していたようだ。


「では試してみますわ。」


マリリさんはどうやってストーンの魔法で、硬いガーゴイルを倒すつもりだろう。そこで俺は閃いた、まさかドリルか?ストーンの魔法で作られた円錐型の尖ったドリルがガーゴイルの胴体にグリグリと穴を穿つのか!俺は来たる興奮の時を期待を込めて待つ。


「お願いします。」


マリリさんの合図で扉を開くと、魔方陣からコンクリート色をしたガーゴイルが飛び立つのが見えた。


「ストーン。」


マリリさんの言葉で飛び出した直径2メートル程の短い円柱は円の面をガーゴイルに向けて飛んでいった。


ガーゴイルを面に貼り付ける様にして、そのままダンジョンの奥の壁にボスを押し付けた。ガンと大音量が響くがはみ出ているガーゴイルの手は未だ動いている。


「回転。」


マリリさんが回転と呟くとガーゴイルを押し付けたまま円柱が軸を中心にゆっくりと周り始める。ガリガリガリとガーゴイルを削り取っていく音が断続的に鳴り響く。


まるで現代のトンネル掘削用のシールドマシンの様にゆっくりとガーゴイルの表面を削り取っていく。


「煩いです。ガリガリです。」


「…。」


ミカンちゃんとヨナーちゃんが会話をしているが、ヨナーちゃんの声は騒音に掻き消されて聞こえないし、その煩さに2人は耳を押さえて笑っている。


「こんな感じでしょうか。」


少し疲れた表情のマリリさんが、シールドマシンを消すと壁に挟まれていたガーゴイルの破片がバラバラと落下していく。床に積もった破片の小山から金色の糸が湯気の様に立ち昇っている。


「次は30階層よ。これをクリアするとランク3の採掘者に認められるわ。」


「どうやって認められるんだ?この本には何も書いてないな。もしかして認定する人を同行する必要があったのか?」


ダンジョンではドロップアイテムはコインしか無いし、モンスターのカケラは時間の経過で消滅していまう。どうやって30階層をクリアしたと証明するのだろうか?今まで聞いたことが有ったかと記憶も思い返してみたが、俺の記憶媒体はショボかった。


「無いわそんなの、自己申請よ。教会のカウンターでお金を払えばどんなランクでも発行してくれるらしいわ。」


「マジか。」


良し絡まれない様にランクを鯖読んだ方がいいなと考えていると、カレンに思考を読まれたようだ。


「アンタ、レインボーなんて辞めてよ。ランク11なんて勇者専用なんだから。」


「はい、現在攻略が最も進んでいるフロースのダンジョンでランク5止まりです。」


クソっ、マリリさんまでもわざわざ注意してきた。これは知らぬ間にテレパシーが漏れていたか?


「じゃあどうしてランク10とか11まであるんだ?誰も行った事はないんだろ。」


カレンへ純粋な疑問をぶつける、決して仕返しでは無い。


「予備なんじゃ無い。取り敢えず100階層まで作って置けば暫く大丈夫って事で。もしそれ以上ならば勇者って一括りにすればって考えよ。きっと。」


「わたくしも聞いたことは有りませんわ。」


「リーリオの教会はそういうものだと教えられました。」


そんな会話をしながらも30階層の始まりの部屋に降りて行った。

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