056 釣り
マッタリ回です。
「ユキさまぁ〜、釣りに行こう?」
「釣り?」
「うん、こないだオジイちゃんが教えてくれたの!」
「釣りかー」
村の子供達と四季の森へデザートを取りに行こうと思っていたのだが…。
「釣りだと釣竿が必要だぞ?」
「うん!オジイちゃんが作ってくれたの!」
「俺も持ってる!」
「ユキ様は無いの?」
「釣竿は持ってないなー」
「ええー、行こうよー」
「わかった、わかった。ちゃんとお母さんに言うんだぞ!」
「「「はーい」」」
私は子供達と世界樹の南の湖へ向かう。湖から小さな流れがあり、小川になっているところで釣りをすることにした。
小川の水は澄んでいて、小さな生物も沢山いる。
「ユキさま、トンボ!」
「水がつめたーい」
「あっ、魚がいる!」
子供達は竿とバケツを持ってはしゃいでいる。
やっぱり元気いいなー。
「ユキさまー、エサつけて!」
なん…、だ…、と…?
餌っていうとアレのことか?
無理無理無理ムリっ!どうしよう…。
子供の前で虫に怯えるとか、情操教育に良く無いし…。
はっ!こんな時こそっ!
私は口に手をやりピーーー、っと高い音を出す。
「なにそれ!」
「すごーい、どうやるの?」
向こうから土煙が上がっている。
「来たか!」
「ユキ様、何事ですか!」
「アレ?オジイちゃん?」
「ん、ツバキ?」
「いいところに来た、シグレ。子供達の釣り竿に餌を付けてやってくれ!」
「…おお、なるほど!合点がいきました。よし、ボウズども!一緒に餌をとるぞ!」
「わーい!」
シグレは子供達と川に入り石をひっくり返し川虫を取っている。うわぁーよく触れるな!
「ユキさまはやらないの?」
ツバキが無邪気な顔で言う…。
「うん、私は見ていてあげるから行っておいで」
「はーい!」
シグレは孫達と一緒に大はしゃぎで釣りを教えていた。
…うみゅ、おじいちゃんになったなー。
「いっぱい釣れたー!」
「やったー!」
「それじゃあ、みんな家に帰ってお母さんに見せてあげよう!」
私はみんなを村に転移させる。
「アレ?ウチについてるー!」
「なんでなんで?」
「スゴいだろう?」
「すごいスゴい!」
「ユキ様…、こんなことで転移為さらずとも…」
「かたいこと言うなシグレ。子供達もはしゃいで疲れてるだろうし、何より喜んでるからいいだろう?」
今日の夕飯はシグレのお裾分けの川魚であった。
ユキ様も虫は苦手の様です。




