089 冒険者
冒険者にも色々な人がいるようです。
この世界では色々な職業がある。
お肉屋さんとかパン屋さんがあれば、宿屋や教会もある。そして危険だが、一攫千金の冒険者がいる。
戦士に僧侶に魔法使い…人によってジョブは違うが、ある者はギルドで依頼を受け報酬を得る者、またある者はダンジョンや遺跡で盗掘紛いの行為でレアアイテムを得る者など様々である。もちろん中にはドラゴンを討伐したりしてドラゴンバスターの称号を得て名の売れる冒険者もいたりするがごく少数である。
「うぉりゃあぁぁぁ!」
ザックのバスターソードがゴブリンを切り裂く。
シーフのギャンが発見したのは3匹のゴブリンである。戦士のザックが2匹、私が1匹。全て倒したのを確認して僧侶のドクが回復する。まぁ、バランスのとれたパーティである。…男ばっかだけど。
私とマールは臨時で冒険者パーティに参加していた。
……カンゼ皇国の皇都付近の森をさまよっていた時、奥から戦闘の音が聞こえてきた。戦っているのは冒険者と狼が1匹。少人数だが、上手いこと戦っている様だ。と、戦闘が終わってこちらに気づいたのか若い戦士が声をかけてきた。
「…あまり見ない顔だが新人の冒険者か?」
「まぁ、そんなとこ」
「新人にはこの森はキツイぜ!ザック、とりあえず一緒に連れてってやるか?」
「そうだな、女2人じゃ危険だし、今日だけパーティを組んでやるよ!」
なんか知らないけど、私達を抜きに話が進んでいる。戦士のザックは20歳前の精悍な戦士。盗賊のギャンは薄汚れてはいるがやはり16、7歳の小柄な男。信仰心はともかく、パーティ全体の頭脳である僧侶のドクは実年齢より老けて見える18歳。
見た感じ駆け出しを2年くらい過ごした冒険者といったところである。3人とも武器防具だけは立派である。
結局流れで一緒に行動をしているのだが、コイツらはどんどん森に入っていく。どうやら街には帰る気は無い様だ。
森のゴブリンや狼を倒して森の奥深くまで入って行く。そろそろ夕暮れで森の視界は悪くなっている。
「あまり奥に行くと今日は帰れませんよ?」
マールが当たり前のことを主張するとザックはこちらを向き、
「この先に俺たちの小屋があるんだ。今日は調子に乗って討伐したから1泊して明日の朝帰ろう」
「そうだな、そろそろ視界が悪くなってきたし、獣も夜は活動が激しい」
「まぁ、仕方ないね。幸い食料はあるから大丈夫!」
普通見知らぬ男について行く女はいないが、夜の森が危険なのは本当のことなので了承する。
そうして奥に進むと岩壁に貼り付けた感じでほったて小屋があった。
「俺たちのアジトにようこそ!」
「初めての森で疲れただろう?」
「今日は俺が調理するから小屋で休んでいるといい」
「じゃあ、マール、お言葉に甘えようか」
「ハイ!」
ドクが小屋の外で狼の肉を焼いて、ザックとギャンが水を汲んでいる。
私達はその間に当たりをつけておく。…、この辺かな?
できた食事を堪能するとマールが眠たそうだった。
「どうしたマール?疲れた?」
「…なんだか急に眠気が…」
「フっ、やはりドクのクスリは効くなぁ!」
「ユキさんもそろそろ効いてくるんじゃないか?」
「さぁ、お楽しみの時間だ!」
「どういうことだ!」
私は細い声で問いただす。
「どうもこうも、お前らはこの後俺達が楽しんだ後に奴隷商人に買われるのさ!」
「そこ前にいい夢見させてやるよ!」
「この間の女と合わせていい金になるぜ!」
「ハイ、犯人確定!マール、いいよ」
ムクリとマールが起き上がり拘束をする。
「なっ!なんだ!」
「もう聞くこともないから静寂もかけておいて!」
「ハイ!」
「…!…‼︎」
床に転がった冒険者3人は動けないながらこちらを睨んでいる。
「さて、私達は冒険者ギルドのギルドマスターからの依頼で誘拐事件を調査していたのだが、物の見事に釣れたな」
「…!…!」
「そうそう、こちらも助けておかないと…」
私は岩壁の方向にある壁を吹き飛ばすと、奥に洞窟が繋がっていた。マールが光球をつけると奥に裸に剥かれた10〜20代の女性が3人囚われていた。
流石に酷すぎるので私は時間操作で1月戻すと傷も破れた服も元に戻り、記憶も無くなったろうから催眠で眠らせてカンゼ皇国のギルドへ転移させる。
ギルド支部長には話を通してあるので3人を預ける。冒険者の方は支部長に場所だけを伝え繋がりのある奴隷商人も検挙してもらう。
私の受けた依頼は終了したので支部長に後を引き継ぎ私達は帰還する。
今回はギルドマスターから直接の依頼で面倒を受けたのだが、あまり受けたくはなかった。まぁ、彼女には借りがあるので仕方ないが…。
まぁ、マールの複合術の練習になったし、被害者を助けられたのでいいか。
この後奴隷商人が酷い目にあったそうな。




