045 トリアイナ
44話の続きです。
帰らずの海域内に大渦がある。
今まで海流がぶつかる位置だと思っていたが、コレが光のトンネルなのだという…。
普通わからないって。
「この渦に飛び込むのか?」
「この渦は実は10m位でその先が光のトンネルになっています」
なるほど、実際海流のぶつかる位置に光のトンネルを設置しているのか…。やはり人為的な感じがする。
私達は飛行を解いて渦の穴に飛び込むと光のトンネルに入った。…
不思議な感じだ。周りは乳白色の灯りで妙な浮遊感がある。ココの話だと上がる時もこんな感じだそうだ。垂直に降りるのでは無く、まるで螺旋階段を浮遊しながら降りて行くようだ。
20分位だろうか?地面、いや海底が見えてきた。
スゴイ‼︎まるで海の黄金宮!いや黄金の二枚貝が口を開けている!
「村に危険が及ぶとフタが閉まるんですよ!」
「マジかっ!」
「すごいですね!」
「アノ貝オイシイノカシラ?」
「流石に食べちゃダメですよ?」
「ハーイ」
ミク…、そんなに食い意地汚く育ってしまったか!
村に入っても明るかった。おそらく光のトンネルの灯りが黄金に反射してこの灯りを出しているのだろう。しかも、この村はちゃんと空気がある。ちょっと寒いのは海底だからか?
しかし…、コレが地上にバレたら絶対簒奪者が来るだろう。
「おお、貴女が天魔の魔女のユキ様ですな!」
広場に集まったトリトン族、70人位の中からクールオールドな老人が1歩前に出て挨拶した。
「トリトンの長かな?私はユキ、こちらがマールとミクです」
「こんにちは」
「ヨロシクナノ」
「私がトリトン族の族長のオルカです」
トリトン族は私に向かって皆片膝をつく。
なんかすごいめんどくさい依頼がきそうな予感が…
「実は見てもらった光のトンネルですが今は白乳色なのですが、本来もっと輝きがあったのです」
光のトンネルの明るさは太陽の光を海底まで届けているのだという。100年くらい前から帰らずの海域のガスが濃くなりその影響ではないかと思われるらしい。
ガス自体ずっと出ているわけではないがここ200年くらい海温の上昇と共にガス自体が多くなっている可能性があるとのこと。
以前、世界図書館で見たことのあるメタンハイドレートが原因か?しかし紫色のガスだし…。
「とりあえず、すぐにどうこうできる問題では無い!調査、分析、問題の排除に少し時間がかかるがいいか?」
「もちろんです。我等も100年の問題がすぐ片付くとは思っておりません。ユキ様!何卒お願い致します!」
「うむ、今後連絡はココに渡したクリスタルで行う。何か分かればすぐに行動するのでそのつもりで」
なにぶん広い海域だ。調査には時間がかかるが仕方がない。
私達はトリアイナを後にした。
海底都市…。浮かび上がったりしませんよ。




