048 解決
46話の続きです。
今日も2話掲載です。
帰らずの海域…ここは昔から西からの偏西風と南からの暖流がぶつかり海霧が年中起きている場所だったという。また海中にあるメタンハイドレートの埋蔵量も多く、海温の上昇でメタンガスも発生しているようだ。
ムスターファの話ではトリトン族が暮らすには丁度いい場所だったらしい。
コレが魔素を含んだ紫の霧になったのは約100年前だという。私が以前調査した時は紫では無かった気がする。あまり海に来る事はないのであまり印象に無い。
「原因はともかく、理由はわかった」
「ホントですか!ユキ様!」
トリトン族ココと連絡をする。
「本来原因を究明しないと再び起こる可能性があるが、今は霧を除去を優先するとしよう」
「お願いします!」
自然発生とは考えにくいのだが、他者が迷惑する行為なのでやむを得まい。
それに除去したのが私なら文句も言えないだろう。
「明日、除去次第トリアイナに行くことにする」
「わかりました。お待ちしております」
明けて次の日、私達は帰らずの海域の海上200mに浮かんでいる。
「この間、マールが見つけた光のトンネルの術を応用して空中に暫定的な風のトンネルを作る」
「空中にですか?しかも風のトンネル?」
「うん、いわゆるバキューム効果で霧を上空7000mまで汲みあげる」
「サイクロン式ミタイ」
「サイクロン…、と言えなくもないか」
直径20m感覚で空中に螺旋状の魔方陣を展開させる。コレを2重に作って…。
「『超気圧』」
海上から天高く紫の塔が立ったように海域の霧が上空に吸い上げられる。
ガスの大半はメタンガス…引火性なのでコレを利用する。通常ありえない高さに紫色の雲がある。
これくらい離れていれば地上に影響はないだろう。
「『点火』」
上空に赤い光が出来て数秒後…。
バゴォーン!
爆発音と熱風が届く。おそらく周辺諸国にも届いただろう。が、事前に新術実験を行うと通達しているので大丈夫だろう。
下の海域を見ると海面にポコポコとガスが出てるが海上は見通しが良く海は穏やかである。
私達は光のトンネルを潜る。
トンネルは以前の乳白色ではなく地上と同じ太陽の光がそのまま届いているようだ。
トリアイナに着くとトリトン族が揃って膝をついている。
「ユキ様!この度はありがとうございます!」
「大した事はしていない。気にするな」
「それにしても眩しいですね!」
「マブシイノ」
黄金が太陽の光に反射して眩しく輝いてる。
「この光がこの周辺に光を与えて光合成ができてるのですよ。」
なるほど。海底1000mにいる生物の活動にも影響しているのか。
「私達は引き続き原因を調査するのでわかり次第こちらにも伝えよう!」
「ありがとうございます!…、コレは今回のささやかなお礼になります」
「イヤ、そう気にするな」
「イヤ、是非おお納めください!一族の気持ちですから」
「…、それではありがたくいただこう」
マールが受け取る。リュックくらいの皮袋で重くはなさそうだ。
「それではまたな」
「さようなら」
「マタネ」
「「「ありがとうございましたー!」」」
帰ってから袋を開けて見ると真珠の首飾りやイヤリングが入っていた。後にココに聞くとトリアイナの特産品らしい。マールはイヤリングがお気に召したらしいので私は首飾りをいただいた。
以前のカンゼ皇国の方法を原案に光のトンネルの方法を取り入れた新術「超気圧」ステレオウインド…。どっかで聞いた気がする…。




